インタビュー

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【 社長インタビュー 】

事業一本化で成長に挑む Gブランドを最大限活用

2023年06月06日

JPロジスティクス 長谷川 実 社長

 今年4月、トールエクスプレスジャパンからJPロジスティクス(本社・東京、長谷川実社長)に生まれ変わり、特積み、3PL、フォワーディングを担う総合物流企業として攻勢を掛ける体制が整った。4月に就任した長谷川社長は「長年培ってきたJP(日本郵便)ブランドを最大限に活用すると同時に、適切な設備投資、業務提携などあらゆる施策を講じていく」とし、売上高1000億円の大台に挑む。

1000億円超えられなくはない

 ―就任から2カ月を迎える。
 長谷川 縁ある会社に戻ってきた。JPが2015年にトールホールディングスを買収すると同時に、旧・トールエクスプレスジャパンの社外監査役に就任した経緯がある。
 ―今回、体制を一新した。
 長谷川 新しい武器を手に入れ、今後、飛躍する大きなチャンスだ。旧・JPトールロジスティクスの管轄だった3PLやセンター運営などのコントラクトロジスティクス事業と、フォワーディング事業をJPロジに一本化した。特積みを中心とするエクスプレス事業との親和性は高く、相乗効果を生み出しやすい。
 ―売上高1000億円が当面の目標だ。
 長谷川 ハードルは高いが、決して超えられない数値ではない。コントラクトとフォワーディングの各事業の売り上げは、エクスプレス事業の1割程度に過ぎず、成長の余地は大きい。
 ―倉庫とターミナル機能を合わせた京都物流センターの事例が成長の一つとなるか。
 長谷川 そうだ。老朽化している拠点が多く大きな課題を抱えている。投資余力は限られているが、主要な拠点はセンターを併設する高度化した施設としたい。地方の中小規模の拠点の更新は時期を見極めながら検討していく。

さらなる提携視野に入れる

 ―近物レックスとの業務提携を早速、発表した。
 長谷川 施設の共同利用や共同配送など歩み寄りやすい分野から実績を積み上げ、合意に至った。培ってきたトップ同士の信頼関係を継続するとともに、今後は営業や幹線便の共同化など一歩、踏み込んでいく。ドライバーの残業上限規制に伴う24年問題も念頭に、スピード感を持って実現する。ネットワークの維持、発展のために他社との提携も否定しない。
 ―JPグループを前面に押し出している印象も抱く。
 長谷川 JPブランドを積極的に活用していく決意の表れだ。川上から川下、保管から流通加工、輸送と幅広く展開する上でJPの看板は営業面で後押しになる。また、トラックやユニホームに「ゆうせいレッド」を取り入れ、グループの一体感を演出していく。
 ―現場に目を向けると、労働環境改善を重視してきた。
 長谷川 この5年間、重点的に投資した。年間休日数は100日から107日に増えた。週休2日につながる土曜集配の見直しは、親会社のJPも導入し、時代の潮流と言える。適正収受も含め労使一体の姿勢で顧客の理解に努める。
 ―24年問題とその先の対応は。
 長谷川 中長期的な観点でドライバーの確保は欠かせない。さらに、女性や高齢者が活躍できるインフラの整備も進める。例えば、ターミナルでは手積み・手降ろしが避けられないが、空調服や新たな荷役器具の導入を検討し、誰でも働きやすい環境を整備する。
 ―東京都品川区との災害時協定の締結では新たな社会的使命の姿が見られた。
 長谷川 JPグループの一員として地域貢献を重要視する。自然災害の激甚化が目立つ中、数多くの荷物を備蓄できるターミナルは非常時に役立つ。拠点がある関東、関西、九州などの地方自治体と連携したい。

記者席 足腰固め、追い掛ける

 日本郵便(JP)グループが国内の企業間物流の強化に向け体制を一新し、司令官として白羽の矢が立った。JPではゆうパック事業部長、ロジスティクス事業部長などを歴任し、日本ロジスティクスシステム協会の講演で登壇経験もある。
 「物流は全く知らないわけではない」と話すが、見据える先は、源流となる旧・日本運送が戦後、特積み業界をけん引したように、再び先頭集団に入ることだ。熊谷義昭、山本龍太郎両元社長が足場を固め、グループの方向性も確認し挑戦する準備は整った。
 いざスタートライン。陸上未経験で始めたライフワークのマラソンは10年たち、4時間以内で走る「サブ4」は達成済み。継続する力と粘り強さで新会社をけん引し、同業他社の背中を追い掛ける。