インタビュー

【 インタビュー 】
総合力で海外拡大を 非日系との取引増やす

2015年09月08日
日本通運 伊藤 豊 副社長
今期が最終の中期経営計画で、国際関連事業売上高比率40%を目指す日本通運(本社・東京、渡辺健二社長)。5月の大幅組織改正で、旧・国際事業本部を発展させた「海外事業本部」が誕生。「業績も人員も海外が国内を上回ることが目標」と同本部長を兼任する伊藤豊副社長。フォワーディングとロジスティクスを海外事業の中核とし、陸海空一体による国内外の総合力を結集して拡大に挑む。
――国際関連事業売上高比率の目標は40%。
伊藤 4~6月期は37.3%と目標に近づいた。今期は40%達成へまい進し、将来的には50%を目指す。グローバル物流企業として勝ち残るには、海外会社だけで5割以上稼ぐことが理想。次期経営計画に向け、拡大への具体的なロードマップを作っていく。
――担当する海外事業本部の役割は大きい。
伊藤 海外事業は当社成長の推進力。海外は未知の市場があり、新たな挑戦が可能な領域だ。海外事業本部の使命は、日通が海外で成長するためのブレーンになること。世界全体を俯瞰(ふかん)し、さまざまな物流ニーズを捉える役割がある。
陸海空一体で優位性高める
――5月、「陸海空の一体化」へ組織改正。
伊藤 特に航空・海運一体化の効果が大きい。「グローバルフォワーディング企画部」を新設し、従来国・地域単位だった航空機、船舶の調達を世界規模で行い、空・海一体で商品づくりを進める体制を整えた。欧米のフォワーダーと対等に競うために、調達力と商品力の強化で優位性を高め、倉庫・配送などロジスティクスの拡大につなげる。
――「陸」も融合。
伊藤 航空や海運をはじめ、鉄道、トラック、RORO船など多様なモードを組み合わせ、コスト・時間両面で顧客ニーズに適合する商品を開発し、「強み」にしたい。
――日本発着貨物に依存する体質を脱却。
伊藤 そうだ。ASEAN(東南アジア諸国連合)中心に海外―海外の輸出入をいかに取り込むか。現地で生産・消費する「地産地消」の需要も高い。日系企業の開拓とともに、非日系企業との取引も増やしていく。
――非日系との取引は増えているのか。
伊藤 量では日系との取引が圧倒的だが、顧客数では非日系も多い。非日系との取引を増やすには、優秀な現地スタッフを雇い、日通のDNAを継承する人材を育てることが重要。海外で働く約2万人のうち98%は、当社では「ナショナルスタッフ」と呼ぶ現地採用者。トップマネジメントの現地化も進める。
会社全体でグローバル化を
――国内との連携も重要。
伊藤 国内顧客の海外シフトが加速している。日本で扱っていた仕事を海外でもスムーズに立ち上げるには、航空・海運事業支店など国内との連携が不可欠。会社全体で「グローバル化せよ」というのが渡辺社長のメッセージだ。通運や自動車運送、重量品建設、警備輸送など国内で培ってきたノウハウを海外に展開していく面白さもある。
――効率化も課題。
伊藤 日本に比べ、海外は品質・コスト面の意識がまだ弱い。「グローバルロジスティクスソリューション部」には、新規事業を立ち上げる役割と、海外事業の効率化を進める役割がある。より良いサービス提供のため、国内からプロを派遣し、改善を進めている最中だ。
――ASEANの次は。
伊藤 インド経済圏だ。5月、私の配下に「日通グループインド代表」を置いた。インドとその西側の中東、アフリカを開拓するためのポストだ。インドの存在感は世界中に広がりつつある。M&A(企業の合併・買収)や現地企業との提携も必要になるだろう。
記者席 「アジアは譲れない」
「日通として〝一日の長〟があるアジアを譲ることはできない。アジアでの拡大が欧米、全世界のビジネスにつながる鍵だ」。欧州勤務が長かったが、中村次郎前副社長の下で約3年、アジアでの見聞を広めてきた。「毎月1、2回は海外出張を。各ブロックの訪問に加え、今後攻めるべきエリアを研究したい」と意欲満々。
「相手の立場で物事を考える」が信条。海外は言葉も文化も違う。「何を考え、求めているか」。相手の立場で考えれば、答えは見えてくる。
美術・音楽鑑賞、スポーツ観戦と趣味は「広く浅く」。英国日通時代、「ロンドンは天気が悪いのでよく美術館や博物館へ。発見もあった」。「1番の悩みは運動不足」と笑うが、「体を動かすのは好き。時間があれば朝晩ウオーキングをしている」
(略歴)
伊藤 豊氏(いとう・ゆたか) 昭和30年5月15日生まれ、60歳。宮城県出身。昭和53年早大社会科学卒、日通入社。海外企画部海外企画専任部長、英国日本通運社長などを経て、平成24年3月執行役員、同6月取締役兼執行役員、26年航空事業部長を兼任。27年5月代表取締役副社長兼副社長執行役員。(水谷 周平)