インタビュー

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【 フェリーたかちほ」就航 】

未来つなぐ〝県民フェリー〟

2022年04月12日

宮崎カーフェリー 郡司 行敏 社長

 宮崎カーフェリー(本社・宮崎市、郡司行敏社長)の宮崎―神戸航路に25年ぶりの新造船「フェリーたかちほ」が15日、船出する。宮崎県の長距離フェリー航路が1971年に開設されてから半世紀を歩み、これまで南九州―本州の物流、人流を支えてきた。新船は次の50年、100年をつなぐ役割を担う。

 ―宮崎県民の思いが結集した25年ぶりの新船「フェリーたかちほ」が船出する。
 郡司 待ちに待った。これまで数多くの県民、地域に支えられた〝県民フェリー〟の誕生だ。次の50年、100年にわたって航路が未来をつなぎ、地域に貢献するという大切な使命を帯びた。

地域の安定輸送に寄与する

 ―河野俊嗣宮崎県知事は「フェリーは宮崎経済の生命線」と重要視している。
 郡司 県の経済を支えている自負はある。農業産出額は全国有数の規模で、首都圏や関西圏へ安定的に輸送するためには欠かせないモードだ。ドライバーの残業規制が適用される、いわゆる「2024年問題」や環境対策で物流が大きな転機を迎える中、海上輸送の重要性はますます高まっていく。
 ―今回、船腹を大型化し、積載能力は大きく増える。
 郡司 貨物部門は使いやすさを心掛けた。大型トラックの積載数は12メートル換算で従来船と比べ約25%増える。さらに冷凍・冷蔵需要の高まりを背景に、車両甲板に設置する電源数も大幅に増設し、荷主、トラック企業の声を反映させた。特に、出荷の繁忙期を迎える冬場の宮崎発は満船状態が続いているが、フェリーたかちほの就航でほぼ解消できる見通しだ。
 ―集荷の努力も欠かせない。
 郡司 宮崎―神戸航路は海のバイパスの役割を果たしている。南九州の荷物を集荷し、フェリーで届ける全工程を俯瞰(ふかん)すれば、宮崎港や神戸港は〝扇の要〟に位置する。例えば、港のバックヤードに物流センターを設置すれば、サプライチェーン全体の安定化に寄与する。陸送で競合するトラック業界と協調できる分野は手を携え、荷主も含めた物流網の再構築を図り、一翼を担っていきたい。
 ―航路の特長にドライバーが乗船する割合の高さが挙げられる。
 郡司 ドライバーが満足感を得られるようにと強く期待している。まずドライバーズルームは全個室化を実現した。羽毛布団を導入するなど、一般の客室と同水準を担保した。ドライバー同士が交流できる専用レストランも引き続き整備した。船内でゆっくりとくつろげるよう心掛けた。着岸後、荷物を目的地まで安全・安心に届けられる一助となれば本望だ。

旅客増へ期待安全第一は核

 ―旅客部門は貨物部門と両輪の関係で、利用客の回復は安定経営につながる。
 郡司 新型コロナウイルスの感染拡大で、県境をまたぐ移動の自粛が求められ、旅客部門は打撃を受けた。新船就航を起爆剤とし、輸送量を新型コロナ前の水準となる年間13万3000万人、7万3000台を目指す。
 ―具体策は。
 郡司 まず船を使ってみる、次にもう一度乗ってみたいと需要を喚起した上で、ファンの裾野を広げる。船内イベントや旅客レストランで地産地消メニューを充実するなど船旅を楽しめるアイデアを投入する。宮崎空港を発着する航空会社と協業の検討も進めている。燃料価格の高騰が重なり取り巻く経営環境は厳しいが、2024年度の黒字化を成し遂げる。
 ―安全第一は最重要課題だ。
 郡司 人命、顧客の大切な貨物を安全、安心に届けることは最も重要な任務。日々の小さな積み重ねが信頼を築いていく。指さし確認など1つ1つの行動が、全社員の安全意識を醸成する。安全、安心の日本一に向かって努力することに尽きる。