インタビュー

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【 特積み・ネットワーク特集 】

特積みのけん引力期待 下請けとの適正取引でも

2023年06月20日

国土交通省自動車局 小熊 弘明 貨物課長

 来年4月にドライバーの労働時間外規制を控えるトラック業界。何も対策を講じない場合、輸送力不足が懸念される中、働き方改革と労働条件改善の両立には、適正運賃・料金収受が不可欠となる。国土交通省自動車局の小熊弘明貨物課長は「特積みはトラック業界のリーダー的な存在。取引適正化をリードし、自社と共に、下請けドライバーの労働環境改善も進めてほしい」と期待を寄せる。

 ―特積み業界の経営環境はどうか。
 小熊 大手特積みの2022年度決算は、基本的に堅調に推移した。23年度は物価上昇、ドライバーの労働力不足などのリスク要因がある半面、昨今の宅配便の運賃値上げ、適正運賃収受の効果が出ている。物流の生産性向上にも取り組んでおり、おおむね堅調に推移するのではないか。大手以外も運賃・料金の改善が進むと想定される。
 ―労働時間外規制の適用まで1年を切った。
 小熊 対策を講じずに来年4月を迎えた場合、物流の停滞が懸念される「24年問題」が起こる可能性がある。働き方改革を進めてもらうため、改正貨物自動車運送事業法に基づき国交相による働き掛け・要請を行っている。20年4月には標準的な運賃を告示し、適正な運賃を収受できる環境整備を進めてきた。「ホワイト物流」推進運動、機械化による荷役の負担軽減なども進め、魅力ある職場づくりを目指す。
 ―24年問題では政府も緊急対策をまとめた。
 小熊 関係閣僚会議が3月に設置され、岸田文雄首相の指示を踏まえ、今月2日に政策パッケージがまとめられた。商慣習の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容を施策の柱に、物流を停滞させないため、関係省庁、産業界とも緊密に連携し、スピード感を持って対応していく。

大手を中心に24件が届け出

 ―ドライバーの労働条件改善に向けては、特積み各社が運賃値上げに動き出している。
 小熊 昨年度、大手を中心に24件の運賃変更届け出があった。運賃値上げは自社だけでなく、協力会社のドライバーの労働環境改善も含め、安定した事業継続に不可欠と言える。こうした動きをさらに広げ、荷主、元請け、下請けのサプライチェーン全体で取引適正化を進めてほしい。
 ―元請けと下請けの取引適正化では、新たな取り組みも始まった。
 小熊 適正な取引環境の整備と労働環境改善の理解と協力を呼び掛けるため、昨年12 月に適正取引推進会議を立ち上げた。行政に加え、各社の適正取引に向けた取り組みを発表してもらっており、個別の取り組みの横展開を図りたい。
 ―5月にも、会議を開催した。
 小熊 昨年12月以降の状況を注視してきたが、適正取引の機運醸成に向け、継続が必要と判断した。今回は主要な物流子会社もメンバーに加え、メーカー物流特有の諸課題などへの取り組みを発表してもらった。
 ―今後も会議を継続する考えは。
 小熊 適正取引推進会議のような場はとても有意義。多くの会社が集まる場で自らの取り組みを発表し、良い緊張感があった。次回の開催時期は未定だが、働き方改革、適正取引を積極的に進めてもらい、産業全体の魅力を向上させてほしい。
 ―取引適正化で特積みへの期待は高い。
 小熊 特積みはトラック業界のリーダー的存在として、適正運賃収受などをリードし、下請けドライバーの労働環境もしっかりと確保してほしい。安定した長距離輸送の確保には、待ち時間の削減や適正運賃収受といった労働条件改善を進めていくことが重要だ。国交省としても物流DX(デジタルトランスフォーメーション)、効率化も推進し、働き方改革と安定的な輸送サービスを実現していく。