インタビュー

メインビジュアル

【 社長インタビュー 】

挑戦し続ける企業に 80年の節目、成長を加速

2023年12月26日

東部ネットワーク
若山 良孝 社長

来年1月1日で創業80周年を迎える東部ネットワーク(本社・横浜市)。長年、輸送をメインとしてきたが、近年の収益基盤改革では3PLと利用運送の2本の柱を加え、次の成長への足場を固めた。長期ビジョンでは10年後の売上高目標を150億円に設定。若山良孝社長は「新たな挑戦への意思を持つ人が参画し、成長をけん引していける会社にしたい」と話す。

収益基盤改革進め倉庫増設

―80周年を迎える。

若山 横浜市東部地区の運送会社13社による戦時統合によって誕生し、戦後の高度成長の中で成長を重ねてきた。諸先輩に感謝するとともに、就任して7年間、会社として今をどう生きるかを重視し、働き方改革と収益基盤改革を進めてきた。

―というと。

若山 2016年の就任後、上場企業としてコンプライアンス(法令順守)を一層徹底すべく、労働時間削減などの働き方改革に着手した。同時に取り組んだのが収益基盤改革で、以前は海老名(神奈川県海老名市)と北陸(富山県砺波市)の2カ所でのみ展開していた3PL事業を拡大すべく、物流センターの新設を進めてきた。現在は大井川(静岡県吉田町)、滋賀(滋賀県愛荘町)、堺、神戸、広島にも物流センターを構えている。

―既存事業も見直した。

若山 この間、茨城、千葉、新潟にあった石油輸送のための営業所を整理した。環境変化を捉えた動きで、長年の輸送事業で培ったノウハウを生かしつつ、過去に扱ってこなかった貨物にも挑戦している。3PLセンターではかつて飲料中心の貨物を扱ってきたが、現在さまざまな製品へ拡大。あるセンターでは荷主7社の貨物を預かり、都度の顧客ニーズに応じて家電、ホームセンター関連、原料、プラスチックも手掛けてきた。別のセンターでは半分は飲料、半分はドラッグストア関連を扱うなど多様な保管物流のノウハウの拡大も図ってきた。

長期ビジョン若い力も結集

―売上高構成は。

若山 3PL、自社輸送、(利用運送の)トランスポート・サービスの各事業がだいたい同程度になってきた。丸全昭和運輸との協業で24年度には滋賀に当社初の危険物倉庫もしゅん工させる。危険物は、昨年グループ入りした魚津運輸が得意とし、産業用ガス、中でも水素輸送は今後のカーボンニュートラル(炭素中立)に向け高まる需要を取り込むのが狙いだ。静岡で水素輸送を開始したが、今後も石油・化学品輸送を軸に磨いた安全品質を生かしていく。

―10年後を見据え長期ビジョンを策定した。

若山 10年刻みでこれまでの歩みを捉えるとともに、創業90年に向け見定めた方向性を全社・グループに示した。詳細は各中期計画で詰めるが、売上高は150億円(24年3月期予想は101億1300万円)、営業利益9億円(同4億1700万円)を目標とした。

―M&Aも進める。

若山 3PL、自社輸送、トランスポート・サービスの各事業でM&Aの可能性を探っている。資本・業務提携を含め他社との協業も機会があれば前向きに検討したい。スピードが求められる中で、顧客と共に時代の変化を乗り越えていくことを志向する当社として、M&Aは新規事業の重要な鍵と位置付ける。

―基本方針の第一に人材の重視を掲げる。

若山 事業構成の変化に伴い、ドライバーに限らず企画、開発といった会社の将来を描ける人材の採用・育成にも力を注いでいる。長期ビジョンの策定は、30~40代の社員が中心となり進めた。経験を問わず、新たな挑戦への意思があればプロジェクト参画への門戸を常に開いている。志を持つ人がけん引していける会社にしていきたい。

記者席 顧客と共に歩む

「単に運べばいいとは考えていない」との言葉には、改善提案を通じ荷主の物流を最適化する3PLを柱の一つにして、顧客と共に成長を目指す姿勢がうかがえる。

荷主と協力会社が参加する会議でも、物流業界が直面する課題に同社としてどう取り組み解決していくかや、持続可能な物流網構築に適正運賃・料金収受が必要なことを繰り返し伝えてきた。

新しい運び方や事業展開を描き、試行錯誤もしながら、サービス領域を拡大し質を向上させてきた。一人一人が挑戦する風土づくり、意識改革のために、本社ではカジュアルな服装も取り入れた。

「M&Aを含め新規顧客が増え、いろいろな技術・ノウハウも身に付けて、社員にはかつての東部ネットワークとは違うなと感じてもらえているのではないか」