1●物流上場企業 28年3月期決算 増益が9割超える 油安、値上げで利益確保  主要陸運上場企業の平成28年3月期決算は、増収増益企業の割合が全体の68.8%と前期比で10ポイント増加。減収増益との合計では93.8%に上った。原油安に加え、運賃値上げなど各社の利益確保の取り組みが奏功した形だ。今期についても、9割の企業が増収、8割が増益を見込む。  前期は、上場トラック企業32社のうち30社が増益。減益だった事業者は前々期の6社から2社に減った。  増益要因としては、原油価格下落による燃料費減少が大きい。加えて、各社の適正運賃収受や効率化の取り組みも収益改善に寄与した。日本通運は自動車運送や倉庫取扱量が減少したが、料金改定による適正運賃収受に取り組んだ。赤字店所や組織の徹底的な改善、管理部門の簡素化で体質を改善。増益となった。  荷動きが鈍い中、採算の高い業務獲得に注力する動きもある。トナミホールディングスは営業日報の情報を共有して、採算性重視の営業を展開。特積みや3PLで新規荷主への販売を拡大した。貨物取扱量は減少した一方、トン単価は1.0%上昇した。 今期予想は増収が9割  各社の今期予想については、34社中31社が増収、27社が増益。中国経済の減速など景気の先行き不透明感が増す中、各社は一段の適正運賃収受や効率化を進めている。  原油価格はこの先、上昇傾向にあるといわれている。物流に詳しいアナリストは、利益確保のための取り組みがますます重要になるとみている。(鈴木 洋平) 有識者はこう見る コスト管理と価格転嫁 野村証券 エクィティ・リサーチ部 インフラストラクチャー・チーム運輸担当 ヴァイス・プレジデント 広兼 賢治氏  燃料費の下落が増益要因として大きかった。前期は物量が横ばいで下期は減少傾向。原油価格は底打ちしゆっくり上昇しているが、円高でいまのところ目に見える影響は出ていない。適正料金収受に取り組んでいる企業は一定の料金を取れている。ただし、基本的に需要は減っているので簡単に運賃を上げられる状況ではない。  製造業の生産が増えない限り、荷動きはマイナス傾向が続く。今期、消費増税の駆け込み需要を見込む企業もあるかもしれないが、荷量が増えにくいことは間違いない。  各社の方策としては、コスト管理と価格転嫁に尽きる。外注していた業務を内製化したり、サービスに見合う運賃をもらえるよう価格交渉をしたりすることになる。外部要因はどうあれ、利益を確保していくしかない。 有識者はこう見る 地道に利益積み増す SMBC日興証券 株式調査部アナリスト 長谷川 浩史氏  全体に荷動きが鈍い印象だが、平成25年からの流れを引き継ぎ、適正運賃収受が底堅く進んできた。各社の適正収受はうまくいっているようだ。加えて、燃料費下落で各社増益となった。原油価格はWTI(米国標準油種)では2月が底値で、今後大幅な下落は見込めない。  今期の通期予想を増収とする企業もあるが、荷動きを悲観的にみていない印象がある。だが外部要因として荷動きが厳しいことに変わりはない。無関係と思われがちだが、中国や東南アジア諸国の景気減速の影響を受け、上期の物量は楽観できないだろう。  各社とも、さらなるコスト管理や適正運賃収受が必要になってくる。例えば、不採算業務の見直しやサービス過多の業務の料金改訂を行う。地道に利益を積み増していくしかない。 2●センコー 営業利益率4%台に 流通ロジ、食品が好調  センコー(本社・大阪市、福田泰久社長)は平成28年3月期連結決算で営業利益率を4%台に乗せた。中期経営計画の最終年度29年3月期の目標である売上高4000億円、営業利益150億円、営業利益率3.8%を1年前倒しで全てクリアした。 今期売上目標4600億円  28年3月期は、売上高が前期比8.9%増の4340億円、営業利益が同28.2%増の174億9700万円と増収増益だった。けん引役は量販・小売り向け3PLを手掛け、売り上げ全体の3分の1を占める流通ロジ部門。中でも、グループ会社ランテックをはじめとする食品関連の売上高が前期比で約250億円増加。