インタビュー

【 トップに聞く海上輸送こんなサポート 】
積載率平均9割に達し 平準化促進、専用室広げ

2025年02月26日
名門大洋フェリー
野口 恭広 社長
大阪南港―新門司港(北九州市)を1日4便運航する名門大洋フェリー(本社・大阪市、野口恭広社長)。ドライバーの労働規制強化を背景に週末の利用が広がり、積載率の平均が過去最高の9割に達するなど、幹線輸送で存在感を高めている。野口社長は「船腹には限りがある。サプライチェーン全体で見直しを図った上で、フェリーが果たす役割を担っていく」と話す。
―労働規制強化に伴って海上輸送に注目が集まっている。
野口 モーダルシフトの拡大を見据え、2021年度、船腹を従来船の1・5倍に拡張した「フェリーきょうと」「フェリーふくおか」の2隻を就航し、現在こうした対処が功を奏している。関西と九州を結ぶ物流の大動脈を支える使命を変わらず果たしていく。
週末利用広がり過去最高へ
―現況はどうか。
野口 航走実績は22年度が約18万4000台、23年度は約18万6000台と上限に近い水準だった。24年度は積載率が平均9割と過去最高に達している。内訳は月~木曜がほぼ満船、金曜は約9割、土曜が約8割、日・祝日は約6割で、年間を通して前年度を上回る見通しだ。
―課題だった平準化が進んでいる印象だ。
野口 荷主、トラック会社が海上輸送にシフトする動きは強いが、積載スペースに限りがある。リードタイムに余裕を持たせたり、発・着荷主も含めたサプライチェーン全体の見直しなど、さまざまな手段を尽くしてフェリーの利用が促進されてきた。トラックやシャーシの積載を担う乗組員の習熟度が上がり、効率が高まった側面もある。
1日4便体制選べるダイヤ
―強みは大阪南港―新門司港の1日4便体制。
野口 1日当たり上下計600台超のトラックを1航路で輸送するとともに、集荷状況に合わせて顧客がダイヤを1便と2便で選択できる点が強みだ。両港は高速道路に近く利便性に優れ、幹線輸送の利用にも適している。モーダルシフトの影響でドライバーが乗船する割合が高まっているため、「フェリーおおさかⅡ」「フェリーきたきゅうしゅうⅡ」の2隻は2月と3月のドック入りに合わせ、ドライバー専用室を28室増やす。
―大阪南港の近代化は避けられない課題。
野口 港湾施設は開設から半世紀を経たが、当時とほぼ変わっていない。現状の施設では、船舶の一層の大型化が困難になってきている。また、利用が増加しているトラックなどが一時待機する駐車スペースも不足気味だ。港湾管理者と協議を続け、使いやすい港に生まれ変われるよう努力したい。
―船舶の新エネルギーに対する考え方は。
野口 非常に難しい課題だ。15年に就航した現行船2隻を20年で代替えする場合、次期新造船は、国が50年に目指すカーボンニュートラルの実現を含めて考えていく必要がある。個社の対応では、新燃料や燃焼機関の評価・選定などに限界があり、石油元売り、造船所などと情報交換して取り組みを進めたい。
「安全はフェリー事業の命だ」
―運航の安全は欠かせない。
野口 安全はフェリー事業の命だ。乗組員が安全の取り組みを最優先することで、運航停止に至るような大きなトラブルは発生していない。安全・安心な輸送サービスを提供できるよう精進する。