インタビュー

【 社長インタビュー 】
適正取引さらに加速 新事業の掘り起こしも

2019年02月19日
千代田運輸 水野功 社長
人材の確保・育成に注力する千代田運輸(本社・東京都日野市、水野功社長)。昨年は適正運賃・料金収受、一部運行便の見直しを通じ、従業員の労働環境改善に一層取り組んできた。さらなる成長を目指し、今後進めるのが新たな事業の掘り起こし。主力の自動車関連物流に加え、館内物流業務の強化や地域での引っ越し、人材派遣などを視野に事業の多角化を目指す。
――間もなく平成31年3月期が終了する。
水野 平成30年4~9月期は、物量が当初計画を下回ったことに加え、想定外のコスト増で利益が伸び悩んだ。一方、昨年10月以降は顧客の荷量もなだらかに増えており、茨城県古河市の新拠点の稼働率も改善しつつある。通期は増収増益を確保できるだろう。
中継輸送などで生産性向上
――適正運賃・料金収受の進ちょくは。
水野 運賃、作業料が業務実態に合わない顧客から、適正なコストを収受できるよう取り組んでいる。どうしても労働時間を順守できない顧客の仕事では、運行便を1便撤退させてもらった。主力の完成車輸送も労働時間や諸作業など実態に合っていない部分もあり、引き続き粘り強く交渉する。
――生産性向上の取り組みも進める。
水野 生産性を高めるには無駄を削減することが不可欠。自動車部品輸送では同業他社と中継輸送を進め、積載率と稼働率の向上を図っている。事務職についても顧客対応で、要領良く業務を処理する部署とそうでない部署がある。(1人で複数の業務をこなす)多能工化を進めていく。
――具体的には。
水野 例えば、職場を「大部屋化」することも手だろう。部署ごとに部屋を分けると、自分の仕事だけに集中してしまう。他の人の話も聞こえる環境を整備し、誰かが休んでも他の人間が代われる仕組みをつくりたい。他にも、各部署のリーダーが定期的に集まって問題点を話し合い、改善策を朝礼などで徹底させることにも着手している。
地域事業拡大などで成長へ
――さらなる成長に向けた考え方は。
水野 輸送協力会社の中には事業継承などの課題を抱えているケースもある。要請があれば、当社グループに入ってもらうことも考えたい。また事業の多角化では館内物流に続く、第2、第3の柱となる事業の構築を目指したい。
――どんな事業を視野に入れるのか。
水野 地域事業は伸ばす余地があるだろう。地元でも、当社の引っ越しサービスの知名度は高いと言えず、自治体や法人会をはじめ、多方面に上手くPRすれば商機が広がる。自動車関連以外の分野では下請け業務を手掛け、新規事業の取っ掛かりをつくることも一手。利益を出せる体制にすれば社内の競争力強化につながる。
――地域の足を念頭に置いた事業も。
水野 当社は特定労働者派遣事業の免許も保有しており、常用ドライバーを派遣することができる。いまは地域の足をいかに確保するかが課題。(本社を置く)日野市はエリアが広い分、介護や幼稚園の送迎、買い物支援といったチャンスも大きい。旅客分野を含め検討していきたい。
記者席 経営主題は「人、人、人」
人材の確保と並行し、長年、取り組みを続けているのが従業員の教育。ドライバー、事務員のスキルアップに加え、この数年は千代田運輸の根幹を支える幹部候補社員の育成に注力している。
現在、進めているのが総合職向けのビジネスゲーム。参加者は仮想会社の経営層となった想定で、業績や設備投資といった事前情報を基に、各チームで収益などを競争。専門家と無料通信アプリ「LINE」でやりとりしながら、経営に必要なノウハウを学んでいる。
取材のたび、水野社長が繰り返し口にするのが〝人、人、人〟というフレーズ。「事業拡大の好機をつかむためにも、人を今後どう育成するかが鍵になる」。不足する部分は外部からの力も取り入れつつ、社内の活性化を推進していく。