インタビュー

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【 社長インタビュー 】

西日本の無人航送を強化 敦賀―博多航路 武器に

2019年08月06日

近海郵船 田島 哲明 社長

 近海郵船(本社・東京、田島哲明社長)は4月、敦賀(福井県)―博多(福岡市)航路を開設。7月1日からはデイリー運航を開始した。ドライバー不足でトラックによる長距離輸送が難しくなる中、トラック輸送が主流の西日本地域でRORO船による無人航送を強化し、モーダルシフトの需要の取り込みを進める。

 ――足元の状況は。
 田島 既存航路の荷動きは前年並みで推移している。苫小牧(北海道)発の荷動きは、昨年の台風の影響などで農産品の出荷が振るわず、5月下旬~6月中旬は落ち込んだ。だが、6月下旬から大根などの出荷時期に入り回復が期待できる。東京―大阪―那覇航路は、沖縄で観光客が増えていることもあり、荷量は安定している。
 ――4月に新たなRORO船航路を敦賀―博多間に開設。
 田島 『なんとしてでも成功させなければならない』という強い意識を会社全体で持ち、着実に進めている。7月1日からは、6月まで苫小牧―東京航路で紙専用船として運航していた「とかち」を就航させ、日曜を除き毎日運航している。
 ――デイリー化が早過ぎるのではないか。
 田島 航路開設から3カ月でのデイリー化は、少し背伸びしていると思われるかもしれない。だが、既に利用している顧客から、早期のデイリー化を望む声が多く踏み切った。他社の動向を見ても、早期デイリー化が必要と考えた。これからが正念場だ。

北海道―九州間の利用多く

 ――感触はどうか。
 田島 飲料、路線貨物、農産品、自動車部品、鉄鋼が主な貨物。荷量は順調に伸びている。積載スペースにはまだ余裕があり、さらに増やしていきたい。
 ――北海道から九州での利用も多い。
 田島 敦賀で既存の苫小牧―敦賀航路と接続することで、北海道から九州を結んだ。開設前から一定の需要があることは想定していたが、想定以上の手応えを感じている。北海道―九州を約3日で結んでいる点が評価されている。
 ――荷量拡大に向けては。
 田島 昨年、自社で管理するウイングセミトレーラーを追加で200台購入し順次、引き渡しを受けている。延べ1000台体制になる。RORO船を利用したことがない顧客はセミトレーラーを持たず、RORO船のメリットが享受できない。そこでセミトレーラーの数を増やし、利用しやすい環境を整備している。

RORO船の利点をPRし

――ドライバーは集配業務に集中してほしい。
 田島 敦賀―博多航路で運航している2隻のRORO船には、ドライバールームがありたっぷりと休憩を取れる。一方、乗船中は休憩時間になるが、約19時間は船上で過ごすことになる。業務の都合で乗船が避けられないこともあるが、ドライバー不足の中ではなるべくドライバーは乗船せず、集配業務に集中してもらいたい。
 ――どうPRしていく。
 田島 西日本は道路がつながっているため、トラック輸送が主な輸送手段として定着している。海上輸送はフェリーが主流で、RORO船の認知度は低い。裏を返せば、モーダルシフトの余地が残っていることになる。RORO船はドライバー不足への対応として有効な対策になる。船を利用したことのない顧客には、まず有人で利用してもらい、無人航送に移行してもらえるようPRしていく。

記者席 社の雰囲気伝えたい

 近海郵船のホームページでは、船舶の写真や各地の営業所、支店で勤務する従業員によるブログ日記を公開している。
 現在のホームページは、田島社長が就任したタイミングでリニューアルした。就任前のものよりも「良い内容にしたかった」。若い社員にアイデアを出すように指示し、現在の形に変更。就職を希望する学生や新規に取引を検討している顧客に向けて、「社内の雰囲気を伝えるための工夫を施した」。
 最近ではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に写真を投稿することが、若者をはじめ広く人々の間で流行している。同業者にもSNSを利用している企業があり、「PRの手法として有効かもしれない」とする。