大手ドラッグストア向け物流業務の新規獲得で約20億円上積み。  営業利益は全体で、前期比約38億5000万円の増加。センター増強など新規拡販25億円、料金改定17億円、燃料単価下落11億円、M&A(企業の合併・買収)効果22億円などが寄与した。半面、景気低迷で既存顧客から受注が減り22億円、傭車費アップで5億円などのマイナス要因もあった。  29年3月期は売上高4600億円(前期比6.0%増)、営業利益181億円(同3.4%増)を目指す。  センター開設は成田地区と埼玉県加須市の2カ所を計画。埼玉の案件は昨年、土地約10万uを購入。1期と2期に分け、1期センターは今期開設する。2期センターについては「冷凍冷蔵を考えている」(福田社長)。海外ではランテックのノウハウを生かし、タイ、中国のほか、今後は韓国、ミャンマーでも冷凍冷蔵事業を始める。 来年4月持株会社は東京へ  センコーは来年4月のホールディングス(持株会社)体制移行に向け、組織改正の中身も明らかにした。体制移行は会社分割方式で行う。分割会社(現・センコー)は事業を継承会社(センコー分割準備会社、4月15日設立)に移し、来年4月1日、分割会社が純粋持ち株会社になる。5月13日の取締役会で決議したもの。  純粋持ち株会社の名称は「センコーグループホールディングス」。本社所在地は東京都江東区潮見2ノ8ノ10。社長には福田泰久現センコー社長が就く。  福田社長はホールディングス化の狙いについて「物流だけでなく、商事貿易や農業など業容が広がってきた。その分の(各事業会社の)コストがセンコー単体にかぶさっている。公平性の意味で、持ち株会社に(コストを集約)させた方がいい」との見解を示した。(丸山 隆彦) 3●セイノーHD 営業益7期連続更新 地域グループ売上寄与  セイノーホールディングス(本社・岐阜県大垣市、田口義隆社長)の平成28年3月期連結業績は、売上高5554億5700万円(前期比2.4%増)、営業利益261億8600万円(同22.4%増)、当期利益188億6400万円(同30.5%増)。営業利益は7期連続で過去最高を更新した。輸送事業の好調が大きく寄与した。 輸送事業が利益向上に貢献  関東運輸(本社・前橋市、高瀬雅企社長)の子会社化で低温物流事業に参入。連結子会社の完全子会社化でグループ全体の資本の最適化を図った。特に輸送事業では、適正運賃の収受と事業の効率化、燃料安に加えて、東濃、九州、四国の地域グループ会社の売り上げ好調が大きく貢献した。  西濃運輸では東京支店を新築移転、東京物流センターを新設し、セイノーロジ・トランス新木場として営業を開始した。セイノースーパーエキスプレスも北大分営業所の営業を始めた。  セイノーHDの事業別の売上高、営業利益は、輸送4161億1200万円(前期比4.3%増)、191億1200万円(同30.0%増)、自動車販売944億4000万円(同1.0%減)、49億2500万円(同0.7%増)、物品販売280億2900万円(同14.3%減)、7億7200万円(2.3%増)など。  中期経営計画の最終年度となる29年3月期連結業績は、売上高5660億円(前期比1.9%増)、営業利益265億円(同1.2%増)を予想。  国内貨物量の減少と人手不足を予想し、さらなる適正運賃収受と費用の適正管理を推進する。またトラックターミナルの新設・移転を進め、輸送ネットワークの効率化を図る。(各務 朗仁) 4●日立物流・新中計 3PL拡大などが柱 SG協業で500億円増収  日立物流(本社・東京、中谷康夫社長)は3カ年の新中期経営計画を始動した。資本業務提携を結んだSGホールディングスとの協業により、3PL事業の強化などを目指す。物流拠点に新技術を導入する次世代モデルセンター構築も加速し、作業の省人化や最適化を進める。  最終年度の平成31年3月期の連結売上高は8000億円(28年3月期比17.6%増)。営業利益は340億円(同20.1%増)。重点施策には主力の3PL事業の徹底強化、フォワーディングや重量機工事業の拡大などを掲げた。  目玉となるのが、3月に締結したSGHDとの資本業務提携。