インタビュー

【 インタビュー 】
1都7県の連携深める 防災、人材確保に向け

2018年05月15日
関東トラック協会 千原 武美 会長
平成28年の就任以来、1都7県の連携強化に努めてきた関東トラック協会の千原武美会長。昨年には災害時の物資輸送を支援し合う相互応援協定を締結した。今後は人材情報の共有など新たな取り組みを見据えつつ、「さらに連携を深めることで課題解消につなげたい」と話す。
――足元の景況感は。
千原 人件費、傭(よう)車費に加え、最近は車両修理費も高騰している。都内運送会社の場合、1km当たりの利益は約2円。1日かけてトラックを走らせてもわずかな利益しか見込めない。保有車両10台以下の規模では半数が赤字で、特に規模の小さな企業は適正運賃・料金収受の推進が必要となる。
――荷主との適正取引を推進する。
千原 今年3月に関東運輸局・関東経済産業局・関東各都県労働局・公正取引委員会が連名で、荷主に適正取引の理解を求める文書を出してくれた。まだ改正標準貨物自動車運送約款に伴う運賃料金の届け出を済ませていない企業もあり、行政と連携しつつ呼び掛けていく。
――自社だけでは難しい場合もある。
千原 運送会社の相談に応じる専用の窓口も必要かもしれない。相談を受けることで、届け出を提出できない理由、適正取引が進まない理由を明確にできる。協会として、適切な方法も助言できるのではないか。
都外と都内で輸送対策
――就任以来、関東1都7県のトラック協会で連携を深めてきた。
千原 昨年9月、1都7県が首都圏での災害時、支援物資輸送を助け合う相互応援協定を締結した。仮に東京が被災した場合、都内の運送会社だけでは輸送を賄えない。そこで圏央道沿いに広域物資拠点を設置。近隣のト協から協力を得て物資を輸送してもらう。逆に他県が被災した際は東京が応援する。関東各県のトラック協会長も相互連携を重視している。
――東京では、区と支部の防災協定の見直しに取り組んでいる。
千原 東京は特に人口が多く、対策に万全を期す必要がある。都内の緊急支援物資輸送は区と支部が担うが、いまの防災協定は30年近く前につくられたものもある。円滑な輸送には新たな防災協定の締結が必要で、すでに文京区、練馬区は新協定を結び終えた。今後は東ト協会員が区の物流コーディネーターとして、緊急時の輸送や備蓄倉庫の対策などをサポートしていく。
都内の83警察署に設置要請
――防災以外に関東でどんな連携が可能か。
千原 人材は経営の根幹。構想だが、関東のト協間で求人情報を共有できれば、人材確保の手助けになるのではないか。例えばドライバーが関東の別の地域に移住する場合、現在所属するト協を介し、移り住む地域のト協から地元の運送会社を紹介してもらうといった考え方があってもいい。
――働き方改革の一環で、警察庁が集配車の駐車規制緩和を行う。
千原 東ト協では平成19年から規制緩和を求めてきた。今年4月から新橋で貨物車が約20分間駐車可能なスペースを指定し、試験実施する取り組みが始まった。東京では83警察署に最低1カ所以上設置するよう要請する予定。一方で、駐車スペースは営業車優先で止められないと無意味。配達の多い時間は営業車だけ駐車可能にしてほしい。