インタビュー

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【 トップに聞く海上輸送こんなサポート 】

名古屋―仙台、利用急伸 MS、一貫輸送の発信増

2025年02月18日

太平洋フェリー
猪飼 康之 社長

名古屋―仙台―苫小牧(北海道)を結ぶ太平洋フェリー(本社・名古屋市、猪飼康之社長)。北海道発の農産物をはじめ自動車部品、紙・パルプ関連、雑貨など幅広い貨物の輸送を担ってきた。猪飼社長は「フェリーの認知度をより向上すれば潜在的な需要が囲い込める」とする。発信力を強化し、特に陸送と競合する名古屋―仙台航路で貨物営業の攻勢をかける。

―労働法制強化に伴って海上輸送に注目が集まっている。

猪飼 海岸線が長い日本列島で海上輸送が人・物流の主役を担っていた歴史を振り返れば、モーダルシフトは原点回帰と言える。将来にわたって当社のフェリー事業が存在価値を持ち続けると確信している。

―モーダルシフトの動向は。

猪飼 2023年度時点は海上輸送にシフトする動きが前倒しされると期待していたが、思うほどではなかった。モーダルシフトの追い風が吹くのかとさえ懸念した。24年度に入って実績は一定数伸びている。だが、トラックの輸送量を見れば、内航へシフトする潜在的な需要は大いにある。

―特に名古屋―仙台間は陸送と競合するが成長の余地がある。

猪飼 同区間の航送実績は、前年度と比べ約20%伸びている。リードタイムや隔日運航でトラックと厳しい競争下にあるが、両都市間の距離は約700キロメートルで、今後、陸送は難しくなる。船腹には余裕があり、荷主やトラック会社に営業攻勢をかけ、業績のさらなるけん引を期待している。

動画パンフ制作し提案強化

―需要を囲い込む決め手はあるか。

猪飼 認知度のさらなる向上が鍵を握る。その一環として貨物営業向けに「動画パンフレット」を制作し、発信を強めている。新規顧客を念頭にフェリー輸送は幅広い貨物が扱えることやさまざまなサービスを訴求している。例えば荷主の発注を見ると、納期、ロットはトラック輸送を前提とする考え方が主流で、海上輸送の理解や転換を促すきっかけにつなげたい。

―培ってきた一貫輸送サービスは強みだ。

猪飼 自社で保有する車両は、常温から冷凍、平車、ウイング車など各種整え、40年以上にわたってあらゆる貨物を輸送するノウハウを蓄積してきた。さらに苫小牧港近くに自社定温倉庫を持ち、ドレージ会社とも強固な協力体制を構築し、北海道―仙台―名古屋間で安定的な輸送サービスを提供している。

―船舶の新エネルギーに対する考え方は。

猪飼 現時点ではさまざまな情報を収集、分析することに尽きる。LNGやバイオ燃料などが検討されているが、価格や安定性など課題も残る。当社の二酸化炭素の排出量削減策では、19年に就航した「きたかみ」が省エネに最適な船型の採用などで従来船と比べ約15%減を実現した。さらに現行3隻が積載量を増やせば、トラック1台当たりの排出量を抑制し、地球環境の保全に貢献できる。

安全最優先礎に将来像描く

―安全はフェリー事業の根幹だ。

猪飼 安全最優先を社是に掲げ、全社員が日々取り組んで安心を提供している。この事業基盤を土台に(1)エコ(2)ロジ(3)ファン―を軸に事業を強化していく。エコは地球環境、ロジは物流、ファンは船旅を楽しむことや社会貢献で喜びを味わうこと。3つの方向性を引き上げることで、当社の企業価値はさらに高まると期待している。