インタビュー

【 社長インタビュー 】
変化を好機に事業拡大 現場こそ収益の源泉

2020年09月22日
丸運 桑原 豊 社長
飛躍に向けた準備期間として、2023年3月期までに連結売上高510億円(20年3月期比0・6%増)、連結経常利益16億3000万円(同33・9%増)を目指す中期経営計画を進行中の丸運(本社・東京)。新型コロナウイルス感染拡大が続く中、就任した桑原豊社長は「社会・経済構造の変容による新たなニーズを捉え、事業を拡大させたい」と意気込む。
―新型コロナの影響が続く中、6月に就任。
桑原 新型コロナとの共存が求められる中、社会・経済構造が変容していくことは間違いない。予想していなかった事態だが、ピンチはチャンスだ。変化を先取りできるようアンテナを高く張り、グループ全体の創造力や変革力を強化しつつ、事業の拡大に努めていく。
―社員育成にも力を。
桑原 企業経営は人に尽きる。教育・研修の充実や評価制度の適正化を進め、社員一人一人の「人財力」を高めながら、効率的な組織運営で企業価値の向上に取り組む。企業存立の基盤である安全とコンプライアンス(法令順守)を徹底し、明るく、風通しの良い、働きがいのある会社にしたい。
高い志で、夢のある会社へ
―就任の訓示で「高い志を持って夢のある会社に」と呼び掛けた。
桑原 丸運には未来がある。将来光り輝く可能性がある人材が多くおり、しっかりと育てれば、事業環境の変化へ柔軟に対応でき、さらなる成長を目指せる。社会の血流を担うエッセンシャルワーカーとしての志を抱き、挑戦し続けることで、競争力を持った夢のある会社になれる潜在能力は十分にあるはずだ。
―社員とどう向き合う。
桑原 収益の源泉である現場を大事にしたい。新型コロナ下で、各現場は感染予防策を取りつつ業務に取り組んでいる。(荒木康次前社長が始めた)ドライバーとの直接対話をはじめ、各現場とのコミュニケーションを深めていく。
3年で設備投資120億円
―4月に新中計がスタート。
桑原 中計3カ年は飛躍に向けた準備期間だ。新型コロナを含む環境変化への対応力強化、挑戦する企業風土の醸成を主眼にしている。主力の貨物輸送、石油と化成品・潤滑油のエネルギー輸送、海外の3事業で、成長への布石としてM&Aを含む戦略的な投資を行う。3カ年の設備投資総額は前中計を約50億円上回る120億円を計画した。
―貨物輸送は事業規模拡大の中核に。
桑原 効率的な配車体制の構築など既存業務の効率化を進めながら、付加価値が高い流通加工分野、成長が見込める機工分野への投資を積極化する。さらに今年統合した国際貨物部門との相乗効果で、収益力改善とさらなる拡大を図りたい。
―エネルギー輸送は。
桑原 石油市場が年間2~3%ずつ縮小している中、一定の事業規模を維持するため、最大顧客ENEOSグループとの関係を強め、中核輸送会社の位置を確保する。配送エリア最適化、協力会社との連携強化、自社車両比率の向上で安定供給体制を保ちつつ、当社と組めばENEOS自体も競争力を高められるWIN―WINの関係を築くことが重要。ENEOSが力を入れている再生可能エネルギー事業や水素事業でも商機があると考えている。
―海外は成長分野として積極展開。
桑原 中国3法人、ベトナム1法人を基点にネットワークと営業体制を拡充しつつ、多国間取引の拡大、現地ニーズに対応した営業提案の強化を図りたい。成長スピードを速めるためにはM&Aの活用も重要になる。
記者席 「利他自利」に共感
福岡県飯塚市の出身。日本鉱業入社を経て、新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合に携わった際、「文化や価値観の違いを乗り越え、融和を図るには、相手を理解するために胸襟を開いてコミュニケーションを取ることが大事。聞く力が信頼関係を築く鍵になる」と痛感した。
いまは「天台宗開祖の最澄が唱えた言葉〝一隅を照らす〟に心がひかれる」。一人一人が置かれた立場で精いっぱい努力することが、社会全体を光り輝かせているという意味だ。他人の利を優先すれば、自分も利を得られるとする、丸運創業者・金原明善の言葉「利他自利」にも強く共感した。
趣味は囲碁。大学時代から本格的に始め、「最も強い時は〝自称三段〟の腕前だった」。ゴルフと温泉も好む。