インタビュー

【 NIPPON EXPRESSホールディングス・海外戦略 】
強み磨き反転攻勢へ 種まきを着実に

2023年10月17日
NIPPON EXPRESSホールディングス 長嶋 敦 専務執行役員
NIPPON EXPRESSホールディングス(本社・東京、斎藤充社長)は、海外事業拡大に向けた戦略を着実に進める。現在進行中のカーゴ・パートナーの子会社化で、海運・航空貨物取扱量の拡大による競争力強化が見込める上、中東欧地域の営業基盤も大幅に拡充。中期経営計画で掲げた目標達成のため、グローバル事業担当の長嶋敦専務執行役員は「景気回復を待つことはない。種まきを着実に行い、川上から川下までの物流ニーズを取り込みたい」とする。
―足元では厳しい環境が続く。
長嶋 海外事業の1~6月期の業績は、前年同期比24%減の3178億円となり、中計目標値の7200億円達成は厳しい見通しだ。日本と中国の取扱数量の減少が響いている。一方で、アジアから米国への荷動きが若干増えてきたり、自動車部品の航空輸出が戻りつつあるといった明るい兆候も見られる。
ロジスティクス堅調に推移
―ロジスティクス事業は堅調だ。
長嶋 米国での医薬品・アパレル・自動車の倉庫需要や、欧州のハイファッション物流、倉庫配送需要などは堅調だ。東アジアと南アジア・オセアニアは中国経済の減速が響いているが、中国から南アジアへの生産移管の動きもあり、こちらはフォワーディングを中心に貨物を取り込みたいと考えている。
―トータルで顧客への提案を行う。
長嶋 川上から川下までの「End to End」のニーズが高まっている。アカウント営業を強化し、提案の機会を捉えるように社員を鼓舞している。
―非日系顧客の拡大が鍵。
長嶋 当社がまだ力が及んでいない部分で、伸びる余地が大きいと考えている。グローバル事業本部(GBHQ)の部長7人のうち、営業戦略部、ロジスティクスソリューション部、航空フォワーディング部の3部門は外国人の部長を登用した。彼らの知見も生かしながら、顧客へのアプローチを強化する。
―具体策は。
長嶋 アカウント営業の高度化・深度化と、入札対応を強化している。数十社の顧客を選定し、企業ごとに専任の担当者を配置。5つの各リージョン(地域)にもそれぞれ担当者を任命し、顧客ニーズを先読みして可能な限りのメニューを提案できる体制を構築した。地域横断的なニーズにワンストップで応えることができる。
―入札については。
長嶋 何千という膨大な輸送経路(レーン)に対し、限られた時間で金額を設定し入札する必要がある。営業担当者の事務負担を減らせるよう一括対応する専門部署をつくった。営業担当者は顧客とのコミュニケーションや情報収集に専念できる。入札の状況は営業担当者に返し、次の営業に役立ててもらう。将来的には自動化なども検討したい。
企業文化の共有が基盤
―ボリューム戦略ではカーゴ・パートナーの傘下入りを進めている。
長嶋 単純に量を追求しての買収ではない。まず「人を大切にする」という経営方針が同じだったことが大きい。その上で、まだNXグループでは基盤の弱い中東欧で質の良いサービス基盤を持っていることも判断材料だった。海運・航空の貨物量もあり、グローバル市場の競争力強化につながるとの期待もある。
―サービス向上や、船会社・航空会社との交渉にも役立つ。
長嶋 フォワーダー・キャリアー問わず、物流企業の多くが一貫物流サービスを強化しており、表面的には競争関係にあるように見える。だが、それぞれ強みはあり、フォワーダーの強みは情報量の多さと面の営業ができる部分だ。船会社や航空会社とも個別の取引を深化させパートナーシップの構築を進めたい。
―アジア系であることも特長として生かす。
長嶋 今後、アジアの経済が成長する中、文化的背景が似ているということは営業面でもメリットがある。ボリューム戦略と言っても、欧州系のメガフォワーダーと運賃のみで競り合うのではない。アジア各国の経済成長による物量取り込みや、非日系顧客へのアプローチなど、まだできていないこと・これからできることを積み上げ、メガフォワーダーとも戦える企業へと成長したい。