インタビュー

【 インタビュー 】
安全・安心が全ての根幹 労働慣行見直しも必要

2019年08月06日
国土交通省 一見 勝之自動車局長
国土交通省の一見勝之自動車局長は7月26日の会見で、自動車行政の抱負を語った。今後の方針では安全・安心を根幹としつつ、技術開発推進や地域の足の確保を進めていくとした。トラックでは、「働き方改革を推進するには長年の労働慣行を荷主と一緒になって見直さなければならない」とし、業界と共に問題点を把握しながら改善する考えを示した。
――就任の抱負は。
一見 先日、軽井沢スキーバス事故の慰霊碑に顕花した際、将来ある若者の命を奪った事故を2度と起こしてはならないと強く感じた。安全・安心が全ての根幹。車検、整備、保険を含め対策を徹底していく。緑ナンバーによるプロの輸送も重要で、運行管理の徹底や監査もしっかりと行う。
――自動車業界では技術革新が進む。
一見 自動車技術開発の推進も抱負の一つ。人口減少により将来的な経済力の低下が懸念される中、少ない人口で生産力を維持する生産性革命に自動運転は大きく貢献する。日本が自動運転の国際基準をリードし、輸出できれば外貨獲得にもつながる。他にも、人口減少が進む地方での足の確保に注力していく。
業界と協調し荷主理解推進
――10年ぶりのトラック業界をどう見る。
一見 貨物課長時代は燃料高騰だったのに対し、現在の喫緊の課題は人手不足。荷主との力関係も変わり、ある程度、言いたいことを言える関係になりつつある。だが力関係は対等ではない。行政も協力しながら荷主の理解を促進する。
――働き方改革に向けて。
一見 働き方改革では長時間労働是正が重要となる。2024年に残業時間の上限規制を控え、段階的に時間を減らさないと直前では対応できない。働き方を変えるには長年の労働慣行の見直しが必要で、業界と問題点を把握しながらできることを進めていく。秋には政府行動計画のフォローアップもあり、足りない部分があれば対応する。
業界の魅力発信も注力
――改正貨物自動車運送事業法に伴う対応は。
一見 目安となる標準的な運賃の告示制度は作業を進めており、使い勝手の良い実効性あるものをつくっていく。7月に施行した荷主対策では、運送企業を行政処分する前でも、荷主に問題があれば働き掛けができるようになった。荷主、トラック業界から話を聞き、どう魂を入れるか考えたい。
――人材確保では行政の支援も重要に。
一見 当面はホワイト物流推進運動のようなキャンペーンと、(改善基準告示などの)制度構築の両面で、世の中に(魅力や労働環境改善を)アピールすることが重要になる。労働力不足はどの業界でも起きている。(これ以上取り合いにならないよう)省力化を含め考えていく。
人柄
1989年の入省以来、ほとんどの運輸行政を経験。海上保安庁時代には「仕事があり生活するのではなく、生活があって仕事がある」との考えの下〝ライフ・ワーク・バランス〟を推進し、働き方改革の旗振り役を担った。
好きな言葉は諸葛孔明の「後出師の表」にある、謙虚な姿勢であらゆることに全力で臨むという意味の「鞠躬尽力」(きっきゅうじんりょく)。趣味は山歩き、絵画鑑賞、そば打ちなど多彩。フランス・パリでの勤務経験もあり、「フランドル地方を描いた絵画が好き。日本画も勉強したい」。