日立物流は調達やフォワーディングなど川上の企業間物流、佐川急便は川下の企業間・個人向け集配ネットワークに強みを持つ。海外でも日立物流がタイ、佐川急便がベトナムを得意としており、両社は国内外の協業を進めることが3PL事業の拡大につながるとみる。  このため、日立物流はSGHDとの協業を協議する専属部署を新設。相互の顧客基盤を活用した営業連携、車両や施設の共同活用を進め、集荷、3PL、配送を含む「川上から川下まで全体をカバーする」(中谷社長)物流提案を目指す。協業により、新計画の3年間で500億円の増収を見込む。  SGHDとの経営統合については「可能性を否定しないが、(経営統合)ありきの経営はしたくない。まずは1、2年間検証し、どう協業を図るかの議論を進めたい」(中谷社長)とした。 新技術の拠点導入も加速へ  また新計画では、新技術を導入した物流拠点の次世代モデルセンター構想も進める。今後3年間で約20億円の研究費用を投じ、関東エリアの既存拠点で実証実験を展開。ラックを作業員の元に運ぶ無人搬送車、ピッキングロボットなどを実用化し、省人化や最適な物流の実現を図る。  一方、海外では北米、欧州、東南アジアで輸送ネットワークを拡充。フォワーディングでは日本発着のほか、中国、インド、中近東エリアでの取り扱い貨物の拡大を進める。(小林 孝博) 5●丸和運輸機関 売上810億円目指す 3カ年計画を始動  丸和運輸機関(本社・埼玉県吉川市、和佐見勝社長)は、平成31年3月期までに売上高810億円(28年3月期比34.2%増)を目指す3カ年中期経営計画を始動した。  小売業特化型の営業体制を強め、食品スーパー向け3PL獲得を図る提案・投資を推進。「小売業にとって避けられない分野」(和佐見社長)として、EC(電子商取引)市場に対応した3PL展開で事業基盤を強化する。アジア展開も検討し、国内外で低温食品物流の売上高を500億円規模に拡大させる方針。  低温食品物流センター50カ所への集中投資で、長期的に安定した売上高・利益創出を図る。  また12日時点で407社体制となった「AZ―COM・丸和支援ネットワーク」会員企業との連携で人手・車両不足への対応力を強化。新規開拓と既存顧客の深耕に弾みをつける。  毎年200人以上の新卒者確保に向けた採用活動にも注力。将来目標の売上高1000億円へ、「日次決算の管理を高度化させ、利益を追求する体制を築く」(和佐見社長)方針だ。 前期売上利益とも過去最高  利益面では、3年で経常利益65億円(28年3月期比67.2%増)、経常利益率8.0%(同1.6ポイント上昇)、ROE(自己資本利益率)19.0%(28年3月期比1.7ポイント上昇)に押し上げる。  28年3月期は増収増益。売上高が前期比11.7%増の603億6400万円、経常利益が同26.9%増の38億8800万円と、売上高、利益とも過去最高。食品スーパー向け3PLの獲得や訪日観光客消費需要に伴う物量増、ネット通販物流の体制構築が増収に貢献。利益面では燃料調達価格下落と業務効率化、現場・輸配送の改善運動が寄与した。  今期は売上高660億円(28年3月期比9.3%増)、経常利益45億円(同15.7%増)を予想する。(水谷 周平) 6●1〜3月・景況感 収入、利益とも悪化 今後さらに後退へ  全日本トラック協会(星野良三会長)がまとめたトラック運送業界の1〜3月の景況感判断指数(速報値)は、前回から12.7ポイント悪化しマイナス30.9となった。「燃料単価の下落による荷主からの運賃引き下げ圧力にさらされている」(全ト協)。  輸送量では、一般貨物が同7.1ポイント減のマイナス23.6。宅配以外の特積みが同4.9ポイント増のマイナス25.5。宅配貨物は同26.0ポイント増のマイナス3.0だった。  営業利益は、一般貨物が同11.0ポイント減のマイナス8.6。宅配以外の特積みは同26.9ポイント悪化しマイナス5.5。宅配は同10.3ポイント改善しマイナス9.1。  4〜6月は悪化する見通し。景況感判断指数は今回より9.8ポイント減少しマイナス40.7。