インタビュー

【 社長インタビュー 】
利益体質へ改善に注力 現場目線で「意識変える」

2020年11月03日
エスラインギフ 堀江 繁幸社長
6月に就任したエスラインギフ(本社・岐阜県岐南町)の堀江繁幸社長。新型コロナウイルス感染拡大の影響が経営に大打撃を与え、今後も予断を許さない中、事業の内製化をはじめ利益体質への改善に「現場目線で取り組んでいく」と力を込める。
―社長就任から4カ月が経過した。
堀江 厳しい時代に対処するため、現場の目線に立って改善を図るべく、バトンを譲り受けたと認識している。入社時から営業畑を歩み、現場長として数多く経験を積んできた。だが新型コロナの影響により、取り巻く環境は一層厳しいものになってしまった。
―荷動きは。
堀江 振り返れば昨年4月ごろから変調はあった。翌5月に前年同月比で物量が減り、以降も停滞。9月になると消費増税前の駆け込みで増えたが、増税後の10~12月はかつてないほど落ち込んだ。そこへ新型コロナが直撃。今年は5月が底で、6~7月は若干盛り返したが9月に再び低迷し、10月は前年と比べても5%ほど減った。状況は決して良くない。
―適正運賃を収受しにくい状況でもある。
堀江 だからこそ、利益体質への強化が急務となっている。対策として自社アセットを有効活用する内製化に注力している。荷量に応じた適切な配車を行い、積載率を高めることで使う車両は減る。傭(よう)車費削減にもつなげられる。
システム導入で配車効率化
―具体的には。
堀江 東日本、中部、西日本の各事業部ごとにドライバーの稼働状況や車両運行データを精査し、人員の適正配置の精度を上げる取り組みを始めた。4~5月は助走期間で6月から効果が出始めた。
―新たに自動配車システムも導入。
堀江 7月ごろから東名大の一部拠点でシミュレーションを始めた。例えば、従来の手法では15台必要だった配送車が、新しい配車システムでは13台で済むと割り出し、実際その通りに運用しても問題なかった。
―何が問題だった。
堀江 現場に染み付いてしまった配車に対する意識だ。物量の波動に対応できなくなっていた。配車システムの導入で仕組みを変えれば、属人化していた運用手法も見直せる。意識改革は一筋縄ではいかないが、取り組みは続けていく。
グループ間で人・モノ融通
―拠点展開では来年4月、愛知県大口町に大型物流センターを新設。
堀江 当社だけでなくグループとしても節目の拠点になる。保管面積は約1万平方メートル。3階建てで1階は当社の特積み拠点、2~3階はエスライン各務原が扱う量販向けアパレル商材の物流センターとして使う。繁閑に応じて2社の人・モノを流動的に配置する。2階に自動仕分け機を導入し、アパレル商材を特積みと貸し切りのどちらで運ぶかを選別し、1階ホームに荷物を降ろしていく。
―グループ2社が入居する。
堀江 初めての試みだ。グループの経営資源を有効活用し生産性を上げていく取り組みの起点とも位置付けている。中部にはグループの拠点が集中し、車両などを融通し合うことでさらなる生産性向上が期待できる。顧客への対応力も高まり、営業にもプラスになる。
―グループ全体の取り組みになるが、スケジュール感は。
堀江 調整が要る。今期は組織、体制の整備に時間を使い、来期から稼働させていくイメージだ。
記者席 会社を強くする
長年の物流現場での勤務を通じ、「社是の『和』の重要性を目の当たりにしてきた」。特積みは、発店と着店の助け合いが欠かせない。双方が効率良く仕事を回すためにムラをなくしていくことが、いま問われていると強調する。
1月に社長就任の打診を受けた。厳しい経営のかじ取りは覚悟していたが、予期せぬ新型コロナウイルスの影響にも対処しなければならない。先行きに安穏としていられない状況に、従業員にも「危機感を持ってほしい」。
ミッションは「会社を強くすること」。従来の手法を是とする従業員の意識に対しては、仕組みや体制の整備によって「変えていかなければならない」と語気を強める。一方、物流は人ありき。「従業員を大切に思っている」。現場の目線が原点だ。