インタビュー

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【 社長インタビュー 】

前進こそ発展の道 貨物の変化に対応

2015年03月10日

日本トランスシティ 小川 謙 社長

 今年7月に創業120年を迎える日本トランスシティ(本社・三重県四日市市)。主要取扱貨物の素材関連で生産の規模縮小や海外移転が進む中、創業以来受け継がれてきた「常に新しいものを開拓する」(小川謙社長)姿勢を堅持。総合物流企業としての〝持ち味〟を生かし、多様な新規顧客の開拓を推し進めている。  

 ――社長就任から間もなく4年。
 小川 早いもので、いろいろなことがあった。特に強く感じるのは責任の重さ。当社の正社員は約700人だが、海外を含めたグループ全体では2000人に上る。協力会社の社員やその家族まで含めると、かなりの人が当社に関わっている。しっかりしたかじ取りが重要と感じている。
 ――今期第3四半期は増収減益。通期予想達成の見込みは。
 小川 消費増税後の反動減を懸念した昨年4月は順調にスタートした。だが、第2四半期以降は荷動きが低迷した。回復が見られないまま、いまに至っている。今後の盛り返しに期待する。

新規貨物の取り込みに注力

 ――新中期経営計画のスタートの年でもある。
 小川 グループでの計画実現のため、総力を挙げてさまざまな取り組みをしている。
 ――その1つが新規貨物の取り扱い拡大。
 小川 従来、当社の屋台骨を支えてきた川上の素材分野で、生産の規模縮小や海外移転が依然続いている。企業存続には常に新しい貨物を掘り起こさなければいけない。現状維持は後退の始まり。明治28年の創業以来、諸先輩も取り扱い貨物の変化に対応してきた。
 ――成果も。
 小川 昨年も消費財関連の新規取り扱いを拡大した。社員の努力により来期以降の新規ビジネス拡大への可能性も拡がっている。心強い限りだ。次世代のためにも、新しいことにチャレンジしたい。
 ――新中期計画の柱、「国内ロジスティクス事業の改革」とは。
 小川 これは、当社の持ち味を十分に生かした営業の取り組みを推進することに尽きる。3PL(サードパーティー・ロジスティクス)企業として、(1)倉庫(2)港湾運送(3)陸上輸送(4)国際複合輸送――の4つをバランスよく備えた当社の強みを前面に出していく。
 ――海外事業にも注力。
 小川 海外現地法人の頑張りもあり、第3四半期の売上高が前年同期比2.9%増となった。例えばタイでは取り扱い貨物の多様化を進めた。結果、昨年5月からOA機器関連品の取り扱いを開始。新しい仕事のため日本からも人的サポートを行い、軌道に乗せた。
 ――有望市場は。
 小川 従来の東南アジア、北中米に加え、インド、バングラデシュなどの西アジア、南米などには限りない可能性がある。

ニーズに応じるコスト必要

 ――物流事業の将来性をどうみる。
 小川 物流は時代の変化と関係なく必要不可欠なもの。一方、ニーズは確実に変化している。顧客のグローバル展開や品質高度化への要請には、対応するコストが掛かる。その点を理解してもらうためには、得意先に丁寧な説明を重ねていく。
 ――M&A(企業の合併・買収)に対するスタンスは。
 小川 〝自然体〟が基本。物流業界でM&Aが盛んだが、環境や体質の異なる会社同士が一緒になるケースは、難しい面もあると感じる。
 ――経営の中で、人材育成を最重視する。
 小川 若手にチャンスを与え、経験を積ませ、自信を持ってもらうのが私の役目。若手からベテランまで、1人1人をいま以上に困難に立ち向かうことができる集団にしていきたい。

記者席 チャレンジ精神

 「しんどいが、国内外問わず新しい貨物を求めるしかない」
 入社した昭和46年当時は「羊毛、綿花が絶好調」。繊維原料の取り扱いで、四日市港が日本トップクラスを誇っていた。四日市倉庫(当時)でも、羊毛の荷さばき保管場所としてウールセンターを建設するなど積極的に対応。いまでは「大きく減少している」。
 変化への対応の遅れは経営を左右する。「現状維持はあり得ない」。基盤になるのが人の力だ。社長就任時から人材育成を重視。昨年も新たな海外研修制度を増やすなど、さらに若手のスキルアップに力を注ぐ。
 新中期計画では、3年目に連結売上高1000億円以上、経常利益50億円以上の目標を掲げた。達成の鍵は、120年の歴史で培ったチャレンジ精神。「常に前進あるのみ」

(略歴)
 小川 謙氏(おがわ・けん) 昭和23年7月29日生まれ、66歳。三重県出身。46年立教大法卒、四日市倉庫(現・日本トランスシティ)入社、平成12年関連事業部長、13年中部支社名古屋支店長、17年取締役人事部長、19年常務運輸事業部長、23年社長。(藤本 裕子)