インタビュー

【 社長インタビュー 】
かつてない期待を好機に 31ftコンテナ積極増備 全国通運

2024年08月06日
永田 浩一 社長
全国通運(本社・東京、永田浩一社長)は今年度、鉄道貨物輸送量の倍増を掲げた政府の物流革新緊急パッケージやJR貨物グループ中期経営計画と連動した施策を展開。31フィートコンテナの増備や600キロメートル以下の中距離帯輸送の開拓を推進する。「環境問題や労働力不足問題で鉄道貨物輸送への社会的期待がかつてないほど高まっている」と永田社長。好機を生かしモーダルシフト促進に拍車を掛ける。
―鉄道輸送量倍増を目指す政府方針をどう受け止める。
永田 荷主でもモーダルシフトを本気で推進しなければならないとの意識が強まり、鉄道貨物輸送への期待が過去にないほど高まっている。まさに千載一遇のビジネスチャンス。強い期待に応えるためにJR貨物や全通系の利用運送企業としっかりタッグを組み、カーボンニュートラルや物流2024年問題に対応していきたい。
3年で倍増へ10年後は5倍
―トラックからのシフトを図りやすい31フィートコンテナの増備を推進。
永田 現在、営業元請けとしてウイング、(荷台の床を電動でスライドできる)オートフロア、冷凍の3種類の31フィートコンテナを計72基保有している。これらを3年後にほぼ倍増の141基、10年後には約5倍の350基に増やしていく。
―これまでにない規模の設備投資だ
永田 増備や利用拡大を望む顧客のニーズを見据えて計画を立てた。JR貨物にコンテナの置き場や荷役用設備の充実を進めてもらう必要はあるが、まずは当社ができることを掲げ、「全通はやるぞ」という姿勢を示すことが大切だ。
―増備に伴う管理体制の強化も重要。
永田 7月1日付で鉄道事業推進部に「コンテナ管理グループ」を設置した。JR貨物のコンテナ部との窓口業務や点検・整備の手配を一元管理する部署だ。従来コンテナの運用・管理は各部署で行っていたが、コンテナの増備に併せてそれらを効率化することで、より営業に注力できる体制を築いていく。
鉄道と内航船の相互利用も
―中距離帯輸送ニーズの開拓にも注力。
永田 1月にスタートしたネスレ日本との静岡―大阪間のモーダルシフトが代表例。関東―東海や関東―東北、関西―九州でも強いニーズがあることから、年度内のコンテナ輸送開始に向けた準備を進めている。
―災害による鉄道輸送障害時対策もさらに強化する。
永田 先行して大洗(茨城県)―苫小牧(北海道)間のフェリー活用を進めている。線状降水帯の頻発などに伴う輸送障害による山陽線の寸断が今後も起こり得ると想定し、地元運輸局とJR貨物が共催するBCP策定に向けた官民一体の検討会にも参加。さらに商船三井グループと平時・非常時を問わず内航船を活用し安定輸送を確保する「フェーズフリー」の体制構築や、鉄道と内航船の相互利用を目指し、この夏までに関東―九州間で試験輸送を実施する準備を進めている。ためらうことなく迅速にトラックや船の代行輸送が行えるよう、代行輸送費用保険も導入した。
―22年から関西―関東間で運行中の「フォワーダーズブロックトレイン」の利用も拡大へ。
永田 22年度は82%だった上り・下りの平均利用率は23年度に93%まで向上。今年度は全日平均で95%以上の利用率を目指す。平日は利用率が100%になることもあるが、土曜は70%台と伸び悩んでいることが課題。JR貨物による貨物駅での作業体制充実に加え、荷主にもリードタイムの緩和や事前集荷などへの理解・協力を求めながら、利用を広げていきたい。
記者席 新しい酒は新しい革袋
6月、全国通運業連合会で福田泰久前会長から中山和郎会長へ13年ぶりに交代。JR貨物では、貨物駅に営業所を一体化する組織改正で全国6支社のうち5支社で営業部長が異動し主要駅長に就いた人もいて、「本気で改革に取り組むことを実感した」。
国レベルで鉄道貨物輸送量倍増を目指す画期的な転換点。「新しい酒は新しい革袋に盛れ」の故事を引き合いに出し、「新体制の下、JR貨物と強固なタッグを組み、緊密に連携し業界を大いに盛り上げたい」。
社長就任から4年。経営改革の推進に力を注ぐ。直近では、機動的で継続可能性の高い営業体制構築へ、固定化していた営業部門課長クラスの担当顧客を変更。さらに24年ぶりのベースアップを実施。営業元請けとして、臆せず顧客に適正運賃収受を求めるよう呼び掛ける。
(略歴)
ながた・こういち=1957年4月13日生まれ、67歳。岩手県出身。82年東大法卒、新日本製鉄(現・日本製鉄)入社。95年JR貨物入社、執行役員東北支社長、取締役兼執行役員関西支社長などを経て、2018年取締役兼常務執行役員、20年全国通運社長。