「海外景気の後退と円高を背景に悪化した」(全ト協)。各業態とも輸送数量、営業収入、営業利益は横ばいから悪化とみている。  調査は4月11日にモニター企業に対し開始。5月2日回収分までを集計した。回収数は一般526社、特積み68社で合計551社。(佐藤 周) 7●福通 積極投資で拠点網強化 新・東京支店12月完成  福山通運(本社・広島県福山市、小丸成洋社長)は、平成28年3月期連結業績で営業利益率が目標とする5%を上回る5.2%を確保した。今期、220億円を投資し拠点網や情報システムの整備を加速。積載効率や生産性を向上させ、収益力を高めたい考えだ。  福通は全国に398拠点を構え、今後も積極的に拠点増強を図る。再開発を進める東京支店(東京都江東区)が12月に完成し、来年1月に稼働する。敷地面積は約4万u。鉄骨・鉄筋コンクリート造(一部は鉄骨造)7階建てで、延べ床面積は計10万1000u。支店内には自動仕分けシューターを約100本設け、1時間当たり最大1万2000個の荷物の処理が可能。多くの荷物を集約・仕分けすることで作業効率、幹線便の積載率を上げる。  平成30年3月期を最終年度とする中期経営計画では15拠点の新設が目標。今期は北海道石狩市、宮城県気仙沼市、奈良県大和郡山市、広島県福山市、大分県佐伯市の5カ所で拠点を新設する。また、北海道滝川市、青森県むつ市、同五所川原市、秋田県にかほ市、長野県諏訪市、新潟県村上市、浜松市、岐阜県土岐市、愛知県一宮市の計9カ所では早期に拠点を整備する方針。小丸社長は「(地場の協力事業者が)土日指定など当社のサービス品質に伴わない地域が増加したため自社化を判断した」という。 独自の求荷求車S導入  主力の運送事業の中ではチャーター事業に注力する。同社独自の求荷求車システム「福山チャーターシステム」を4月から導入した。1往復の運行で、一方はチャーター便、もう一方は拠点間の路線便に当てるなど柔軟な運行体制の構築を目指す。輸送力や顧客への提案力を高め、チャーター事業の売上高を30億円積み増し、200億円を目指す。  28年3月期の連結売上高は前期比0.2%増の2545億6500万円、営業利益は同2.7%増の131億3900万円と増収増益。営業利益率は前期比0.2%改善し5.2%だった。運行便の自社化率は85.5%まで上昇するとともに、積載率は80%半ばを推移しコスト削減効果が出た。小丸社長は「燃油価格が高まると予想する下期が勝負。顧客構成の見直し、特性を生かしたサービスに取り組みたい」としている。(遠藤 仁志) 8●【ことば 教えて!】▽ストレスチェック→負担減らし心を健康に  心の健康に関する簡単な質問に答え受診者が自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査。昨年12月から、従業員50人以上の全ての事業所に対し実施が義務付けられた。  精神障害を理由に労災補償を申請する件数は年々増加。平成26年度は1456件と過去最多を記録した。道路貨物運送業は「社会保険・福祉・介護」「医療」に続き3番目の84件。従業員が自分の感じているストレスに早めに気付き、適切に対処するための手段としてストレスチェックが導入された。  大事なのは「自分の健康は自分で守る」という考え方を理解し実践すること。例えば、好きなことを楽しんだりといった自分なりの気晴らしを持つことが重要だ。職場環境も重要な要因。長時間労働や緊張を伴う人間関係などがストレスに。  心の健康不安は管理者、ドライバーどちらにも起こり得る問題。従業員に過度な負担を与えないよう工夫することが会社に求められている。 9●【首都圏ブロック特集】物流どうする? 工期短縮で短期集中 流経大矢野教授「事業者が発信を」  平成32年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備が始まっている。物流面では、新国立競技場をはじめとした競技施設の建設資材の搬入、開催期間中の人の流れとの分離など、高度な知識が必要になる。