インタビュー

【 インタビュー 】
業界のIT化を積極支援 点呼ロボも普及拡大へ

2021年06月22日
日本貨物運送協同組合連合会 吉野 雅山 会長
求荷求車情報ネットワークWebKITの運営やAIロボット点呼機器の取り扱いを通じ、中小零細が大半を占める業界のIT化支援にも力を入れている日本貨物運送協同組合連合会(吉野雅山会長)。9日に再選され、3期目を迎えた吉野会長は「技術革新が進むいまこそ、まずIT化に取り組むべき」とし、業界全体のレベルアップへ意欲を見せる。
―業界を巡る環境をどう認識。
吉野 コロナ禍が終息し需要が回復すれば、ドライバー不足が再び深刻になることは想像に難くない。生産性を高め、人材を確保できるよう、全日本トラック協会と一体で業界に役立つ組織運営を進めることが最重要だ。
WebKITさらに進化を
―IT活用も鍵。
吉野 中小零細の運送企業も、デジタル社会に対応できなければ生き残れない時代。だが、自社の努力だけでIT化を進めるのは至難の業だ。日貨協連が運営するWebKITはまさに取り組みやすい一手。生産性の向上につながるシステムとして、さらなる普及拡大を目指す。
―WebKITの次期システムを開発中。
吉野 2025年度までの「WebKITビジョン2025」を掲げ、最新技術でさらなる機能充実を図りつつ、より明解で使いやすいシステムにバージョンアップさせる。標準的な運賃の活用を支援する機能の開発にも取り組んでいる。
―AIロボット点呼機器の普及も促す。
吉野 安全運行を支える点呼の徹底と、運行管理者の働き方改革を両立する機器だ。非対面での点呼が可能な、新時代にマッチしたツールで、国土交通省の安全政策課からも評価されている。年内にも自動点呼機器認定制度が創設されるよう、実証実験を含む国交省の運行管理高度化施策に積極参画していく。
―一部の特積み企業で導入も。
吉野 より良い機器として磨き上げ、IT点呼に活用できるようにするためには、ユーザーからの利点や問題点といったフィードバックが不可欠。特積み各社にもぜひ導入してもらいたい。
国交省、高速各社と対等に
―高速道路問題への取り組みは。
吉野 今後の中期的な高速料金見直しを見据え、大幅な値上げにつながらないよう、国交省や高速道路各社と対等の立場で、業界が一致団結して訴えていくことが重要。全ト協の道路委員会とも連携し、実質50 %以上の大口多頻度割引恒久化をはじめとした要望活動を積極的に展開する。
―昨年、軸重に関する車両制限令違反の一部要件緩和が実現。
吉野 全ト協、国交省、高速各社と発足した勉強会で議論を重ねた成果だ。引き続き、単車トラックの軸重規制を現行の10トンから11・5トンへ緩和する措置を要望していく。
―自身が委員長を務める全ト協「小規模事業者コロナ時・災害時特別対策委員会」の答申への対応も重点。
吉野 小規模企業の4割弱は協同組合に未加入。ほとんどが協組の存在さえ知らず、高速道路割引や燃料共同購入といった加入メリットを享受できていない。答申を受けた全ト協の対策づくりに協力し、新たな組織化と傘下組合の会員増強に向けた取り組みを推進することが使命だ。
―燃料対策などにも注力。
吉野 燃料も組合員にとって生命線。毎月、日貨協連が価格交渉を一括で行う共同購入の普及とともに、各社の福利厚生充実、賠償能力強化につながる、全国トラック事業グループ保険や新貨物補償制度といった各種保険の活用も促したい。
記者席 全ト協と協力さらに
「協組を支える相互扶助の精神とは、自社でやるべきことをやった上で、互いを尊重し助け合うこと」。組合員各社の懸命な努力による「自助」、さらに全ト協と日貨協連が連携してバックアップする「共助」があり、その先で国や行政が「公助」を示すことが大切と語る。
全ト協の坂本克己会長とはこれまでも手を携え、道路問題をはじめ、行政に対する働き掛けを強めてきた。「今後はこれまで以上に全ト協と協力し、業界全体のレベルアップにつなげていきたい」。標準的な運賃を含む改正貨物自動車運送事業法は、まさに業界の社会的地位向上の基盤となる。
小規模運送企業の経営改善につながる対策の1つが「協組の活性化」。協組の中央組織としての価値は高まりを見せている。