インタビュー

【 社長インタビュー 】
売上高1兆円は最低限 新中計始動、製造参入へ

2022年06月07日
センコーグループホールディングス 福田 泰久 社長
5年後に1兆円企業へ―。5カ年中期経営計画が始動したセンコーグループホールディングス(本社・東京)。福田泰久社長は「売り上げの目標達成は手堅い」と語り、既に射程に捉えている。人材を核とするグループ総合力に磨きを掛けるとともに、M&A戦略を強力に推進しさらなる高みに挑む。
―グループ売上高1兆円を新中計に掲げた。
福田 達成は十分可能だ。各現場の意欲はさらに高く、社内で積み重ねた数字を抑えた結果でもある。一方、営業利益450億円、営業利益率4・5%の目標値は容易ではなく料金、価格、サービスの各施策に磨きを掛けなければならない。
―主力の物流事業は積極的な投資が目立つ。
福田 物流センターは約100万平方メートル増床し計500万平方メートルとする。全体の半分ほどは関東圏に設けることになるだろう。荷主はリスク分散の動向が強く、残りは関西圏、中部圏など。今後、センターの増設は過渡期を迎えると想定するが、EC、冷凍・冷蔵向けなどは成長の余地があり、需要が多い分野に集中的に資金を投じる。
総合提案力で他社と差別化
―料金改定といった利益率を高める施策も欠かせない。
福田 総合提案力が鍵を握る。例えば大型案件のコンペでは、他社より一番高い価格で入札し採用されることがある。運送、流通加工に加え、顧客は付加価値を高めるサービスを評価している。カーボンニュートラル(炭素中立)実現を見据えた二酸化炭素削減、リサイクルといった最新の動向をつかんだ提案力の向上も求められている。
―商事・貿易事業では紙・パルプが躍進している。
福田 アスト、アズフィット、カルタスの3社で売上高1100億円を見込み、業界最大手に迫る規模となる。運営面では3社が連携できる可能性は大いにある。共同輸送、保管を推進し紙・パルプに特化した物流を構築する。その上で同業者との連携は視野に入る。
―M&A戦略は。
福田 基軸は人々の生活を支援する企業で、グループとシナジー(相乗)効果があるか否か。第5の柱として製造分野など新たな事業に参入し、500億円の売り上げを掲げている。センコーGHDは主体的に戦略を担うと同時に、マンションや不動産といった収益物件にも投資する。
若手、女性がG会社経営学ぶ
―グループ会社は161社に上るが、集約は行うのか。
福田 行わない。幹部育成の手段の1つとしてグループ会社の社長に就き、経営を実践させている。現在、最も若くて41~42歳だが、30代や意欲ある20代をトップに据えたい。サポロジ、プロケア、海外の物流会社では女性が社長を務める。今後HDや中核会社でも女性が経営幹部を担えるよう育成・登用していく。
―成長の根幹は人材。
福田 協力会社を含め約5万1000人体制だが、中計達成には7万5000人規模が必要だろう。そのため新卒と共に中途採用にも注力している。社員には失敗を恐れず貪欲に挑戦してほしいので、「チェンジ・アンド・チャレンジ」という言葉をよく発している。また現場を支えるドライバー、フォークリフトオペレーター、作業員については自社の研修施設クレフィール湖東(滋賀県東近江市)でも訓練を重ねて確実に実績を上げている。
―理想像は。
福田 新中計のスローガンは「つなぐ」。サプライチェーン、世界、あらゆる事業をつなぎ、次世代につなぎ、人と社会に新しい価値を届けるグループを目指す。働く従業員がわくわくする職場を創造していきたい。
記者席 大台突破は通過点か
陸運系で売上高1兆円の大台を突破しているのはNIPPON EXPRESSホールディングス、ヤマトホールディングス、SGホールディングスの3社のみ。「抑えた数字」と語る姿は、〝仲間入り〟よりも、その先をうかがっているように映った。
決して平たんな道のりではないのは確かだ。中期計画の策定時に社内で指摘したのは人員の計画だった。国内の労働者人口が減少する中、確保、育成は一筋縄ではいかない。腹案は外国人材と定年制の見直し。「定年は一律に区切るのではなく、1人1人に見合った定年があるのでは」と提案する。「定年なしでも構わないのでは」とさらなる案も。グループをけん引する姿はまさしく現役で、1兆円は単なる通過点に過ぎない。