事業者はどのような役割を果たせるのか。流通経済大学の矢野裕児教授は「計画段階から事業者が積極的に発言することが必要だ」と指摘する。  東京五輪に向けた準備が始まった。新宿区の新国立競技場や東京都臨海部での競技・宿泊施設などのインフラ整備がまず始まり、短期間に大量の建設資材が都心や臨海部に搬入されることになる。「平成24年のロンドン五輪の時はオリンピック開発公社が中心となり物流を管理してきたが、東京ではまだそこまで話が進んでいない」と矢野教授。  特に物流の動脈・湾岸道路が走る臨海部では、複数の施設建設が同時に行われる可能性があり、施設同士での連携が欠かせない。搬入時間など施設ごとの管理は建設会社によって行われるが、経路や現地までの運搬方法などは「個々の建設事業者を超えて管理する必要がある」(同)。五輪前の建設需要をどう消化していくかが試金石になる。 ロンドンは3カ所のC設置  ロンドンでは、会場のオリンピックパークに入る全ての車両を通過させる物流センターを3カ所建設し流入量を抑えた。また貨物列車や水路で、建設に使われる総資材の50%を運搬。流入するトラックを削減した。  東京では、まだそういった仕組み構築への準備が進んでいないが、「神宮球場を五輪で活用するために借り上げるという話を見ると、物流についても考えはじめたのではないか」(同)。  期間中には通常の需要に加え、選手、観客、観光客の需要が上乗せされる。さらにセキュリティーが強化されれば当然スムーズなモノの移動も制限される。「夜間に納品ピークを持っていくなどの話し合いが必要」と矢野教授。五輪は7月末から9月初めまで行われ、資材や物資などで相当物量は増加するとみる。 定温物流網のひっ迫が懸念  特に懸念されるのが定温物流網のひっ迫。各国選手の食事を一挙に作るには「(料理人の)生産能力が不足している」(矢野教授)。事前に作って保管するためには、一層保管場所が必要になる。医薬品も指定を受けた流通が求められる。  課題対応には、五輪専用の共同配送など物流マネジメントが欠かせない。だが現状は、計画段階のものが多く「物流側にはスタート地点に立てないもどかしさがある」(同)。全日本トラック協会や国土交通省が連携して、「重要性を物流側からオリンピック委員会や東京都などに発信する必要がある」(同)。(佐藤 周) 10●【首都圏ブロック特集】変わる都市物流 「見せる物流」を提案 3K労働から変化 兵藤 哲朗 東京海洋大教授  従来、都市の物流は周囲から見えなくするのが理想的だったが、いまは「物流をもっとアピールしていいのでは」と兵藤哲郎東京海洋大学教授。高機能化・スリム化に伴い、「見せる物流」を提案する。また東京五輪開催を受け道路の段差が解消され、物流に優しい街づくりが進むことに期待を示す一方、今後少子化が進むことで郊外の施設での雇用確保が難しくなる可能性を指摘する。  物流と都市づくりの基本的な考え方の背景には、昭和41年の流通業務市街地整備法がある。首都圏に荷物を運んで来る大型トラックを環状道路周辺の流通業務団地で受けて、荷物を積み替える。大型トラックが市街地に入らないように配送する。  都市計画と物流施設を考える時は当然、道路と一体化したような計画が常に必要になる。街の利用者の快適性の観点からは、物流は見えない方が良い。  共同集配施設や路外の荷さばき場所を整備した上で、荷さばきの時間や空間をコントロールし路上荷さばきをなるべく減らす。  駐車場も物流施設に当たる。一定規模以上の施設に駐車場を設ける義務を徹底していくことも必要になる。例えば、東京駅周辺の丸の内では地下の駐車場がつながっており、路上荷さばきを減らすことができた。物流施設を想定した都市計画は必要で、現にその方向には向かいつつある。 街行く人に仕事をアピール  近年は物流施設が高機能化し、いわゆる3K(きつい・汚い・危険)労働をするだけの場所ではないように、物流も変化している。逆に、見せる物流をしてしかるべき。必ずしもアピールが目的ではないが、ヤマト運輸が京都嵐電の路面電車を使って荷物を輸送するケースもある。