インタビュー

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【 社長インタビュー 】

多角化推進で成長へ 物流軸に「自由な発想」

2015年05月12日

博運社 真鍋 和弘 社長

 運送と倉庫業を組み合わせた総合物流システムをいち早く築いた九州の名門、博運社(本社・福岡県志免町、真鍋和弘社長)。物流業界を取り巻く構造変化を受け、いまは不動産業をはじめとした多角化で成長を目指す。その意図と今後のビジョンについて聞いた。

 ――業績は。
 真鍋 この数年、伸び悩んでいる。8年前まで年商は130億円弱あったが、平成26年12月期は106億円。20億円以上減っている。倉庫業は伸びているが、特積みをはじめ運送業での落ち込みが大きい。

卸の3PL化無視できない

 ――なぜか。
 真鍋 要因の1つに、元請けが運送会社から卸にシフトしていることがある。卸は各地でメガセンターを運営するようになったが、この仕組みは小口荷物をセンターに個別集荷した上で流通加工を行い、効率的に配送しようとするものだ。基本的に特積みの仕組みと同じ。特積みの仕事が卸に回り、その分収益が減っている。大手特積みでなければ、この影響は無視できない。
 ――卸が3PL(サードパーティー・ロジスティクス)化している。
 真鍋 そうだ。特に医薬品物流で当てはまる。再編で集約・巨大化した医薬品卸は、メガセンターへの荷物集積による付加価値を提供するようになり、必然的に3PL化した。運送会社は一層下請け化し、採算性が下がる。業績が伸び悩む背景にはこうした構造変化がある。
 ――対応は。
 真鍋 多角化を進める。例えば不動産事業。昨年9月、営業本部を物流営業部と不動産営業部に分割した。いまは物流不動産がメーンだが、ゆくゆくは倉庫以外の物件も扱い、稼ぐ事業へと育てていきたい。
 ――物流不動産事業の現況はどうか。
 真鍋 需要はあるが供給が追い付かない。繁閑期の狭間にあふれる荷物の保管といったニーズに応えるため、1坪からでも保管場所を提供するビジネススタイルを強みにしているが、中古倉庫物件が不足しているため、このマッチングが難しくなっている。自前で倉庫を建てる選択肢もあるが、建築費の高騰などで様子見の状況だ。

会社はお金と人が集う場所

 ――運送業は。
 真鍋 売り上げの大半を生み出す事業であり、当然力を入れる。輸送品質のレベルアップに向けた人的投資も行っている。今年は新卒採用者数を昨年の9人から21人に増やした。中途ではなく、新卒採用者がドライバーのなり手になる体制に組み替えた。
 ――理由は。
 真鍋 中途採用では輸送品質の向上に対するモチベーションに限界がある。一方、新卒者は、ドライバーの経験をベースにしたキャリアプランが描けると分かって入社すれば、モチベーションは高まる。例えばドライバーを束ねるマネージャーとしての将来をイメージした時、どうすれば業務を改善できるか自発的に考え、行動に移すようになる。
 ――社員に何を求める。
 真鍋 自由な発想と行動力を求めたい。会社はお金と人が集まる場所。何をどう使うかは、社員次第。そしていま、物流業界は過当競争から脱皮する過渡期。物流がいつまでも下請け的な存在ではいけない。社員には、物流ツールを小売りするという発想で仕事に臨めと言っている。今後、勝ち組と負け組がはっきりと分かれてくる。社員と共に楽しい会社をつくり、いまを乗り越えていきたい。

記者席 会社は楽しく

 「楽しくなければ会社じゃない」。今年の入社式で開口一番、真鍋社長が発した言葉だ。「人生のほとんどを会社で過ごす。その時間が楽しめなくてどうするんだ」。
 博運社ではキャリアアップへの道筋を示して社員の就業意欲を高める体制を敷く。「ドライバーの経験があって、いまの自分がある。そういう誇りが持てるキャリアを積んでいってほしい」。
 女性採用も積極化。「事務、営業、管理職、あるいは経営者が女性であってはならないということはない」
 趣味はウオーキング。「周りから健康オタクと言われている。私も『健康のためなら死んでもいい』と言っているが」

(略歴)
 真鍋 和弘氏(まなべ・かずひろ) 昭和35年5月29日生まれ、54歳。福岡県出身。56年中央大理工学部中退、60年博運社入社、平成4年取締役、19年専務、26年2月社長就任。(丸山 隆彦)