インタビュー

【 社長インタビュー 】
現場重視「生き生きと」 連携の重要性高まる

2025年04月22日
JPロジスティクス 安達 章 社長
JPロジスティクス(本社・東京、安達章社長)が、JP(日本郵便)グループに参画して10年を迎えた。他社との連携が次々に浮上し、特積み業界の行方を左右するとして注目度が高まっている。そんな中、安達社長は就任直後から、業績の反転攻勢に向けた戦略を着実に進展させるとともに、内部体制の再構築を図ってきた。「日本運送を源流に持つ伝統とJPの文化を融合させ、現場の声を重視する経営で成長につなげる」と荒波を乗り越える覚悟だ。
ボトムアップへ組織を再編
――昨年6月、社長に就任し、間もなく1年。
安達 厳しい船出だった。社名に〝JP〟の冠を頂き、2023年、JPロジスティクスとして新たなスタートを切った。業績を立て直す土台づくりの使命を負い、組織改革に着手した中、コンプライアンス(法令順守)が一部欠如していた事案が発覚し、内部体制の立て直しが急務だった。
――刷新とは。
安達 (1)経営理念の浸透(2)交通事故の根絶(3)コンプライアンスの徹底――の3本柱をマネジメントの軸に据えた。経営理念では、JPグループで掲げる「顧客と社員の幸福追求と地域社会への貢献」という方向性が欠かせない。一体感を持たせる組織とするため、24年4月、現場を輸送事業本部と物流事業本部に再編。さらに支社は東日本、西日本、九州の三つに集約した。狙いは現場の声を重視し、ボトムアップ経営に転換することだ。その上で「明るく、生き生きとした会社に」することを考えている。
――その思いは。
安達 前任の日本郵便近畿支社、四国支社の経験を生かしている。当社の歴史をたどると紆余(うよ)曲折あったが、社員は愚直に仕事に取り組み、優秀な人材がそろっている。そこで、支店訪問などを通じて現場の声を吸い上げると同時に、褒める文化を醸成し活性化すれば、生産性はおのずと高まる。
4管理を徹底採算性見極め
――適正運賃・料金収受が業績の立て直しに欠かせない。
安達 値上げ交渉では、顧客別の採算性を洗い出した上で交渉を進めた。長年の取引実績も勘案しつつ、本社主導で計画的なスケジュールを立てて臨んでいる。推進、案件、行動、能力の四つの管理を徹底し、売り上げの確保も必要だが、採算性を重視する姿勢を追求するとともに、得られた成果は現場に還元していく。
――他社との関係強化に注目が集まる。
安達 近物レックスとの業務提携は、滋賀支店(滋賀県湖南市)、静岡支店(静岡市)で共同運営を開始している。同社の経営陣との信頼関係は進化している。また、JPグループとセイノーホールディングスグループの提携について、当社としては幹線・集配の共同輸送、幹線での自動運転の試験を始めている。
――JPによるトナミホールディングスのMBO(経営陣による買収)も明らかになった。
安達 非常に前向きな話題だ。トナミHDは特積みを軸とする業態が同じで、エリアの補完など親和性が高い。TOB(株式公開買い付け)の状況を見極める必要はあるが、どうシナジー効果を発揮するか協議していきたい。JPグループが企業間物流に本腰を入れる姿勢が表れると同時に、連携の重要性はますます高まる。
――事業戦略の行方は。
安達 今年、旧トールエクスプレスジャパンがJPグループに参画し10年の節目を迎えた。国内外を一貫する物流体制を充実させるため、親会社のJPロジスティクスグループが昨年11月、関西国際空港に保税蔵置場を持つJPライネックス南海パーセルを子会社化した。特積み事業と両輪で、成長の礎を築き上げる決意だ。(取材は3月10日実施)
記者席 三現主義、経営哲学に
自分自身の目で確かめないと気が済まない――。現地、現物、現実を重視する三現主義と、経営の神様と称される松下幸之助氏の経営哲学の一つ「物をつくる前に人をつくる」をモットーとする。JPロジスティクスに移っても現場を重視する姿勢は不変で、各拠点に足を運び社員との対話を重ねて基盤を固めてきた。
日本郵便(JP)の動向には注目が集まる。ロジスティクス事業の強化は成長戦略の一つで、同業他社との連携や買収が相次いでいる。グループの企業間物流を担う中核会社として、共同化などの具体策をどう講じるか、手腕が期待される。
趣味の一つが山登り。「百郵山(ひゃくゆうざん)」と銘打ち、富士山に2度登頂するなど毎月楽しむ。企業間物流の〝雄〟を目指し、仕事でも一歩一歩踏み出していく。