インタビュー

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【 近畿ブロック特集 】

近畿の景気は拡大 顧客と企業の協力が必要

2019年11月19日

近畿運輸局 八木一夫 局長

 日銀大阪支店が10月に公表した「関西金融経済動向」によると、近畿地方の景気は、一部に弱めの動きが見られるものの、緩やかな拡大を続けている状態。八木一夫近畿運輸局長に、物流業界を取り巻く環境の変化や施策、今後の課題などについて聞いた。

 ――近畿経済の現況、荷動きは。
 八木 全体として見れば徐々に拡大していくだろう。今春以降は大型連休や台風、G20サミット(=主要20カ国・地域首脳会議)などで貨物が滞留する時があり、消費増税の駆け込み需要も緩やかだった。結果として上期の物量は低下したが、今後は大阪万博など大きなイベントが控え明るい動きもある。活性化していくのではないか。
 ――物流業界では人手不足が深刻化している。
 八木 働き方改革の実現は大きな課題。ドライバー職では2024年4月から時間外労働の上限規制が導入されるが、物流企業側だけの努力では順守は成し得ない。荷待ち時間削減などの労働生産性向上と長時間労働の是正を進めるには、顧客側との協力が不可欠。サプライチェーン(供給網)全体で協力し、解決を図ることが重要。

消費者への周知が必要

 ――どのような物流施策に注力する。
 八木 「ホワイト物流」推進運動を消費者まで周知し、理解を得られるようにするのが望ましい。荷待ち時間調査で、長時間の荷待ち件数の多かった加工食品、紙・パルプ、建設資材を対象とした「近畿地方懇談会」を新たに設置し、荷待ち時間の短縮につながる「アドバンス事業」を実施する。年度内に輸送品目ごとに各2回開催する。
 ――他には。
 八木 製造、運輸、建設業界のイメージアップと雇用促進を目的とした大阪人材確保推進会議に物流団体や行政などが構成員として参加。相互に連携・協力を図っている。また、過労運転防止のための疲労状態を計測する機器や、ヘルスケア機器、遠隔地からのリアルタイム運行管理を行う機器などの導入支援など、事故防止対策支援推進事業に力を入れる。
 ――今後の課題と展望は。
 八木 若年層と女性の新規就労者の積極的な人材確保が必要。そのためには、子育て支援や資格支援制度、昇給制度の充実など、働きやすい環境を整え、従業員にも制度を理解してもらう必要がある。
 ――発信も大切。
 八木 物流業界の周知も不可欠。旅客業界は消費者とつながりがある分注目されやすいが、物流があってこそ世の中が回るのだということを消費者にもっと知ってもらい、生活を支える縁の下の力持ちであるということを感じてもらいたい。