インタビュー

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【 社長インタビュー 】

事業の多角化を推進 将来の自動化に備え

2019年07月23日

マルソー 渡辺 雅之社長

 マルソー(新潟県三条市、渡辺雅之社長)は自動化の波が広がる中で企業を存続させていくため、異業種のM&A(企業の合併・買収)や、企業主導型保育事業を推進し、事業の多角化を進めている。物流事業では、他社には真似できない業務に特化することで、他社との差別化を図っている。

 ――経営の状況は。
 渡辺 直近の売上高はほぼ横ばいで推移。利益については、適正料金・運賃収受と不採算業務の見直しの成果が出ており、2019年9月期は過去最高を見込んでいる。
 ――年々コストは上がっている。
 渡辺 中でも人件費が高騰している。ドライバー確保のためには他社に見劣りしない給料を提示することが必要で、引き続き人件費の上昇は避けられないだろう。
 ――労働環境の改善も人材確保につながる。
 渡辺 車両の代替え時には、できるだけ最新の技術を搭載した車両を導入している。長距離輸送ではドライバーが他社のトラックを見た時に、「自分は良い車に乗って仕事をしている」と感じてもらえるように、装備の充実が当たり前になっている。

自動化のへの対応を進める

 ――自動化の波が押し寄せている。
 渡辺 物流センターについては現時点で具体的な投資計画はないが、少子化の深刻化を踏まえれば、今後は自動化を通じて省力化を図れるセンターを目指していかなければいけない。将来、大きな投資が必要になるという意識は持っている。
 ――物流が変わる。
 渡辺 その点、自動化は従来型の運送事業に大きな影響を及ぼすとみている。自動運転のトラックが、高速道路を走行する時代がすぐそこに迫っている。人を必要としない自動倉庫も間もなく実現するのではないか。
 ――どのような影響が予想されるか。
 渡辺 自動化が進むことで有利になるのは大きな資本を持つ大手企業。巨大自動倉庫や先端システムを購入することで、人手不足の下でも容易に物流を行う体制を築けるからだ。物流の自動化が本格化すれば、既存事業を継続しても、企業を存続させることは難しくなる。

異業種2社グループに迎え

 ――対策は。
 渡辺 事業の多角化を進めている。物流では他社にまねできない、特定分野に特化した事業を推進している。17年には産業廃棄物を再生しプラスチック製品を製造する事業モデルを持つウェステックエナジー、18年にコンクリート製品の製造・販売を手掛ける上越建設工業を子会社化した。
 ――2社はメーカーだ。
 渡辺 2社はメーカーの機能を持つ。もしも今後、景気が後退し荷動きが悪くなった場合でも、2社で生産した製品を輸送することができる。グループ内で運ぶ荷物を造ることができるのは、大きなメリットになると考えている。
 ――企業主導型保育事業にも注力する。
 渡辺 自社の物流拠点に、社員や地域住民が利用できる企業内託児所を設置し運営している。子どもを育てる従業員が働きやすい環境の整備に努めている。託児所を利用できることをメリットと感じて入社を希望する人も多く、人材確保の点でも効果が出ている。
 ――物流は特化型がポイント。
 渡辺 物流では、特に他社との差別化が重要になる。グループ会社の丸喜重量運輸は、大型産業機械の輸送、据え付けで高水準の技術を持つ。県外の取引先もあり、他社の追随を許さないレベルにある。差別化を意識した事業を展開していく。

記者席 未来へひそかな期待

 事業の多角化の一環として、企業主導型保育事業を推進している。これまでに3つの物流拠点に企業内託児所を整備。子育て中の従業員を支援するとともに、仕事を辞めないで済む仕組みとして機能している。
 人材確保にも効果が出ている。託児所を設置してからは、入社を希望する若い女性が増加。従来男性の割合が高かった職場で、活躍する女性が増えている。
 託児所の子どもたちに菓子を持って来たり、停車中のトラックに乗せてあげたりするドライバーもおり、「現場の雰囲気も良くなっている」。
 託児所に通う子どもは毎日、トラックを目にしている。十数年後に思い出し、物流業界にやってきてくれることをひそかに期待している。