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【 トップに聞く海上輸送 こんなサポート 】

航路網の「広さ」強み 環境対応船も順次投入

2024年11月12日

商船三井さんふらわあ
牛奥 博俊 社長

昨年10月、商船三井フェリーとフェリーさんふらわあの統合により誕生した商船三井さんふらわあ(本社・東京)。国内最大規模のフェリー・RORO船を保有し、牛奥博俊社長は「ネットワークの広さが強み」とする。西日本航路に続き、来年は大洗(茨城県)―苫小牧(北海道)でもLNG燃料フェリーを投入し、利便性の向上と環境負荷低減の両面で国内物流を支えていく。

―昨年10月、新会社が誕生した。

牛奥 変化の激しい国内外の情勢と事業環境に対応するため、2社のブランドを統合して事業規模を大きくし、財務体質を強化した。環境負荷低減を考慮した船隊整備をメインに、将来の事業の成長と発展に向けた投資を積極的に行っていく。常に進化し続ける会社を目指したい。

―改めて強みを。

牛奥 ネットワークの広さが強みだ。2社の統合で、定期航路6航路、運航船14隻を保有する国内最大規模のフェリー・RORO船社として、より良いサービスを提供できる。環境対応船の導入も先行しており、利用者の評価も高い。

あらゆる代替燃料否定せず

―LNG燃料フェリーの投入を進めている。

牛奥 来年は、大洗―苫小牧航路でも新たなLNG燃料フェリーが2隻就航する。大阪―別府(大分県)航路では2隻運航しており、2025年には東西で4隻体制になる。新造船は物流企業の利用が多い北海道航路の深夜便に投入する。船型も大型化したのでぜひ利用してほしい。

―今後の船舶エネルギーの考え方は。

牛奥 LNGは究極の解ではなく、今後もアンモニアやメタノールなどあらゆる代替燃料の可能性を否定せず研究・検討する。政府が掲げる50年のゼロエミッション(温室効果ガス排出ゼロ)達成に向け、商船三井グループは温室効果ガスを足元から減らしていくグループ環境戦略を進めている。課題はたくさんあるが知見を蓄えていくことで、将来の代替燃料が見えてくる。船員も育っていく。

―モーダルシフトの追い風は感じるか。

牛奥 海上輸送に対する期待値の高さを感じている。特にフェリーは九州発着航路を中心に、多くの物流企業にも利用してもらっている。一方、RORO船はフェリーに比べると、現時点では大きな動きが見られない。無人航送に切り替えるにはシャーシへの投資など物流システム全体の見直しが必要であり、少し時間がかかるだろう。

提案力で無人航送を普及へ

―利便性向上のため、どんなことに取り組む。

牛奥 海陸一貫輸送サービスを通じ、無人航送を志向する顧客を支援したい。当社グループは約1200台のトレーラーシャーシを保有しており、積極的に一貫輸送の請負を提案していく。加えて、RORO船利用の普及には認知度向上も重要。今後はサステナブルな(持続可能な)輸送方法の一つとしてさまざまな機会を通じ、荷主、物流企業にROROサービスを知ってもらう取り組みを進める。

―トラックと同様に内航でも適正なコスト収受が重要になっている。

牛奥 フェリー・RORO船は国内経済を支える重要な役割を担う。諸物価が値上がりする状況ではあるが、安全・安心で持続可能な海上輸送サービスの提供には、投資が必要だ。今後も良質なサービスを提供していくため、利用者には適正コストの収受についても理解してほしい。