インタビュー

【 社長インタビュー 】
売上高90%をベースに 会社一丸で乗り切る

2020年09月01日
西濃運輸 小寺 康久 社長
西濃運輸(本社・岐阜県大垣市)も新型コロナウイルス感染拡大の影響を免れることができず、2020年4~6月期業績は大きく落ち込んだ。4月に就任した小寺康久社長は善後策として、売上高のベースを昨年比10%減に設定。分かりやすい指針で会社を束ね、将来の攻勢に備える。
―4月、社長に就任した。
小寺 企業規模が大きく、グループ中核企業のトップとして重責を感じる。一方、新型コロナの流行で状況が大きく変わってしまった。
―直近の売上高は。
小寺 20年4~6月期の売上高は前年同期比8%減だった。利益も大幅に減った。
―3カ年の新中期経営計画を策定。
小寺 厳しい状況だが、目指すところには向かう。「国家社会に貢献する」という使命もある。善後策も講じている。
―善後策の中身は。
小寺 まずは新型コロナにどう立ち向かうか。物量を確保し売り上げを立て、得た利益を社会に還元するという姿勢は不変だ。新型コロナ流行の収束時期が分からないからこそ、一度、考え方をリセットすることにした。
―具体的には。
小寺 昨年比で売上高90%をベースにし、そこから収益を積み増していく目標設定にした。新型コロナという未曽有の危機に対し、会社が一丸になるためだ。
―一方で経済を回している物流は止められない。従業員へのケアは。
小寺 社員の多くが現場に出て、業務を遂行している。医療従事者と同様の思いで頑張ってくれている。彼ら、彼女らのためにも、一定の利益は必要と考えている。
顧客のため投資に利益要る
―コスト削減が急務。
小寺 まずは協力会社などに丁寧に状況を説明し対処している。当社は顧客の繁栄に貢献するために存在している。そのためには人やモノへの投資が必要で、利益が不可欠と言える。
―特積みでのスリム化は困難な面もある。
小寺 一番難しいのが幹線の運行費圧縮だ。運行費は全体に占める割合が大きい。削減できれば効果も絶大だが、ある段階になると急に対策が打てなくなる。
―なぜか。
小寺 リードタイムや荷扱いなど、顧客に安心してもらえるネットワークを維持することが前提。限界はある。いまが踏ん張りどころだ。
物量確保で値下げはしない
―景気の落ち込みで物量が減り、一部では荷物を奪い合う状況にもなっている。
小寺 運賃を下げてまで物量確保に急ぐことはしない。今後も適正収受に向けた取り組みは堅持する。業界全体でせっかく上がった運賃を下げる方向へ持っていきたくはない。
―収益力強化ではターミナルと倉庫を一体運営するロジ・トランス機能を強化している。
小寺 強みを生かした戦略の1つ。今後、新しく建て替えるターミナルは全て多層階にし、上層階に倉庫を設ける。顧客は本業に集中でき、当社も保管や流通加工で稼げる。集荷もせずに済み、業務効率化が図れる。
―同業他社とのアライアンス(提携)も進めている
小寺 時代に即したサービスを提供するためだ。親会社のセイノーホールディングスは福山通運に加え、昨年、SGホールディングスと提携した。さらに宅配大手のヤマト運輸を含めた連携も進めている。中核企業の当社も役割を果たしていく。
記者席 予期せぬ中の就任
2020年4~6月期の国内総生産は年率換算で27.8%減。リーマン・ショック直後の09年1~3月期より10ポイントも下回った。その渦中、西濃の社長に就いた。
社長就任の打診はイレギュラーなものではなく、新型コロナウイルスの感染拡大前に伝えられていた。そして西濃の20年4~6月期純利益は前年同期比55.3%の大幅減。火中の栗を拾うでもなく、予期せぬ事態の矢面に立ち、グループ中核企業の指揮を執る。取材時の「重責を感じている」。その心境は推して知れるものではない。
一方で、収益力を高める営業施策について、「成果は出ている」と笑顔も。「顧客の繁栄に貢献するには利益が必要との教えがある」。歴代トップが継承してきた西濃の伝統と従業員を守るため、利益創出に知恵を絞る。