インタビュー

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【 社長インタビュー 】

物流支え存在感高める 1年で工賃15%値上げ

2019年05月14日

SGモータース 石部 久康 社長

 SGホールディングスのグループ会社で車両の整備や販売事業などを展開するSGモータース(本社・東京、石部久康社長)。売り上げの半分を占める整備事業では、1年で15%の工賃値上げに成功。同時に、時代とともに移り変わる物流現場のニーズを的確に捉えるための車両供給体制も整備した。石部社長は「物流現場を支える企業として存在感を高め、さらなる成長につなげていく」と話す。

 ――業績が好調。
 石部 昨年度は親会社SGホールディングスの3カ年中期経営計画最終年度だったが、当社は売上高、営業利益とも、グループが掲げる中計目標をクリアすることができた。順調に来ている。
 ――整備事業で工賃値上げを推し進めてきた。
 石部 おととしから値上げ交渉を本格化した。全ての顧客が対象で、昨年度から工賃水準は15%ほど上がり、業績伸長に大きく寄与した。
 ――値上げ要請に対する顧客の反応は。
 石部 顧客離れは3%ほどにとどまった。当社の工賃が割安だったこともあるが、整備業界を取り巻く環境は人材不足などで悪化しており、顧客は理解を示してくれた。今後は品質向上で顧客に応えていきたい。
 ――3年前に開設の西大阪店(兵庫県尼崎市)は建屋一体型塗装ブースなど他拠点と一線を画す。
 石部 整備業務は近年の自動車技術の電子化、高度化により対応が難しくなっているが、当社は架装で培った長年のノウハウがあり、的確でスピーディな対応が可能。西大阪店はこうした架装メーカーとしての強みを生かした総合拠点で、他拠点に比べ外販率も高く、安定した収益がある。
 ――拠点増強の考えは。
 石部 近いうちに東北、北関東、関西で既存拠点を移転リニューアルする。施設老朽化への対応と整備需要に合わせたスペース拡張が目的。西大阪店をモデルに最新設備を導入し、空調を整えて整備士の働く環境改善も図る。優先順位は変わったが、機を見て需要の多い東名阪、福岡にも随時拠点を新設していく。

現場求める車両提供

 ――開発部門を強化。
 石部 昨年4月、岡山工場(岡山県勝央町)と富士工場(静岡県富士市)所属の開発スタッフを一部、本社新設の購買管理課に配置転換。仕入れの精度を上げた。今年4月には岡山工場に開発を主導する開発管理部をつくり、仕入れ内容が顧客ニーズに合致しているかを検証する体制も敷いた。
 ――物流現場が求める車両の提供が第一。
 石部 この1年半、ドライバーが安心して運転できる環境改善を含め、SGグループの物流品質を、架装メーカーとして、どう支えるかに注力してきた。架装のベースとなる車両の仕入れでも安全性能は各メーカーで異なる。その上で架装をより良いものにしていく。

営業部隊を増強し拡大

 ――佐川急便が導入を進めるスワップボディーコンテナ車(スワップ車)も供給している。
 石部 スワップ車は拠点でシャーシとコンテナを脱着。運転と荷役の分離が図れ、女性ドライバーの活躍も促す。スワップ車を構成するシャーシ130台、コンテナ240台ほどを佐川急便に供給。だが脱着作業は25メートル以上のスぺースが要る。操作を簡単にしてほしいという声もある。今後も現場のニーズを拾い上げ製品に反映していく。
 ――営業の取り組みは。
 石部 早期に営業人員を10人ほど増やし、整備、架装、新車・中古車販売の各部門で、物流現場に眠る需要の掘り起こしを進める。佐川急便の各事業所に頻繁に足を運び、運送委託企業の整備受注、車両販売にもつなげ、業容を拡大していきたい。

記者席 こだわりを持って

 国内貨物総輸送量は横ばいだが、宅配貨物個数は右肩上がり。ラストワンマイルの強化が宅配事業の成否を左右する。「佐川グループの一員として、車両の本質を知るわれわれにできることは何かにこだわり、この1年半、製品の開発、改良に取り組んできた」
 今年度から品質を高める技術スタッフの育成にも注力。「外部機関も積極活用して定期的な研修受講を増やす。資金も少なからず投入する」
 明治大学時代は左腕の投手で活躍。後輩には香取義隆(元巨人の投手)も。「私は3流選手のまま野球をやめたが、いま思えばもったいなかった」。理由を聞くと「現役時代は自分の成長プロセスが分からなかった。何でも俯瞰(ふかん)的に見ることを忘れてはいけない、ということかも」