インタビュー

【 社長インタビュー 】
拠点整備の成果実感 顧客の注目集め業務拡大

2023年09月04日
大和物流 木下 健二 社長
大和物流(本社・大阪市)は物流拠点の整備を推し進めている。相次ぐ新設により、「さまざまな顧客から注目され仕事の相談が寄せられている」と木下健治社長。拠点拡充は継続する方針で「顧客のニーズに応じて臨機応変に進めたい」と話す。
―経営環境をどうみる。
木下 景気動向が経営に大きく影響するとは考えていない。浮き沈みに合わせ、必要な対応を取ればよいからだ。荷動きも同じで増加するものもあれば、減少するものもある。地域によっても具合は違ってくる。重要なのは状況に応じて伸長する貨物の輸送ニーズをしっかりと獲得することだ。
―貨物の取り扱い状況はどうか。
木下 全体として順調に推移している。活発に動いている貨物の一例が半導体関連品で、東北や九州で旺盛な入出庫が続いている。当初、見込んでいた以上の荷量があり、追加で保管スペースを確保したほどだ。
―順調な理由は。
木下 自然と自社に仕事の相談が寄せられるような仕組みをつくることが経営の基本。実際に物流拠点新設を進めてきたことで会社の知名度が高まり、さまざまな顧客から問い合わせが来るようになったことが、大きな要因だと考えている。
―拠点整備の加速が強みになっている。
木下 2020年の社長就任以来、各地を視察し、拠点ネットワークの見直しの必要性を感じたことが出発点。数十年前の輸送網が維持されたままで、現在の事業環境にマッチしていなかった。構造の古さや老朽化が目立つ施設が散見されたことも加わり、整備に踏み切った。
物流センターの新設が進む
―進ちょくは。
木下 順調だ。直近の自社施設では、4月に丸亀物流センター(香川県丸亀市)、6月に富山物流センター(富山県高岡市)を新設。8月1日には建て替えていた福島物流センター(福島県本宮市)を稼働させた。いずれもほぼ満床状態となっている。
―今後も整備を行う。
木下 具体目標は定めていないが、顧客の要望や現場の考え方を踏まえて必要となれば整備する。適切な立地の用地がなければ物流施設を賃借して対応する。状況を見ながら臨機応変に進めていく。古くなった施設は更新する方針だ。
―中期経営計画の状況は。
木下 26年度を最終年度とする5カ年中計では売上高を1000億円、営業利益を100億円とする目標を掲げている。既に達成の見込みは付いている。
一段高い目標達成を目指す
―目標の見直しも。
木下 拠点整備が進み、顧客に提案できる内容の幅が大きく広がった。各現場では、収益性が高い業務の獲得を目指す意識も高まっている。一段高い目標の達成も難しくない。中計策定時から事業環境が変化していることを考慮し、中計を見直す。
―品質向上に向けては。
木下 建材を中心に重量物や長尺物など特殊貨物を数多く扱い、荷役は手作業中心だが、時にミスが起こり破損につながることもある。近年、特殊貨物に対応できる同業他社が減少している影響もあり、多くの顧客から依頼を受ける。事故削減を最重要課題とし、全社で防止策を徹底している。
―採用も重要になる。
木下 人材確保は欠かせないが、人数の追求だけでは意味がない。意欲を持って仕事に取り組む優秀な人材を積極的に迎え入れたい。4月には能力に応じた評価の実施や、柔軟な働き方の実現を目的に人事制度を改定した。多様な人材が働きやすい職場の構築に取り組んでいる。
記者席 速さの秘密とは
業界でも類を見ないスピードで物流拠点の整備を進めている同社。どのように実現しているのか。「自身の前職の経験によるところが大きい」と木下社長。
2020年の社長就任以前は長年、大和ハウス工業の建築事業部で仕事をしていた。建てる側から現在は施設を使用する側となったが、建設までの一連の工程には大きな違いはないという。候補となる用地は自ら探し訪問。判断のポイントを言葉で説明するのは難しいとするが、「土地や建物にかけては特別な自信がある」。
今後も同社は拠点の整備を進める方針。引き続き記者は、木下社長が見つけ出した土地に造られた新しい施設を取材できる機会に恵まれそうだ。