物流を目に見える形で提示していくことは選択肢の一つだ。  街中で宅配便を自転車など小型の車両で配送する運び方も広がりを見せており、そこで使われる車両のデザインを工夫してみるのも1案だ。 中心部での効率化は不可避  首都圏の物流の大きな流れとして3つのことがいえる。圏央道などのインターチェンジ(=IC)周辺に、急ピッチで物流施設が建っている。それがいつまで続くのかと、インターネット通販による小口貨物の増大の関係だ。これは土地利用の見直しや、IC周辺の道路ネットワークをどう整備するかなど、都市計画との関係で問題がある。  次に、東京湾岸部の大規模倉庫の再構築の問題。昭和40年代の倉庫が多く、老朽化が著しいため、直下型地震が来たら機能しなくなる。  3つ目は、都市の中心部の物流再構築。大規模開発が進み始め、それに合わせた物流の効率化の見直しがさらに進むと考えられる。ドライバー不足の問題と合わせ、共同配送など物流の共同化、集約化は不可欠になる。  平成32年に開催される東京オ五輪では、前回と違いパラリンピックがあるため、道路のバリアフリー化が進み、車道や歩道の段差が減る可能性がある。物流事業者にとっては、配送の仕事がしやすくなる。 10年後、郊外の雇用どう確保  首都圏で道路インフラと物流施設の整備が終わった時にどうなるのか。10年先を考えると、トレンドを読むことが比較的容易だったこれまでとは変わった流れが見えてくるのではないだろうか。  首都圏でも少子高齢化の問題が出てくるが、特に郊外で深刻化し始める時代を迎える。郊外に展開した物流施設は、場所によって雇用を確保できない可能性がある。自動化にも限界があり、周辺に働く人がいないと運営は困難だ。 (経歴)  ひょうどう・てつろう=昭和36年生まれ、東京都出身。平成元年東工大院土木工学専攻博士課程修了。5年東京商船大(現・東京海洋大学)流通情報工学課程助教授などを経て、19年東京海洋大流通情報工学科教授。交通計画の研究を手掛ける。(文責・鈴木 洋平) 11●日通 企業の海外進出支援 愛知銀行と提携へ  日本通運(本社・東京、渡辺健二社長)名古屋支店はこのほど、愛知銀行(本店・名古屋市、矢沢勝幸頭取)と国際業務に関する業務提携を結んだ。新たに海外進出を検討する企業が増えていることを踏まえ、日通が持つ物流ノウハウと愛知銀行の金融ノウハウを提供して、中堅・中小企業の海外進出をサポートしていくのが目的。 海外進出を一括でサポート  日通は各地の地方銀行や信用金庫と提携を進め、取引先のさらなる拡大を進めている。現在、世界42カ国に事業所を展開。現地で人材を採用して情報を収集する傍ら、人事・総務に強いパイプを持つ地銀と提携し海外赴任総合サービスを強化していく。  海外展開する会社を社員の引っ越しから支援。特に家族と共に赴任する場合、子どもの学校に関するものなど重要な情報は多い。海外生活を始めるに当たり赴任時に必要な情報やサービスをパッケージで提供。手厚いサービスを提供する。  海外に生産拠点を移したい企業に対しても、日本の工場・設備をそのまま移設する重量品輸送に対応。設備・機器のこん包も日通グループで一括して行う。  今後は、海外現地の通関や輸送事情に関する情報提供を行っていくとともに、貿易実務セミナーや現場見学会の開催も視野に入れる。中村栄一執行役員中部ブロック地域総括兼名古屋支店長は「銀行側も物流会社と提携することで、取引先へのサービスの幅が広がる。相互にメリットがある提携」とした。  日本通運は欧米に加えアジア、特にアセアンに注目。「イントラ・アジア」と呼ばれるアジア域内での物流の活発化に期待を寄せる。「インフラが整うことで、世界の工場としてだけでなく消費市場としても有望になる」(中村執行役員)。(各務 朗仁) 12●【集中連載 岐路に立つ日本 物流が進むべき道は】 第1回 消費増税、問題でない 早稲田大学ファイナンス総合研究所 野口 悠紀雄 顧問  来年4月の消費増税議論が慌しくなりつつある。政府・与党内では経済情勢、財政再建の影響を考慮し、増税派と慎重派で意見が2分。