インタビュー

【 社長インタビュー 】
安定輸送で地元支える 荷主協調で改善例も

2024年05月14日
四国運輸
松本 俊一 社長
四国運輸(本社・高知市)は、地元・高知経済の根幹を支える物流サービスを幅広く展開している。一方、人口減少をはじめ、地方が抱える課題に直面する中、松本社長は「事業の継続性や収益性は考慮すれば、荷主との協調が不可欠」とする。業務効率化を推進しながら、安定的な輸送体制の構築を強固にしていく考えだ。
多様な働き方外国人採用も
―社長就任から間もなく1年を迎える。
松本 重責を背負っている。ドライバーの労働規制強化など業界が大きな節目を迎える中、地元・高知の経済を物流を通して支える使命も負っている。特積みを核に医薬、園芸輸送などの各事業をいかに継続・発展させるか、試行錯誤している。
―経営の根幹は人材。
松本 ダイバーシティー(多様性)の考え方は欠かせない。まずベテラン社員のフィールドを広げるため、定年を65歳まで引き上げる。例えば、長距離幹線輸送で活躍したドライバーには、集配への転換、労働時間を絞るなど、個々の希望に即した働き方を模索していく。同時に、培った技術や経験を次世代に継承する環境を整えたい。
―待遇や現場環境の改善は若者、女性の確保にもつながる。
松本 同一労働・同一賃金を基に、エリア社員を正社員並みの待遇にし、人材の裾野を広げていく。デザインと機能性を追求したユニホームの更新で働きやすさも実現してきた。少子化に伴い人材獲得競争の厳しさが続くことは避けられず、海外出身者の雇い入れも視野に入れる。
―コロナ禍を経て変化はあったか。
松本 研修は大きな影響を受けた。実施できなかった集合研修は、新型コロナウイルスの5類移行で復活させた。これまで安全や品質向上、救命救急、事故防止などをテーマに研修を行っており、成果を出してきた伝統を磨き上げていく。
他社と連携模索年商60億円必須
―基幹事業の強化は地元貢献に役立つ。
松本 特積み事業は四国の同業と手を組み、1994年に発足した「五社会」をベースにする考えは堅持する。さらに他社とアライアンス(提携)を強めていきたい。また、園芸品輸送は高知経済の基幹で、法令順守を大前提に安定的なサービスの構築に努めなければならない。JAとは従来より一歩踏み込んだ信頼関係を醸成し、出荷時間の調整などを模索していく。
―高知県が抱える特有の事情もある。
松本 県内は東西に長い半面、人口は県都高知市に3分の1が集中している。各拠点を維持するためには、あらゆる荷物を扱って収益化するとともに、協力会社の支援も行っていく。
―運賃・料金の底上げは不可欠。
松本 ドライバーの残業上限規制に伴う2024年問題の浮上や、改正改善基準告示で多くの顧客と交渉するきっかけとなった。人件費など固定費の上昇が続く中、値上げ幅に満足しておらず、継続して協議する。加えて、荷待ち時間の改善など一部顧客で実績が上がっている。生き残る努力を怠ってはならない。
―業績の目標は。
松本 23年3月期の売上高は約59億円。創業70周年を迎える25年までには安定的に60億円台を確保し、さらなる高みを目指していく。
記者席 基盤を固める
オールラウンダーが伝統のバトンを受け継いだ。入社1年目に地元室戸市の支店に配属されて間もなく、上司、先輩が諸事情で業務から離れる試練に。事務処理、配車などのマネジメントを担わざるを得ずたたき込まれた。集配助手にも従事し「振り返れば、唯一無二の体験」と当時の苦労を笑い飛ばす。
商業高校で取得した複数の資格を見込まれ、コンピューターシステムを立ち上げる本社電算課に異動。一連の現業経験を生かし、業務の効率化に貢献した。
取り巻く環境が激変する中でも「やはり人材が重要」と力説。多様化を優先事項とし、基盤固めにまい進する。
その思いの原点は少年時代に毎週、待ち焦がれていた少年ジャンプを運ぶ同社ドライバーの勇姿で、「高知の物流を堅持する」と誓う。