インタビュー

【 社長インタビュー 】
新中計で体質強化 医薬品、海外展開に意欲

2022年05月24日
キユーソー流通システム 西尾 秀明 社長
キユーソー流通システム(本社・東京都調布市)は今期から、3カ年の新たな中期経営計画をスタートした。前中期計画では、食品を扱う同社は、新型コロナウイルス感染拡大による外食向けの荷動き減少で大きな影響を受けた。その中で、西尾秀明社長は、「利益率の向上を念頭に体質強化を図り、医薬品や海外といった新領域へシフトする体制づくりを推進する」と語る。
―前中期計画を振り返って。
西尾 最終的に、売り上げは計画とほぼ変わらなかったものの、営業利益は約10億円下回った。新型コロナの影響で外食向けの荷動きが減ったのが大きく響いた。
―事業が影響を受けた一方で、従業員のコロナ対応は。
西尾 食品を扱っている会社なので、グループ全体で従業員の衛生に対する意識が高い。業務に大きな影響はなかった。
―前中期計画で達成できたことは。
西尾 新規顧客の獲得や適正料金の収受は進んだ。だが、省人化機器への先行投資によるコスト増加、食品流通量の低下への対応など課題もある。
―現状の食品の国内市場についてどのように考える。
西尾 コロナ前から、人口減少で食品の需要が減っていくことは分かっていた。また、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から食品ロスをなくそうという考えが強まっている。以前の食品流通量には戻らないのでは。
―その中で、利益率を向上させていく。
西尾 物量が元に戻らないなら、既存の顧客にさらに切り込んでいく必要がある。面積から体積へと呼んでいるが、既存の顧客の物流も全てを当社が担っているわけではない。1つの顧客を掘り下げ、今担当していない業務も獲得していく。
食品以外の荷物を獲得
―新中期計画では、食品以外の荷物の獲得に意欲的だ。
西尾 食品物流で培った温度管理技術を生かし、医薬品など付加価値の高い物流を提供できる体制づくりに取り組む。1月に三菱倉庫と食品と医薬品の分野で業務提携した。互いのネットワークやノウハウを生かして業務を展開していく。
―他の会社との業務提携も視野に入れている。
西尾 当社の社是に楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)という言葉がある。志を同じくする人が仕事を楽しみ、困難や苦しみを分かち合いながら悦(よころ)びを共にするという意味だ。今後も同じ方向を向いて取り組める会社があれば検討したい。
冷食の需要増加に対応
―海外展開の拡大にも力を入れていく。
西尾 既にインドネシアには傘下に低温物流会社キアットアナンダグループがある。次はフィリピン、マレーシア、ベトナムなどアセアンの他の国にも拡大していきたい。
―アセアンの低温物流の需要をどのように見ている。
西尾 東南アジアでは食の多様化が進み、冷凍・冷蔵食品の需要が高まっている。適切に温度管理をされたおいしい食材を食べ始めた人々は、基準を下げることはできない。
―どのように現地で展開していく。
西尾 現地の人でないと分からないことは多い。独資で進出するよりは、現地の会社を合併・買収(M&A)するか、業務提携を通して業務展開していきたい。
―標準化や効率化にも注力する。
西尾 属人化している業務の標準化に向け、「一人三役」運動を実施している。個々人の持つ業務のノウハウを把握し、他の人が代わりにできるようになることで、休みを取りやすくなる。機械化の一歩でもある。
記者席 正しさは曲げない
「4×2は9にならない」。取材中、こんな話が飛び出た。9にならないのは当然だが、世の中には「9だ」と言い張る荷主や上司がいるそう。
1度、9と認めたら、次からも押し通されてしまうため、相手が誰でも間違いを指摘する勇気が必要。「仮に相手が自分の会社の社長であっても正すべきか」と聞くと、「当然だ」と即答した。
同社は2019年から、独自のアプリ「配送カウンターアプリ」を運用し、ドライバーの待機時間や付帯作業を記録している。理不尽な対応を含め現場の問題を可視化することにより、荷主に無理は通らないことを理解してもらう。
「間違っていることは間違っていると言う」との思いが、ドライバーを守ることにつながっている。