インタビュー

【 トップに聞く海上輸送こんなサポート 】
高速性武器に需要獲得 荷主の意識変化も追い風

2025年04月29日
新日本海フェリー 入谷 泰生 社長
日本海で北海道、近畿間を結ぶ航路を運航する新日本海フェリー(本社・大阪市)。海上輸送の強みとなる定時性と3日目配送を実現する独自のサービスが評価され、利用は堅調だ。入谷泰生社長は「ドライバーの労働時間規制を受けて、トラック会社に加え荷主でも本格的な活用を目指す機運が高まり、中長期的な輸送量増加が見込まれる」と話す。
――足元の実績は。
入谷 運航する小樽(北海道)―舞鶴(京都府)航路、苫小牧東(北海道)―敦賀(福井県)航路、小樽―新潟航路、苫小牧東―秋田―新潟―敦賀航路では、主に農畜産品や日用品を扱う車両の定期利用が大半を占めている。2024年度の航走実績は、前年度を上回り安定的に推移した。
内航への関心高まっている
――利用動向はどうか。
入谷 当社の航路では、トラックから海上輸送への転換が進む中で無人航走による利用が多い。例えば、グループ会社の阪九フェリーが就航する関西―九州航路や東京九州フェリーの関東―九州航路では、まだまだ有人航走の比重が高い。
――モーダルシフトは進んでいるのか。
入谷 発着地によるが、全体としてモーダルシフトの余地は大きく残されている。トラック会社に加え、荷主の海上輸送に対する関心が一段と高まっている。長距離陸送が困難になったことで、荷主の物流に対する意識が変わってきている。当社への問い合わせも相次ぎ、輸送量の中長期的な伸びを期待している。
――環境負荷の低減にも貢献する。
入谷 一度に大量の荷物を運びながら、他の輸送モードよりも輸送時に排出される二酸化炭素が少ない。ユーザーの50年カーボンニュートラル達成に貢献する。
――新しい船舶燃料の活用に向けた考え方は。
入谷 難しい課題だ。新しいエネルギーを使用する船舶の導入に向けた検討のため、研究・開発の動向に注目している。国内で先行事例があるLNGをはじめアンモニアやバイオ燃料などの選択肢がある。
――決め手に欠ける。
入谷 現状、供給の安定性や調達コストの面で適合C重油の使いやすさに及ばない。運用方法も化石燃料を使用する従来船とは大きく変わることが想定される。活用に踏み切ることができる決め手に乏しく、具体的な道筋はまだ見えていない。
定時性は海運の大きな強み
――改めて海上輸送のメリットを。
入谷 全体に共通する大きな強みは定時性。海を交通し、他の輸送モードと比べ地震や大雨、土砂崩れなどの災害の被害をほとんど受けることなく、ダイヤに沿った計画的な輸送が可能。台風の影響は避けられないが、港湾施設に問題がなければ再開は早い。当社航路の強みは高速性。航行速度に優れた船舶を運用し集荷から配送までを3日目で完結することができる。小樽―舞鶴航路では、今年12月から順次、2隻を新造船に代替し、最新の輸送ニーズに対応する。
――需要獲得に向けた施策は。
入谷 海上輸送の特長・利点を周知しながらユーザーとの接点を増やしていく。また、トラクターやシャーシなどの輸送機材を持つグループ会社のマリネックスを通じて、新規ユーザーの陸送からの転換を積極的にサポートする考えだ。