インタビュー

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【 倉庫・3PL特集特別インタビュー 】

生産性向上が鍵 災害時対応も課題 

2019年11月12日

国土交通省 中井 智洋 大臣官房参事官

 倉庫業界は普通倉庫、冷蔵倉庫共に営業収支率が好調。さらに保管残高が増加している。一方、生産性向上が鍵となる庫内作業員不足や、災害時対応の課題を抱えている。今年度末に期限を迎える倉庫税制の延長も重要だ。そこで、国土交通省の中井智洋大臣官房参事官に倉庫行政の展望を聞いた。

 ――倉庫業の経営環境はどうか。
 中井 景況感は悪くないため、倉庫業の経営環境は安定している。国土交通省の統計で、普通倉庫の営業収支率(営業費用に対する売上高の割合)はこの7~8年間、102~103%、冷蔵倉庫はここ数年110%で好調だ。
 ――保管残高が増加。
 中井 普通倉庫も冷蔵倉庫も保管需要が高まっている。特に、冷蔵倉庫では東京や横浜で在庫量が増加。TPP(環太平洋経済連携)やEPA(経済連携協定)発効による食品の輸入量の変化や、共働き世帯増加による冷凍食品の需要の高まりが主な理由だ。
 ――庫内作業員不足が課題。
 中井 解決には生産性向上が鍵となる。物流は経済の血流で倉庫は心臓に該当する。改善を進めれば物流全体の生産性向上につながる。他にも災害時の対応が課題だ。
 ――改正物流効率化法を通じた施策も不可欠。
 中井 改正物効法の総合効率化計画では倉庫や輸送網を集約でき、生産性向上につながる。さらに車両予約システムも導入すれば、倉庫周辺の手待ち時間を削減でき、トラックドライバーの残業時間削減も見込める。今年度から日本倉庫協会のセミナーで認定企業に計画策定のポイントを話してもらっている。倉庫会社は参考にしてほしい。
 ――倉庫税制延長も生産性向上の鍵。
 中井 倉庫税制は総合効率化計画の認定を受けた倉庫に対する税負担の軽減措置。倉庫業界だけでなく、トラック運送業界からも延長要望がある。延長に向けて、粘り強く取り組みたい。
 ――荷役の省人化、自動化も重要。
 中井 作業員が不足している中でも、荷役を省人化・自動化できる機械を活用できれば、作業の効率化に加え、パートやアルバイトといったベテラン以外の人材を労働力として活用できる場を増やせる。省人化・自動化につながる機器の導入補助に関しては、来年度の予算で要求している。
 ――災害時の対応は。
 中井 国交省では、毎年10月に実施する災害物流研修へ自治体や都道府県トラック協会の防災担当者に来てもらい、円滑な支援物資輸送に向けた取り組みの普及を進めている。今後も災害時の倉庫の役割を国民に知ってもらえるようPRしたい。