インタビュー

【 社長インタビュー 】
「現場がエリート」支える 輸送品質日本一を目指す

2021年07月13日
岡山県貨物運送 原田 和充 社長
岡山県貨物運送(本社・岡山市)は6月29日、原田和充社長が就任し、新体制が始動した。新型コロナウイルスの影響が長期化する厳しい環境の中、社員との協調を軸に顧客重視の姿勢で乗り越える覚悟だ。原田新社長は「第一線で活躍する現場は真のエリート」とし、さらなる働きやすい環境整備に向け、重点的に投資する方針を示す。
―社長就任の感想は。
原田 まさかだった。社長職は駅伝で例えるなら最終ランナーではなく、たすきを次のランナーに無事につなぐことが使命だ。新型コロナという厳しい環境下だが、社員との協調性を持ちながら、遠藤俊夫会長、馬屋原章副社長と一致団結し、リーダーシップを発揮していく。努力するのみだ。
―コロナ禍でも前期は当初の予想を上回る実績を残した。
原田 前期を振り返ると、昨年5月を底に徐々に回復基調に向かっているが、主力の特積みは鈍い。また、外注費を見直すなど売り上げが減っても利益を出せる体質に努めたものの、経費削減には限界がある。今後は収入の拡大が軸となる。
―具体的には。
原田 物量の確保しかない。まずは足で稼いで情報収集し、顧客の困り事に対応する。例えば、荷物の依頼をすぐ断るのではなく、特積みをはじめ、貸し切り、JITBOX、航空などあらゆるサービスを提案していく。誠意ある対応をすれば信用が生まれ、積み重ねると信頼が醸成される。
―運賃・料金の適正収受を推し進める。
原田 適正化は継続的に取り組んでいる。前期末までに昭和60年タリフは全て取りやめた。次は平成2年タリフをいかに底上げするかが鍵だ。その前提となるのが輸送品質。当社は「日本一」を掲げ、これからも磨きをかけ勝負していく。
多様なサービスで物量確保
―地道な取り組みが欠かせない。
原田 荷物事故の傾向把握と分析を行うシステムを構築し、迅速な情報共有と改善につなげている。今回、ハンディースキャナーの更新に合わせ、写真機能を組み入れて現場対応を向上させた。フォークリフトにはドライブレコーダーを搭載し、検証できる体制を敷いた。現場がより一層使いやすいシステムを追求する。
―現場目線が印象的だ。
原田 本社に優秀な人材がいるが、真のエリートは顧客と接して汗を流し、荷物を運んでいる現場だ。働きやすいよう業務を効率化し、最終的に利益につなげるため、後方支援を行うことが本社の役割となる。第一線で活躍する現場が組織の最上位に位置し、その社員を支えるために社長や役員が存在する、いわゆる「逆ピラミッド型」が私の考えだ。
老朽化施設に重点的な投資
―働きやすい環境整備に向けて投資する。
原田 今年4月に新本社ビルしゅん工という念願がかない、社内の士気は高まった。他の老朽化した施設は今後2~3年以内に新築移転や更新に着手し、特積みネットワークの再構築を図る。特に地元・中国地方の施設には重点的に取り組む。同業他社と施設を共同利用する実績もあり、メリハリを付け投資する。
―新型コロナ後を見据えた姿は。
原田 難しいかじ取りが求められている。今期は中期経営計画の最終年度で、現在、次期中計を策定中だ。具体的な数値目標は、新型コロナの動向を慎重に見極めた上で固めていきたい。
記者席 伝統のたすきで難所挑む
「箱根駅伝に形容するなら5区の山登り」と語る。遠藤俊夫前社長(現会長)からたすきを受け取り、いままさに新型コロナ、適正運賃・料金の収受、輸送量の確保と山積する課題は箱根のような高い壁に映る。たすきには78年の伝統と仲間の思いが詰まっている。
入社以来、営業一筋で、13度の転勤を経験した。その分、社内には同じ釜の飯を食った仲間、信頼関係を構築した多くの顧客、さらには同業他社の良きライバルから厳しくも温かい応援が届いた。
趣味の読書で蓄えた知力、息子と中学生になった孫の3人で楽しむゴルフで鍛えた体力を持ち合わせ、準備は万端。難所を乗り越えた暁にはどのような風景が広がっているのだろうか。次の走者にたすきを託すまで疾走する気概を感じた。