インタビュー

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【 社長インタビュー 】

原価見直し、徹底的に 安全、BCP投資も進め 

2015年09月15日

新潟運輸 山田 博義 社長 

 平成27年4月期で2期連続の増収増益となった新潟運輸(本社・新潟市)。荷動きの落ち込みを運賃改善でカバーした。軽油価格の値下がりも増益に大きく寄与したが、「待遇改善、BCP(事業継続計画)や安全対策投資も進めている中で、今期も適正運賃収受に向けた活動を継続する」と山田博義社長。「変革」を掲げる中期3カ年経営計画の2年目は原価見直しを推進し、コスト意識をさらに浸透させる。

 ――足元はどうか。
 山田 昨年4月の消費増税後、荷動きが前年をクリアしたのは今年4~5月の2カ月だけ。悪化している。消費に直結する食品や雑貨関係が大きい。円安で輸入品が値上がりし、新潟港の取扱量も落ちてきた。通関収入もいま1つだ。
 ――そんな中、前期は2年続けての増収増益。
 山田 取扱量が3.5%減だった一方、運賃は4.5%上げた。利益面では従業員の待遇改善費用や傭車費アップの負担を、収入増、軽油単価の下落、小まめな整備による車両修繕費の圧縮で補った。売上高は前期比2.7%増の520億700万円、営業利益は同61.1%増の7億2800万円だった。
 ――前期は中期計画の初年度。
 山田 支店長、営業マンの原価意識の徹底に重点を置き、収益力強化に取り組んだ成果が出た。取扱量の減少には、より中身の濃い仕事を取り込んだことも影響している。タリフ(運賃表)を平成2年に統一。全体で約2万社の取引を同じ指標で捉えられるようにした。
 ――顧客にアンケートも行った。
 山田 約700社の声が集まった。おかげさまで良い評価。現場の機敏な対応力、中でも集配のセールスドライバーに対して高い評価をもらい、所属長を経由してすぐ現場に伝えた。地震、水害、雪害。これまで何度も経験したが、何かあっても新潟運輸が何とかしてくれる。そんな信頼がある。

集配乗務員の対応力に評価

 ――BCPで投資も。
 山田 来年1月、ホストコンピューターの入れ替えのタイミングで、耐震構造のデータセンターを利用する形に切り替える。情報システム関係では遅ればせながら、顧客がウェブ上で送り状作成できる仕組みも来春に向けて準備中だ。過去10年間、軽油価格の値上がりもあり、大掛かりな投資に踏み切れなかった。

実情報つかみ即行動に反映

 ――中期計画2年目の重点テーマは。
 山田 原価の見直しと収支分析を急ぐ。例えば各方面の中継料金が上昇しているが、いまのシステムではリアルタイムに反映されない。まずは原価を的確に認識し、一層の適正運賃収受を図る。収支管理は1日単位に近づける。実情報をいち早くつかみ、店所長には即行動につなげてもらう。
 ――運賃改善の目標。
 山田 本音を言えば、さらに10%ほど上げたい。だが荷動きが悪く、今期は来期に向けた足場固めの時期になりそうだ。もちろん採算ベースに乗っていない取引については交渉を継続していく。
 ――今期の計画は。
 山田 売上高532億6100万円、営業利益11億1400万円の増収増益を目指す。7月まではほぼ計画通り。8月は荷動きがふるわなかったため、上期は9~10月の動きにかかってくる。
 ――品質、安全が基本。
 山田 荷物事故は、原票1万件当たりの指標を出し、半減を目標に活動している。交通事故は年間20件が目標。今期は運行車約600台に搭載したデジタルタコグラフ(運行記録計)を、ドライブレコーダー一体型の最新機種に切り替える。車線逸脱警報による居眠り防止機能などを備えたもので、交通事故削減、さらなる燃費向上に期待したい。

記者席 運賃と顧客満足度

 ドライバーの確保、定着へ、昨年から臨時採用者の正社員化、待遇改善を進めてきた。若年定年した自衛官の採用にも長年取り組む。
 「いまは荷動きが落ちて人の不足感はない」。それでも荷動きの回復に備え「我慢しないといけない」。軽油価格は一時的に落ち着いているとはいえ、平成16年以前の2倍近い水準。設備面でも待遇面でもコスト上昇が避けられない。この先、企業が中長期の成長を描くために「引き続き運賃は上げていきたい」。
 一方で、「本当は安くて高品質が1番」と顧客目線も持ち合わせる。リアルタイムな収支管理が話題に上った際も、「顧客のニーズを的確につかめているかどうかも分かるね」。人の定着、品質の向上、顧客満足と対価である運賃。成長の土台をしっかりと見定める。

(略歴)
 山田 博義氏(やまだ・ひろよし) 昭和21年2月23日生まれ、69歳。新潟県出身。43年神奈川大卒、新潟運輸入社、平成6年取締役東海主管長、10年常務、13年専務、15年副社長、16年社長。(矢田 健一郎)