一方財政全体で見れば「消費増税は大きな問題ではない」と早稲田大学ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄顧問。運輸業界は「原油安の恩恵を受けられないことを問題視するべき」と提言する。  財政再建は消費税率を10%に引き上げ、さらに高い経済成長率を見込んでも、平成32年度の財政の黒字化目標を達成できないとの政府試算がある。  政府の掲げる財政再建目標はプライマリーバランス(基礎的財政収支)という概念に基づいている。これは国債を除いた収入から、国債の利払いを除いた歳出のバランスを指す。だが本来の財政収支は国債の利払いを含めて考えるものだ。仮にプライマリーバランスを黒字化できたとしても、(元本の返済などは進まず)実際の財政赤字は残ることになる。  また財政赤字を考える際、重要となるのが「金利の動向」だ。現在の金利はとても安く、長期的にはマイナスとなっている。これにより財政負担も異常に低い状況だが、将来も続くかは分からない。政府も30年ごろには金利上昇があるとみているが、それ以降、財政面の負担が生じる可能性も考えられる。 急増の社会保障費こそ問題  プライマリーバランスを黒字化する計画は、消費税10%引き上げに加え、高い経済成長率を前提としている。だが日本では急速な高齢化が進む。増え続ける社会保障費にどう対応するかが、本当に考えるべき問題といえる。  消費税率の引き上げは(財政全体で見れば)大きな問題ではない。前述の通り、プライマリーバランスの黒字化は消費税を上げるか否かで達成できるものではない。消費増税だけで目標を達成しようとするなら、税率を10%ではなく「30%」くらいまで引き上げる必要がある。 原油安の恩恵受けていない  いま消費増税か、据え置くかの議論が浮上するのは「人々の感覚」に対する問題に過ぎない。多くの人が「消費増税は良くない」と考え、増税を控えることで株価の上昇などを期待している。残念ながら財政再建との関係を誰も考えていない。  運輸業界は消費増税より、原油の値下がりによるプラス効果をもっと考えていくべき。原油価格の下落によって、輸入価格はこの1年で2割ほど低下した。これは消費増税の総額よりも大きい。  原油安は日本経済全体にもプラス影響を与えている。ところが店頭で販売されるガソリン、軽油などの価格は、原油価格の下落ほど下がっていない。背景には燃料関連諸税などの影響がある。運輸業界は消費増税より、原油安の恩恵が受けられない問題にもっと着目していくべきだ。 (経歴)  のぐち・ゆきお=昭和15年12月生まれ、75歳。東京都出身。33年東大工卒、39年大蔵省(現・財務省)入省、47年エール大Ph.D.(経済学博士号)取得。平成17年早大大学院ファイナンス研究科教授。23年早大ファイナンス総合研究所顧問。 (文責・小林 孝博) 13●Nexusグループ 未来を目指す人財育成=@階層別の教育を実施  篠崎運輸とインフォゲートで構成されるNexusグループ(本社・さいたま市、篠嵜泰夫社長)は人材育成に注力している。昨年、同社初となる新卒定期採用を開始。既存の育成システムを磨き上げ、新入社員から管理職までの階層別のシステムを構築した。「適切な社員教育を通じ一生働き続けられる職場をつくり、100年企業を目指したい」(Nexusグループ)とする。  役職や年数に合った教育で、「さらに次の段階へと引き上げる」(同)ことが教育方針。@課長級以上の管理職A係長〜副課長までのリーダー層Bそれ以下の従業員――という3段階に分けて行っている。  新入社員であれば、入社1カ月はビジネスマナーなど外部研修も活用しつつ、「社会人としての基礎を座学で身に付ける」(同)。次に、主要な4つの拠点を1カ月ごとに回る現場研修。資質や適性を見極め、将来の配属先を決める。「半年は教育研修期間として、各拠点の業務を勉強する」(同)。時間をかけて新人を育成している。 企画から運営まで研修者で  ユニークなのが、研修を受ける社員らが自ら弱点を克服するために企画から立案、運営までを行うプログラム。