インタビュー

【 社長インタビュー 】
新本社、次代へ思い託す 〝質実剛健〟の歴史継ぐ

2021年04月27日
岡山県貨物運送 遠藤 俊夫 社長
岡山県貨物運送(本社・岡山市)の新本社ビルが4月末にしゅん工し、大型連休後から本格的に稼働する。グループの核として質実剛健の精神を継承するとともに、現代に合わせた使いやすさも追求した。遠藤俊夫社長は「企業のイメージアップを図るとともに、労働環境を整え新たなオカケンを創造したい」と意気込む。
―間もなく新本社ビルがしゅん工を迎える。
遠藤 期待に胸が大きく膨らんでいる。新型コロナウイルスという未曽有の事態で一時、建設の中止も検討したが、工事関係者一丸となった施工に敬意を表する。また業務の改革に取り組んだ全従業員のおかげで、困難な経営環境を乗り越えている。
―経緯は。
遠藤 現本社は1961年12月にしゅん工し、築60年を迎えた。グループの拠点では最も古い建物となり、老朽化が課題だった。そこで2018年秋から本格的に検討を始め、翌19年に設計会社と建設会社を選定した。当初は20年末に披露する予定だったがずれ込んだ。今月30日にしゅん工式を行い、大型連休後の5月6日から新本社で業務を開始する。
社員発想募る避難所も整備
―コンセプトは。
遠藤 質実剛健。飾り気がなく、真面目で強くしっかりしていること。馬屋原章常務をトップに各部署のメンバーが参画したプロジェクトチームを立ち上げ、コンセプトを具現化する作業に取り組んだ。外壁や室内の色彩、内装品など社員のアイデアを凝縮した。次第に姿を現す新本社を眺めていると、図面や完成予想図よりも実物の方がはるかに出来栄えが良く、満足している。
―3階建ての現本社と比べ、延べ床面積は2・5倍と広くなる。
遠藤 社員が働きやすい職場づくりとともに、地域貢献も主眼に置いた。新本社は4階建てで、延べ床面積は約2300平方メートル。1階は1フロアに総務、人事、営業、運行管理の各部などが入る。2階には株主総会も開催できる大会議室を設けた。災害時には近隣住民の一時避難場所として活用が可能だ。備蓄倉庫は4階に整備し、水や乾パンなどを保管する。3階には分散していた情報システム部を集約する。
愛着ある現本社名残惜しく
―一方で歴史を紡いだ現本社には愛着があるのでは。
遠藤 確かに。私は1969年に入社し、現本社は一貫してオカケングループの核となる存在で、これまでの歩みを振り返ると名残惜しさは日に日に高まっている。半面、新本社は次の世代へ思いを託すレガシー(遺産)でもある。オカケンのイメージ刷新を図り、社員の新規採用につなげて若年層が活躍し、勢いづく契機でありたい。
―2年後には創立80年。
遠藤 次年度は第10次中期経営計画が始まる。現中計はコロナ禍の大きな影響を受け、目標値は未達となる見通し。だが前期は積載率、運行回数の見直しといった効率化に取り組み、下期には早くも効果が顕著に表れた。利益体質に生まれ変わった土台を踏まえ、運賃・料金の適正収受や輸送品質の向上を加速させる。さらに同業他社との連携や協力はより一層、重要になると考えている。新生オカケンに大きな希望を託してほしい。
記者席 創立80周年向け心新たに
「期待と寂しさが入り交じる」。2代目の現本社は1961年にしゅん工、遠藤社長は8年後の69年に入社した。苦楽を共にしたと言っても過言ではなく、遠藤社長の現在の心境を表す言葉ではないだろうか。
新本社ビル建設の道のりは決して平たんではなかった。新型コロナウイルスに遭遇し、輸送量の落ち込みなど経営トップとして重い判断を迫られたことは想像に難くない。そんな中、逆境に負けない社員たちが「本気で取り組んでくれた」と感謝する。
3月末には期末手当をグループ全従業員に支給、ベースアップは8年連続の実施と、新生オカケンの土台を築く現場に還元する。社員への思いは人一倍強い。2023年の創立80周年を控え、躍進に向けた舞台は整った。