インタビュー

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【 社長インタビュー 】

人手不足対策さらに前へ 「つなげる・届ける」核に

2024年11月06日

ニチレイロジグループ本社
嶋本 和訓 社長

今期、中期経営計画の最終年度を迎えたニチレイロジグループ本社(本社・東京)。この数年、業務革新や次世代輸配送システムの開発など、いち早くドライバーの残業上限規制の対策を進めてきた。4月に就任した嶋本和訓社長は「物流の人手不足はより深刻化する」との認識の下、取り組みを加速し「顧客に頼られる存在であり続けることが重要」と話す。

―新社長として描く企業像は。

嶋本 当社は365日食を支える物流企業として、日本最大の冷蔵設備能力を持ち、モノが届けられないことがないようにすることが第一。高品質な温度管理と現場作業を通じて安全・安心を届け、顧客にとってかけがえのない存在であり続けることが使命になる。

―事業環境はどうか。

嶋本 インバウンド需要も相まって外食向け商材が好調で、家庭用・業務用冷凍食品も堅調に推移している。昨年は(メーカーによる)値上げ前の駆け込み需要が発生し在庫水準は高かったが、解消されつつある。一方、運営コストの厳しさは続くだろう。自助努力で補い切れない部分は適正運賃・料金収受を進めていく。

R&Dセンターを立ち上げ

―業界では(ドライバーの労働規制に伴う)2024年問題の影響が懸念されている。

嶋本 現時点では影響は出ていないが、人件費や燃料価格高騰などの影響を受け、事業継続が難しい企業も出ていると聞く。物流の人手不足は今後も深刻化する課題だ。(年末・年度末の)繁忙期を中心に運ぶことができないリスクが顕在化してくる可能性もある。

―対策は。

嶋本 これまでも省人化・省力化に取り組み、経験者でなくても正確に作業を行える体制を整えてきた。低温下でも最先端機器を素早く現場に落とし込むため、今年度は首都圏の物流拠点の一角に「R&Dセンター」を立ち上げ、実証実験のスピードを上げる。入庫から出庫までの一連の工程で、デジタル化を推進することにより、さらなる効率化を推進したい。

―最終年度を迎える中期計画の進ちょくは。

嶋本 24年問題対策に注力し、荷待ち改善では主要50拠点にトラックバース予約システムを導入。30拠点で入庫を完全予約制とした。また、昨年度までに次世代輸配送システム「SULS(サルス)」の対象を関東―九州に広げ、今年度は関東―仙台・新潟・静岡に拡大した。冷食物流プラットフォーム(基盤)も大手冷食メーカーの共同配送を受託するなど、順調に伸ばしている。

次世代輸配送システム好調

―今後もサルスの拡大に取り組む。

嶋本 発着拠点で事前にパレタイズされた貨物を積み込み、トレーラーヘッドを交換するだけで次の目的地に向かうことができる仕組みは、多拠点展開する当社だから可能なサービス。今後は主要拠点から地域につなげる細かな輸配送網も強化する。

―次期中期計画の考え方は。

嶋本 人手不足に対応し、顧客に持続可能な物流をどう担保するかが鍵になる。共同化・効率化につながる既存サービスに加え、人と機械の最適な融合による省人化・省力化に磨きをかけ、機能強化を進めたい。

―厳しい環境下、改めて何を強みとするか。

嶋本 当社は高い設備能力とそれを支える人材を持つが、それだけでは数の勝負になる。「つなげる・届ける」ための機能、仕組みを複合的につなぎ合わせ、強みに磨きをかける。将来を見据え、CSRD(企業サステナビリティー報告指令)のような国際ルールへの対応も進め、顧客から選ばれる企業を目指していく。

記者席 チャレンジを後押し

新社長として、社員のチャレンジを積極的に後押しする企業を目指している。「上司、経営層が取り組みを理解し、背中を押す風土は当社の良い文化。この考えを経営で大切にしたい」
1996年の入社以降、国内の新センターや、海外の新事業の立ち上げに携わってきた。いずれも重圧のかかる仕事で、苦労も多かった。それでも、先輩社員をはじめ周囲の支えがあり、チャレンジできる環境にあったから乗り越えられたと振り返る。

「失敗もあるが、恐れずに取り組んだことは経験になる」。同社は安全・安心で安定的な物流サービスを提供するため、先進的な取り組みを進めている。社員が積極的に手を挙げられるよう、挑戦を後押しする。