インタビュー

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【 社長インタビュー 】

経営統合成功へ注力 「幹の太い企業に」

2015年04月21日

名糖運輸 林原 国雄 社長

 チルド食品物流を主力業務とする名糖運輸(本社・東京都武蔵野市、林原国雄社長)。昨年度から推進してきた運賃改定交渉、輸送効率の向上策が着々と実を結んでいる。冷凍食品輸送を強みとするヒューテックノオリン(同・東京、綾宏将社長)との今年10月の経営統合により、さらなる経営基盤、収益力の強化を進める。

 ――社長就任から9カ月。
 林原 昨年4月のデイライン子会社化、ベトナムでの冷凍倉庫運営開始など、多くの新たな展開があった。課題に1つずつ取り組み、改善が進んできた。
 ――ベトナム事業は好調。
 林原 初年度から予想を上回る大幅な黒字。引き合いが非常に多く、倉庫は増築が決まった。配当もできる。
 ――デイライン子会社化に当たり、幹線輸送の共同化・効率化を計画。
 林原 まだ実現していない。顧客荷主にとっても厳しい経営環境が続いており、最終納品先である小売店との配送条件の変更が難しい状況にあった。そのため、配送コース数の変更などに着手できなかった。4月以降、再編を実施する。
 ――運賃改定も積極的に推進。
 林原 昨年4月から交渉を進めてきたが、当初の予想より多くの顧客の理解を得ることができた。難しいと見込んでいた顧客とも互いに良い水準で合意できた。改定効果も出てきており、新年度はさらに収益が改善すると期待している。

インフラ・営業の相互活用

 ――今年2月にヒューテックノオリンとの経営統合を発表。狙いは。
 林原 経営の土台を盤石にし、企業としての幹を太くすること。根をしっかり張り、良い枝葉、果実を付けられるようにしたい。具体的な方策については現在、10月の統合に向け両社のメンバーによる分科会で経営トップ層以下の社員が活発に議論を交わしている。
 ――統合発表会見では相互のインフラ活用、営業上の協力などに言及。
 林原 それぞれの繁忙期の波動調整で協力したり、車両・施設が不足している際も互いの持つインフラを活用したりすることで、グループ内で人員や資金を回すことができ、外注費などが削減できる。営業面では、利用できる拠点が増えるのと同時に、商談から業務開始までの対応の高速化も期待できる。また、課題に直面した際にも検討を行う人員が倍になる。一方で、強引な人員削減を行うつもりはない。情報を十分に共有しつつ、焦らず進めていきたい。

企業の力強め交渉メリット

 ――企業として力を強めることで顧客との交渉上のメリットは。
 林原 大いにある。人件費をはじめとする物流コストが上昇しており、運賃改定交渉を進める中で、「あまりに条件が折り合わなければ撤退する」というカードが発生する。メーカー、卸、小売り、物流事業者ともに、同じ環境下で同じ情報を持っている。物流の改善に向け、どのプレーヤーが主導していくかという点でも企業としての強化は重要だ。
 ――定温輸送は専門性が高く、扱える事業者も限られる。もともと交渉は有利なのでは。
 林原 新規参入は難しいだろう。1番大きい理由は車両への投資が難しいこと。それは長年定温輸送を行ってきた当社の強みだが、常温輸送向け車両とのコストの差に見合うだけの運賃を収受しているわけではない。
 ――新年度に注力することは。
 林原 最上位の目標は、経営統合を成功させること。半年をかけていろいろな準備し、必要な人員の配置を行っていく。同時に、業績が芳しくない地域・関係会社の収益改善を図る。

記者席 〝一番いい時代〟

 「OBに『一番いい時に社長になったね』と言われる」(林原社長)。
 もちろん真の意味は逆。「ヒト・モノ・カネの各面で、経営環境が厳しくなってきた中での就任だった」(同)。逆風の始まりは東日本大震災。元来、東北―北海道の商圏が強く同地域出身の社員も多かったが、震災以降は物量が減り、人も集まりづらくなった。冷蔵品を扱うため、電気代の高騰にも影響を受けた。
 「1年前のこの時期はまだ営業本部長。大変な年になると思っていた」(同)。就任から9カ月、デイラインの子会社化、ベトナム進出といった多くの新規事業を軌道に乗せるべく奔走。2月にはヒューテックノオリンとの経営統合を発表した。「いまはやるしかない、という気持ち。来年度は明るく希望の持てる1年になりそうだ」(同)。

(略歴)
 林原 国雄氏(はやしばら・くにお) 昭和28年1月9日生まれ、62歳。佐賀県出身。48年東京都立武蔵高卒。47年名糖運輸入社、平成15年取締役東日本第1事業部長、16年ジャステム社長、エス・トラスト社長、20年営業本部長兼西日本営業部長、21年常務営業本部長兼西日本営業部長、22年常務営業本部長、26年6月社長。(村山 みのり)