インタビュー

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【 社長インタビュー 】

来春、新型2隻が就航 来秋からは5隻体制に

2019年07月09日

阪九フェリー 小笠原 朗 社長

 阪九フェリー(本社・北九州市、小笠原朗社長)が来春、新船2隻を就航する。船齢17年になる「やまと」「つくし」(新門司―神戸航路)の代替船で、瀬戸内航路最大級の大型フェリーを投入し、来秋には5隻体制に移行する。つくしを残し、新門司―泉大津航路での運航に回す。トラック積載台数は大幅に増え、小笠原社長は「旺盛な輸送需要に応えることができる」と話す。

 ――業績が好調。
 小笠原 2019年3月期は増収増益。売上高は110億円を超えた。売り上げの65%ほどを占める貨物部門は、ドライバー不足を背景とした陸から海へのモーダルシフトの高まりを受け、好調に推移している。

業績好調、平日は満杯続く

 ――15年に就航した新門司―泉大津航路の大型船「いずみ」「ひびき」の稼働状況はどうか。
 小笠原 就航して1年は想定より若干下回ったが、2年目以降はほぼ満杯状態が続き、平日はキャンセル待ちのトラックが並んでいる状態。九州から関西以東の長距離輸送で法令を守るため、定期的にトラック航走の枠が欲しいという要望が増えている。
 ――新船2隻が来春、就航する。
 小笠原 待望の新船となる。来年3月と6~7月ごろにそれぞれ1隻ずつ就航させる。瀬戸内航路最大級の大型フェリーで、新門司―神戸航路の「やまと」「つくし」の代替船。トラック積載台数は計70台(12m換算)ほど増える。大型船を4隻持つことは大きな強みになる。
 ――船内の仕様は。
 小笠原 いずみ、ひびき同様、ホテルのように開放感ある仕様にする。旅客が出入りするエントランス部分はホテルの車寄せのような機能を持たせ、エントランスには高い吹き抜けを設ける。
 ――ドライバーズルームを増やす。
 小笠原 いずみ、ひびきと比べ、ドライバーズルームは7室から10室に、定員数は82から110人に増やす。各個室にはテレビ、共用部には喫煙所付きサロン、コインランドリーを併設。露天風呂もあり、日頃の疲れをいやしてもらえると思う。

需要の多い有人車両に対応

 ――5隻体制にする。
 小笠原 代替の2隻に加え、つくしを残して5隻体制にする。貨物需要の高い新門司―泉大津航路で走らせる。SOx(硫黄酸化物)排出規制対応でスクラバー(脱硫装置)を設置するため来秋の就航となる。デイリーではなく、月・水は上り、火・木は下りで運航。トラック積載台数は162台が純増する。
 ――ダイヤは。
 小笠原 出航時間は上りで午後9時、下りで午後8時半を予定している。九州から本州へ運ぶ青果物などの輸送需要が高く、遅めに出航時間を設定してほしいという声は以前からあった。
 ――トラック積載台数が大幅に増える。
 小笠原 新船2隻の増台分と合わせれば、週4便は現状より約230台多くトラックを積載できる。有人トラックを載せたいという要望は増えており、ある程度ニーズに応えられるのではないか。
 ――かつては6隻体制だった。
 小笠原 09年の高速道路休日1000円などの道路偏重施策で船社の経営は圧迫され、当社も4隻体制にせざるを得なかった。だが時代は変わり、船旅に魅力を感じる人も増えている。いずれは6隻体制に戻したいという思いはある。
 ――来夏には東京オリンピック、25年には大阪万博が控える。
 小笠原 旅客需要が高まると同時に、九州からの建築資材輸送でフェリーが使われる場面も増えてくるだろう。

記者席 船旅ならではの良さを

 来春就航の新船2隻は4年前に就航した「いずみ」「ひびき」とほぼ同型船だが、随所に改良している。船長、航海士が操船を行うブリッジや乗組員居住区を独立させて客室を増やすとともに、共用部分をより広く、開放感あふれる設計に。トイレ付きの部屋は40部屋ほど純増させる。
 「船旅ならではの良さを味わってもらいたい」。船内レストランはカウンターに並べられた複数の料理を利用者が選んでいくカフェテリア方式。要望すれば出来立ての料理を席まで運んでくれるサービスも。シェフは定期的に開く新メニューの品評会などで腕を競い、利用客からも好評を得ているという。
 「曲折はあったが手は打った。これからが勝負。かつての6隻体制を視野に入れ、さらなる成長につなげたい」