インタビュー

【 社長インタビュー 】
収益基盤強化を推進 事業展開も精力的に

2015年09月29日
日本ロジテム 中西 弘毅 社長
今期、収益基盤の強化を経営の最重要テーマに掲げる日本ロジテム(本社・東京)。前期は消費増税の反動減などに苦労した一方、改革に向けた体制づくりを継続してきた。今年から来年にかけ国内では大型拠点の稼働、海外では冷蔵冷凍食品物流への参入といった新たな動きが始まる。中西弘毅社長は「計画を着実に進め、利益体質への改善を図る」と意気込む。
――荷動きはどうか。
中西 前期に比べて回復基調にあるが、必ずしも良いわけではない。同じ食品、電子部品でも商品により荷動きに差がある。海外もタイ、ベトナムで家電製品などが堅調な半面、中国向け貨物は落ち込んでいる。
――今期、注力するポイントは。
中西 国内では収益基盤の強化。この数年、積極的な営業展開に加え、拠点再編、適正料金収受といった「これからを見据えた体制づくり」を進めてきた。この4~6月期では、利益体質に改善するための成果が出ている。
――利益創出に向けどんな取り組みを。
中西 営業所ごとに不採算事業を厳しくチェックし、ローコストオペレーションを展開している。現場改善とともに、人や車両をエリア単位で効率的に使うブロック制も導入。できる限り自社で業務を行い、無駄なコストの削減につなげる取り組みが浸透してきた。
年内に大型倉庫を2棟稼働
――今年は大型物流センターを2棟稼働する。
中西 5月の綾瀬営業所(神奈川)、今秋稼働の吉見営業所(埼玉)は、顧客の強い要望を受けて設置を決めた。通販業者のほかメーカーからも、高機能な大型倉庫を使いたいとのニーズが強い。延べ床面積6万㎡を超える倉庫を複数保有することで、当社もさらなる営業展開と業務の拡大が図れる。
――成約状況は。
中西 吉見営業所は新規顧客の業務、既存顧客の移動で、半分ほどスペースが埋まると見込んでいる。稼働中の綾瀬営業所も引き合いが多く、複数の顧客と交渉を進めていく。
――拠点統廃合はどう進めるのか。
中西 8月に川崎営業所を廃止し、横浜営業所などに機能を移管した。これからも拠点の再編を検討していく。一方、既存倉庫を保有し続けることで生まれるビジネスチャンスも必ずある。どの倉庫がどの顧客の業務を行うのか考えながら、最適配置を見極める。
越で冷蔵冷凍食品物流参入
――来夏にベトナムで冷蔵冷凍食品物流事業が始動する。
中西 来年7月をめどに、川崎汽船、クールジャパン機構と創設した合弁会社が、営業を開始する。生活水準の向上で、冷蔵冷凍食品に対するニーズは高まっている。日系小売企業も相次いで進出。すでに一部の日系物流企業が冷蔵冷凍物流を手掛けているが、参入の余地は十分にある。
――まだまだ市場の拡大が見込める分野。
中西 いまは加工食品が中心だが、今後は生鮮食品関連の業務も増えてくる。日本で生産した食品をベトナムに輸出する動きも拡大するだろう。まずは国内をメーンに冷蔵冷凍食品を動かせる体制を構築する。当社にとってベトナムは第二の故郷。安定した生活を物流の側から支援したい。
――ミャンマーの物流事業の進ちょくは。
中西 現地の食品加工企業と合弁会社を設立した。この会社は日系食品メーカーとも提携しており、当面は食品関連の業務を手掛けるだろう。ミャンマーの経済発展に伴い国民の生活水準が向上すれば、家電、自動車関連の物流についても需要が高まる。
記者席 苦しい経験を糧に
「昨年は本当に厳しかった」。取材中、こんな言葉を漏らす一幕が。前期は消費増税の反動減などで苦しい経営が続いた。荷主にコスト上昇分の転嫁を求めても断られ、我慢を強いられることもあったという。
一方、数年かけて取り組んだ〝改善〟の種は実りつつある。従業員一人一人の収益意識は大きく向上。粘り強い交渉により、料金改定でも成果が出てきた。それでも「顧客から信頼、満足を得られる仕事をしなければ何も始まらない」と気を引き締める。
今期は前身の大崎運送時代から数えて百期目の決算。「節目の期を何としても黒字化し、これからの飛躍につなげなければならない」。今期にかける思いは一層強い。
(経歴)
中西 弘毅氏(なかにし・ひろたけ) 昭和30年10月13日生まれ、59歳。北海道出身。55年日大農獣医学卒、57年大崎運送(現・日本ロジテム)入社、60年取締役、平成3年常務、5年専務、9年副社長、11年社長。(小林 孝博)