インタビュー

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【 社長インタビュー 】

適正運賃交渉を継続 品質向上で差別化図り

2024年10月16日

新潟運輸
坂井 操社長

2024年4月期連結業績を増収増益とした新潟運輸(本社・新潟市、坂井操社長)。大信物流輸送のM&A効果が主因だが、単体では荷動き低迷から減収となり、経費削減に努め増益を確保した。今期についても荷動きの行方はなお不確かだが、坂井社長は「経費削減策を継続しつつ、適正運賃収受交渉と輸送品質向上の取り組みを推し進める」と話す。

―前期、連結業績は2期ぶりの増収増益。

坂井 連結売上高は前期比8・3%増の662億1600万円、経常利益は同15・7%増の10億1600万円。大信物流輸送などのM&A効果だ。だが、荷動き回復は見られず単体では減収増益。償却費をはじめ経費削減に努め増益を確保した。

―個人消費の低迷も背景に市場は停滞気味。

坂井 前期、特積みの取扱物量は1日当たり4~5%ほど減少。主力の化学品関連も伸び悩んだ。市場環境が厳しい中で一部ダンピングの動きもあり、運賃改善が進めづらい状況でもあった。足元では7月以降荷動き回復の兆しがある一方、幹線輸送を中心に協力会社の車が集まりにくくなっている。特に関東―関西間で確保が難しい。

―そうした中、鉄道利用を開始した。

坂井 9月から、新潟―大阪間で鉄道コンテナ輸送を始めた。月~金曜日の毎日、新潟発と大阪発で1基ずつ31フィートコンテナ貨物を仕立てている。冬季の雪害で幹線道路が通行止めになる影響で、トラックとリードタイムに差がなくなりモーダルシフトが可能になった。11月にはコンテナを「シルバー特急便」のデザインを施したものにする。

―ドライバーの働き方改革に伴う24年問題。始まってみてどうか。

坂井 数年前から改革を進め備えてきたため、特段問題はない。ただここに来て、関東・関西を中心に定年退職を含めドライバーの退職が目立ち始めた。5月以降、新潟から応援を出すなど対応している。協力会社の撤退も増加。配達の部分でも協業を模索している。

物流網安定へ協業拡大模索

―エスラインギフとは幹線輸送で協業中。協業先は広がるのか。

坂井 ドライバー確保が難しいことが協業の何よりの理由。ありがたい半面、人材の確保が追い付かない点では悩ましい気持ちもある。

―貸し切り輸送と倉庫事業の売り上げを伸ばす戦略は堅持する。

坂井 24年問題も踏まえ、貸し切り輸送は案件ごとに精査しているところだ。顧客ニーズに従来通り応えることが難しくなるものもあれば、大信物流輸送と共同営業をかけているものもある。特積みよりも荷動きの停滞感は強く、競争は激しくなっている。

―倉庫はどうか。

坂井 6月に山形県で一時保管倉庫併設の米沢支店を新築・移転した。26年春、静岡でも新規にオープンするが、特積みターミナルのみとする計画。建築費の高止まりで、当面慎重に検討していく必要がある。

PDCA回し事故3割削減

―今期も適正運賃収受交渉を展開する。

坂井 4月を目前に2~3月にかけて要請をした。賃率5%アップを目標に、下期にかけてまだ交渉を終えていない顧客へも要請を展開する。

―品質向上にも力を入れている。

坂井 直近では商品事故は前年比3~4割程度減少した。この1年半、PDCA(計画・実行・評価・改善)会議を先頭に改善を進め、今期に入り成果が出てきた。片面パレットから両面パレットへの見直しやこん包強化をお願いするケースもある。輸送品質で差別化を図り顧客満足度を高めることに、今一番こだわって取り組んでいる。

記者席 賃率5%アップ

同業他社の動きも気になる中で、賃率アップの目標を社内で上がってきたよりも高い「5%」に設定し直した。コストは増す一方。適正運賃収受を進めつつ顧客に選ばれ続けるためにと、品質強化に着手。「1年余りをかけて目に見える成果が出てきた」

成長施策の一つ、倉庫事業についてはグループに丸運建設があり、建設業界の内情も分かる分、建築費の高止まりは余計に頭の痛い話。「自社倉庫を3万坪(9万9000平方メートル)にしたいが、あと5000坪(1万6500平方メートル)足りない」。

7月以降、特積みの1日当たりトン数は回復傾向。「コロナ禍前には届かないが元気の出る話」と笑顔。経費5%削減策を今期も継続しながら、適正運賃収受とともに経営目標を目指す。