インタビュー

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【 社長インタビュー 】

新たな人材開拓先 模索 女性所長も初登用 

2015年09月01日

愛知陸運 小林 隆志 社長

 深刻なドライバー不足が叫ばれている。ドライバーの高齢退職と、若者が物流業界に入ってきにくい現状をどう打破するか。愛知陸運(本社・愛知県小牧市)では「新卒の採用に力を注ぐと同時に、これまで以上に中途採用に力を入れる」(小林隆志社長)方針。現有の従業員スキルの維持・向上にも積極的に取り組んでいる。

 ――業績はどうか。
 小林 平成27年3月期の売上高は299億円。今年度も同程度を見込む。トヨタ自動車の物流子会社であり、同社の製造の影響を強く受けるが、今年は昨年とあまり変わらない水準とみている。

人材確保の肝は待遇の改善

 ――重要課題である人材確保は。
 小林 定着率は高いが、待遇面ではまだまだ従業員が満足できる状態ではない。賃金や福利厚生などの待遇の向上が不可欠で、そのための荷主への運賃値上げ交渉も引き続き行っている。決算期などの節目に合わせて何度も交渉を持ち掛けることで、当社だけでなく業界全体が必死に処遇を改善しようとして現状を伝える。部分的に成果は出ているが、まだまだ継続していかなければならない。
 ――協力会社もドライバー確保に苦戦。
 小林 人材確保や育成のコストが上がっている。協力会社とは持ちつ持たれつ。少しでも改善の助けになればと、協力会社に対しては一部運賃を引き上げた。

先を見越した人材の育成を

 ――減っていくドライバーの補充は。
 小林 定年退職をはじめとした当社の退職予定者数は向こう数年間で、年間約20人のドライバーが減っていく計算。まず、10人は高卒採用。即戦力ではないが、10年後には社の中心メンバーとなる。入社して2~3年は完全に教育期間。その中で必要な免許を取り、戦力になってもらう。
 ――学校との協力も不可欠。
 小林 高校での説明会を積極的に行っている。就活担当の教師ともよく話し合い、同時に対象となる高校も広げる。業界内外の大手も社員を増やそうとしており、人材の争奪戦になっている。

自衛隊退職者に大きな期待

 ――20人の退職見込みに対し、10人の新卒者を採用する意図は。
 小林 中途採用も視野に入れての計算。これまではほとんど従業員の紹介を通じた採用だった。もっと積極的に人を集める方向にかじを切った。
 ――具体的には。
 小林 新しいところでは自衛隊への募集。若年定年退職者をターゲットにしている。大型免許保持者や運転経験者もいるので即戦力になる。規律も正しい。退職後に運送関連業界に来る人も一定の割合でいると聞く。まだ正式には決まっていないが、これから関係を築いていく先の1つだ。
 ――自衛隊員は評価が高い。
 小林 自衛隊の入隊研修にも参加し、新卒社員の研修とした。毎年希望企業が多く久しぶりの参加となった。厳しい内容だが、意識を学生から社会人へと切り替え、集団行動や規律を学べる有意義な研修だと思う。
 ――女性の働き手に対するアプローチは。
 小林 愛知陸運では初となる女性営業所長を登用した。「女性が働きやすい職場づくり」の一環。これまでも男女別々のロッカーやトイレを設置していたが、同性の上司がいることで、女性社員がより一層働きやすくなると考えた。毎年入社してくる女性社員たちが気軽に相談ができるような存在になってくれることを期待している。

記者席 自衛隊員を迎え入れ

 就任7年目となる小林社長。山積する課題の解決に向け、新たな試みを推進している。
 自衛隊員の募集もその1つだ。自衛隊には若年定年制があり、訓練を受けた20代の若者が定年を迎え、社会人として再出発することが珍しくない。民間では取ることが難しい免許を取得している場合も多く、働き盛りの優秀な人材が手に入る。規律を守り、声も大きく活気がいいと評判。それだけに引く手あまただが、小林社長は新戦力の確保のために動き出した。
 自衛隊の行う入隊研修にも今年、久しぶりの参加。2泊3日の行程。重い荷物を背負って山を登り、参加企業同士で体力測定の結果を競う。内容はハードだが、参加した社員は肉体的にも精神的にも鍛えられたようだ。

(略歴)
 小林 隆志氏(こばやし たかし) 昭和26年6月26日生まれ、64歳。新潟県出身。49年横浜国大工卒、トヨタ自動車入社、平成18年生産企画本部グループ長、20年愛知陸運代表取締役副社長、21年社長。(各務 朗仁)