インタビュー

【 社長インタビュー 】
持続的成長へ歩幅広げ 「課題解決型」強化を

2019年09月10日
丸全昭和運輸 浅井 俊之 社長
今期、2022年3月期までの中期経営計画をスタートした丸全昭和運輸(本社・横浜市、浅井俊之社長)。3PL、設備移設、海外事業の拡大を図り、連結で売上高1410億円(19年3月期比20.5%増)、経常利益100億円(同20.3%増)を目指す。浅井社長は「品質と安定的な物流の提供をテーマに、顧客の課題解決といった一歩進んだ領域の強化を目指したい」と話す。
――新中計の売上高目標は1500億円に迫る。
浅井 最終年度は創立90周年の節目に当たる。今年6月には港湾物流が主力の国際埠頭を子会社として迎え入れた。米中貿易摩擦や対韓問題など先行きの不透明感はあるが、歩幅を広げ、さらなる成長を目指したい。
――「ロジスティクス・パートナーとしての使命を果たすために」がスローガン。
浅井 輸送・作業の自動化を見据えながら、顧客の課題を発見し解決する提案力がさらに重要になる。社会基盤の一翼を担う企業体として、創業以来の成長基盤である品質を維持しつつ顧客が望む安定的な物流を提供し続けていく。
IoTでデータを収集・分析
――計画の狙いは。
浅井 「多様な人材のニーズに応える人事制度・組織づくり」「作業現場の機械化・事務作業のシステム化・輸送の自社化」「課題解決型ビジネスの強化」「ESG(環境・社会・ガバナンス)に重点を置いた取り組みの強化」の4つだ。
――国内事業の方針は。
浅井 3PLは、築き上げた輸配送網やノウハウを生かし既存顧客が多い化学・建材業界を中心に拡大を図る。安定的にサービスを提供できる体制構築へ車両や倉庫といった自社アセットをさらに強化。課題解決型ビジネスの即戦力となる人材の採用・育成で将来への基盤づくりを進める。
――課題解決型ビジネスとは。
浅井 社内では「MLPサービス」と銘打っており、顧客の物流課題を分析し解決方法を提供するものだ。IoT(モノのインターネット化)によるデータ収集・分析、物流子会社の管理支援などを考えている。
――設備移設も強化。
浅井 国内物流市場縮小が予想される中、機工事業、特に工場移転や設備移設・メンテナンス事業を強化し、持続的成長を目指す。機工・設備移設を扱う国内の部門やグループ会社間の連携、ノウハウ共有を進め、技術向上と営業地域拡大、海外市場への展開を図る。
――海外の売り上げ拡大も重点。
浅井 法人を置くベトナムとマレーシアを中心とした東南アジアなど需要拡大が見込める地域で拠点網を拡充し、現状4%程度の海外売上高比率を10%にしたい。国内と同じく海外でもアセットを保有し自社で運営する体制を築き、顧客からの信頼獲得につなげる。
大型倉庫建設に160億円
――設備投資は3年で総額250億円を計画。
浅井 160億円を新規の大型倉庫、70億円を車両・倉庫の更新やメンテナンス、20億円をIT(情報技術)・マテハンに充てる。大型倉庫は関西と関東に建設したい。
――倉庫内作業の自動化、機械化も推進。
浅井 当社の業務に合った仕組みを検討しながら生産性向上に取り組む。通関など事務作業でもRPA(ロボットによる自動化)を導入していく。
――M&A(企業の合併・買収)には3年で100億円を投じる。
浅井 国内では商権拡大や当社にはない物流機能の獲得、ネットワーク拡充に加え、人材不足の補強、実輸送力強化を目的とするM&A、資本・業務提携を行う。設備移設に強い企業や低温物流のノウハウを持つ企業などを対象にしたい。
記者席 高校新卒採用を促進
約20年ぶりとなる人事制度の改訂も新中計の柱。4月に「人事制度改訂準備室」を立ち上げ、新しい制度づくりを推進。「年功序列型の賃金体系を見直し、社員の成長と会社の発展が一体となる制度を整備したい」。女性の活躍推進、高齢者の再雇用も見据える。
今年度から、高校新卒の採用促進を図り、「アソシエイト職」を新設。「3年間教育を受けながら、事務系か現業系か、自分で進路を決められる」。高校新卒社員の育成強化へ、川崎市に研修センターを設ける計画。人材確保とともに、働き方改革にも拍車を掛ける。
社長就任8年目。品質を重視する自前運営にこだわり続け、前中計期間を含む6期連続で売り上げを拡大。新中計で「顧客ニーズへ機敏に対応できる体制づくりを追求する」。