インタビュー

【 社長インタビュー 】
全国を自前の輸送網で まずは関東を強化

2018年06月26日
ダイセー倉庫運輸 𠮷田 憲三 社長
ダイセー倉庫運輸(本社・愛知県小牧市、𠮷田憲三社長)は、自動車部品の製造原料となる合成樹脂などのポリマー品に特化。自前の全国輸配送網「JPL(ジャパン・ポリマーライン)構想」を掲げ、平成32年度中の実現を目指す。来春、関東に2拠点目の倉庫が稼働。東北と広島にも拠点を開設する計画だ。昨年7月から運賃適正化に向けた本格交渉も始めた。
――業績が好調。
𠮷田 平成29年12月期の売上高は81億9900万円(前期比5.1%増)。30年1~4月の売上高は前年同期比7.7%増、営業利益は10.8%増だった。おおむね順調に来ている。
――ポリマー品に特化している。
𠮷田 主に自動車部品に使われる製造原料で、センターに各メーカーのポリマーを集約して保管、流通加工を行い、共同輸送で定期的に納品先まで運ぶ「ジャスト便」が主力になる。顧客数は450社、納品先は1万社ほどある。
――荷扱いに特長が。
𠮷田 ポリマー品の荷姿はさまざまで、重量も1個当たり25㎏と重たいものが多い。厳しい温度管理が求められ、特殊可燃物の許可を得た倉庫での保管など、荷扱いには専門性が問われる。当社はポリマーの取り扱いで長年のノウハウがあり、納品先企業からの逆指名で荷主から発注を受ける事例が少なくない。
来春、茨城に新拠点を開設
――主な事業エリアは。
𠮷田 中部。物流センターを7つ構えている。昨年9月、配送を静岡全域に拡大した。同エリアでポリマーと言えばダイセー倉庫運輸という認知は得られたと自負している。
――関東を強化する。
𠮷田 来年4月、茨城県に2棟目の物流センターを開設する。1棟目と同規模で地上2階建て、延べ床面積は1万6500㎡。自動車産業が集積する九州の福岡にも自前の倉庫がある。東北の宮城と福島で倉庫開設に向けた準備も進めている。
――西日本はどうか。
𠮷田 昨年9月、大阪と京都、奈良の一部地域で配送エリアを広げ、翌月、岡山営業所を水島地区に移転して配送と保管機能の底上げを図った。九州向けの輸送では昨年からは大阪南港―北九州新門司間でフェリー利用を始めるなど法令順守の徹底に努めている。
――自前のセンター運営にこだわっている。
𠮷田 昨今のドライバー不足で特積み各社が荷扱いの難しいポリマー品の輸送を敬遠するようになる中、顧客に安全で安定した物流サービスを提供する。協力会社と強固な関係を築いており、定期的な会合を通じ事故防止を含めた品質向上策も共有している。これらの取り組みが評価され、近年は中部地区以外での輸送ニーズも増えている。
平成32年度中に構想を実現
――全国展開を志向。
𠮷田 東北から九州までをカバーする自前の全国輸配送網「JPL構想」を掲げている。関東の新拠点と東北に新設する2拠点に加え、広島での倉庫開設も計画している。既存の福岡拠点を結べば、JPL構想の土台が出来上がる。平成32年度中に実現させたい。
――設備投資の原資は。
𠮷田 昨年7月ごろから適正運賃の収受に向けた交渉を本格化させた。運賃適正化は顧客に提供するサービスの維持・向上に必要で、会社を守るための自助努力でもある。人件費も高騰している。具体的な行動計画をつくり、営業部隊を中心に粘り強く交渉を行っている。手応えはある。
記者席 「会社を踏み台に」
大学卒業後、繊維商社に入社して営業回り。「週1回は東京の浅草で遊んでいた」。取引先は昼間は多忙でなかなか会えない。そんな時、会社の先輩に誘われたのがきっかけ。牧野周一の漫談、テレビに登場する前のツービートの漫才に舌を巻いた。
浅草の新仲見世にあった、たたき売りの「余荷解屋(よにげや)」は「心をつかんで、流して、落とす。面白く、とても勉強になった」と述懐。
「人生は一度きりだが、仕事は楽ではない。だから社員には「『やらさられる』から『やる』人間になってほしいと言っている。会社を踏み台にしてもいい。朝起きてすぐ行きたくなる会社を、社員と共につくっていくことができれば」。
好きなスポーツは野球とゴルフ。好きな言葉は「照干一隅(しょうういちぐう)」。