インタビュー

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【 社長インタビュー 】

全従業員の意識一つに 物流整流化へ日々改善

2022年02月01日

F―LINE 本山 浩 社長

 事業統合による発足からこの3月で丸3年になるF―LINE(本社・東京)。発足当初からの運べなくなることへの危機感に加え、地球環境問題への対応もより強力に求められている。本山浩社長は「大切なのは、2030年から今を見返して、あるべき姿に追い付くために全従業員の意識を一つに、勇気を持って新しい物流を開拓していくこと」と話す。

 ―会社は発足から間もなく丸3年を迎える。
 本山 人手不足により各社個別の物流では将来モノが運べなくなるとの危機感が生まれ、食品メーカー5社が集まり、永続的な物流競争力の実現を目指して発足した。この間、人事やシステムを丁寧に合わせてきたが、まだ時間はかかる。物流システムは、旧・味の素物流のシステム「ALIS(アリス)」への統合を進めている。
 ―ハード面は。
 本山 福岡第一物流センター(福岡市)で先進技術活用と共同配送をスタートさせ、軌道に乗せた。次にどのエリアで投資を行うかは検討しているところだ。

環境対策は一層の強化必要

 ―脱炭素に向けた環境対策も改めて焦点だ。
 本山 発足当初は運べなくなることへの危機感に対処することが最優先だったが、二酸化炭素排出削減が重要課題となっている。物流コストの最小化も引き続き求められる。二酸化炭素排出は都市部ほど増える半面、運べなくなる危機感は地方ほど高まっているといったように、施策の判断基準が多角化している。
 ―いずれも解決は一筋縄ではいかない。
 本山 大切なのは、2030年の未来から今を見て、そこに追い付くために全従業員の意識を一つに、勇気を持って新しい物流を開拓していくことだ。
 ―昨年4月には、23年度を最終年度とする中期経営計画を始動した。
 本山 持続可能な物流プラットフォーム(基盤)、全従業員の融合、新たな働き方の創造といった内容を、目指す姿の中に盛り込んだ。取り扱いの約7割を占める食品メーカー5社の物流のムリ・ムダ・ロスを改善する整流化に重心を置きつつ、長年培ってきた温度・湿度管理、日付管理のノウハウなど品質の確かな仕事と規模のメリットを生かし外販にもつなげたい。
 ―施策の進ちょく度は。
 本山 理想形に届いたのは投資が完了した九州のみで、市場規模に照らせば1合目半というところ。九州では、車両積載率、二酸化炭素削減共に成果が上がっている。今後は同様の取り組みを他地域へ展開していくが、基礎にあるのは安定的な品質。誤配、誤請求、日付逆転などどんなミスも最小化していくことだ。

AI配車で在庫移動最適化

 ―モーダルシフトも強化していく。
 本山 専門部隊「マルチモーダルサービスセンター」(川崎市)では、天気予報も参考に「どの荷物を・どこへ・どの輸送手段で」をAIが瞬時に割り出し、配車計画を最適化するシステムを構築した。まずは拠点間の在庫移動といった場面で、グループ内での利用を広げていく。
 ―物流整流化を進める上でリードタイム、検品レス、パレット化とさまざまな課題がある。
 本山 見切り配車をなくす前々日受注、過疎地での間引き配送、ペーパーレス検品のように、持続可能な物流のために比較的早期に実現可能性があるものに取り組みながら、より中長期的な視点から外装・パレットの標準化や検品レスも目指していきたい。
 ―社内ではどのようなメッセージを。
 本山 昨日より今日、今日より明日、サービス品質を100%に近づけていくために、会社の品質をつくるのは皆さん1人1人だ。協力会社も一緒になって、トップが率先して取り組んでいく。

記者席 社長は選手兼任監督

 「社長は単なる監督ではなく、プレーイングマネジャーだと思う」。プロ野球で言えば、故・野村克也や弟子の古田敦也のような選手兼任監督。社長も幹部・従業員も1人1人が自分の持ち場を全うしてこそ、安定的で確実な物流サービスが実現できるとする。
 着任から約半年。過当競争の物流業界で差別化を図ることは容易ではないとした上で、「長年培ってきた着実な仕事の仕方を徹底し、信頼を得ていくこと。中期計画に掲げた23年の目指す姿の実現に向けても、そうした基本が欠かせない」。
 食品物流ならではの機能、付加価値、ノウハウをさらに磨き、永続的な物流競争力を身に付けるためには、これでよしというゴールはなく、常に100%を目指すことが求められるのかもしれない。