インタビュー

メインビジュアル

【 インタビュー 】

情熱あれば青春続く 経験を次世代に渡す

2021年06月08日

鴻池運輸 辻 卓史 会長

 鴻池運輸(本社・大阪市、鴻池忠彦社長)の辻卓史会長が24日の株主総会をもって退任する。同社の国際物流の礎を築くとともに、全日本トラック協会副会長などを務め業界の発展に奔走した。辻会長は「情熱はまだまだ衰えていない。ハッピーリタイアだ」と語り、7月から個人事務所を開設し、これまでの経験を糧に次世代の育成に注力する。

 ―退任を控え、いまの心境は。
 辻 全力を出し切った達成感にあふれている。32年間経営の最前線を務め、決められた時間と場所に必ず居なければならない生活を続けてきたが、間もなく肩の荷が下りる。
 ―顧問や相談役で活躍できるはずだが。
 辻 サミュエル・ウルマンの詩「青春」の冒頭「青春とは、人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ」に感銘を受けた。つまり情熱があれば、青春は終わらない。米大統領に就任したバイデン氏は同い年で、誕生日は約1カ月違いだ。にもかかわらず、これから少なくとも4年間、大国を率いるという重い責務を担う。私は体調面は良好で、まだまだ社会に貢献したい。ハッピーリタイアだ。
 ―7月から個人事務所を設ける。
 辻 大阪・梅田の阪急グランドビルに「辻事業サポート事務所」を開く。これまで50年以上培った実践経験を基に、主に中小企業に絞って経営アドバイスを行う。また2社の社外取締役を引き受ける。さらに若い世代や学生を対象に講演し、次世代の育成に一役買いたい。

運と縁に恵まれ努力怠らず

 ―何を伝えたいか。
 辻 何事にも懸命に努力することだ。大学卒業後、宇部興産に入社し、現場に配属されたが、振り返れば貴重な時間だった。時には、現場の上司や同僚らと酒を酌み交わした。肌で感じた現場経験は土台となっている。また鴻池運輸では米国とベトナム進出時、他人のまね事はせず、努力を惜しまないことが大切と実感した。
 ―豊富な人脈もある。
 辻 運と縁に恵まれた。自民党の二階俊博幹事長とは30年以上の付き合い。リニア中央新幹線の大阪延伸では多大な支援を受けた。またベトナム進出時に当時ホーチミン市長だったチュオン・タン・サン氏(後の国家主席)と巡り会って親交を深めた。出会いはかけがえのない財産だ。
 ―多くの公職を務め、長年トラック業界に尽力した。
 辻 適正な運賃・料金の収受や長時間労働は長年の懸案だが、業界の構造改革を果たせば解決できるはず。若い経営者が頭角を現し、魅力ある業界を築いてほしいと切に願う。