自分たちに足りないことは何か、どのような研修をすれば良いのか、そのためには何が必要かを話し合い実行する。考える力も鍛えてほしいとの思いからだ。  研修後は、篠嵜社長をはじめとした管理職に対し、研修で何を学んだかを披露することが求められる。レポート以外にも、マナー講座を受けた後に劇形式での発表も行われた。各社員には、所属長や本社での面談など多角的な視点でのフォローも実施している。  一方で、管理職や既存社員の側にも変化が生まれた。指導を通じ、自分に足りない部分に気付いたり、若手社員が研修成果を発表するのを見て刺激を受けたりと相乗効果が出始めた。 多様性が刺激を生み変化も  多様性を重んじる社風から、外国人や女性を積極採用している。今年の新入社員は15人中9人が女性。昨年入社した社員が採用担当を務め、就職活動を行う学生の目線で取り組んだ結果だ。さまざまな背景を持つ社員が集まり交流することで刺激を受け、「社内に新しい風が吹いてきている」(同)。  同社の教育の根底にあるのは、篠嵜社長が掲げる「顧客、地域、従業員に対する3方よし」の精神。「企業が継続していくためには人財≠ェ欠かせない」(同)と、社員教育に注力する。(佐藤 周) 14●【アジアのコールドチェーン】 第1回 なぜ、いまなのか 流通科学大学 森 隆行 教授  アジアではコールドチェーン(低温物流)の需要が急増している。近年の経済発展で国民所得が向上、食生活も大きく変わり欧米式の食生活が普及した。レストランなどの外食産業の興隆が顕著になっており、外食産業やスーパーなど近代的小売業を支えるサプライチェーン(供給網)で食品の温度管理が求められている。  日本でも、アジアとは背景が異なるが、コールドチェーンが注目されている。海外展開する外食、小売業のための国際サプライチェーン提供を含めた食品輸出の増加に対応するため、さらには医薬品や化学品の物流で温度管理需要の増加に対応するためだ。  連載ではコールドチェーンの役割、歴史を振り返り、小売りや外食といった産業との関わり、そしてアジア諸国のコールドチェーンの発展の様子について述べる。 コールドチェーンの定義は  これまで、コールドチェーンは次のように定義されていた。「生鮮食品を生産者から消費者まで、所定の低温に保持しながら流通をはかる仕組み、すなわち低温流通機構をいう」(田中和夫「日本機械学会誌」第83巻第743号、昭和55年)。  つまり、「生鮮食品の低温流通機構」ということだった。しかし現在、食品以外の商品の低温物流への需要が増えてきている。温度に敏感な、言い換えれば温度管理の必要な商品全てに対象が拡大している。果物、野菜、生花、鮮魚、肉類、日配品の一部や薬品、血液、ワクチン、臓器などの医療関連、化学品やマイクロチップなどの電子部品と多岐にわたる。このことから、「コールドチェーンとは温度変化に敏感な商品のサプライチェーンである」ということができる。 低温物流の需要急増の背景  いま、アジアでは所得の向上につれ購買力が増すとともに、食生活も大きく変わりつつある。一方、日本では長引くデフレ経済と少子高齢化の影響から消費が低迷している。こうした状況下で、これまで製造業が中心だった海外進出が外食、小売りなど、いわゆる消費関連産業に広がってきた。外食産業やコンビニやスーパーにとっては、食品の調達網の構築は必須だ。  加えて日本食ブーム。例えば、タイでは景気は必ずしも良くないようだが、バンコクをはじめ都市部の消費は相変わらず活況を呈している。新しくオープンしたショッピングモールには多くの日本食レストランが入居する。日本の外食、小売業の海外進出を支えるのがコールドチェーン。そのインフラは日本を含む外資系物流企業がリードしている。タイの冷凍・冷蔵貯蔵施設の25%以上が日本の物流企業の投資によるものだ。  また、日本政府は平成32年の農林水産物輸出額1兆円を目標に掲げる(平成27年実績7452億円)。各地域でも地場産品をブランド化し海外販売を加速。関西の取り組みの例では神戸牛、近江牛、宇治茶、三輪そうめん、和歌山みかん、大阪昆布が挙げられる。こうした生鮮品の海上輸送にはCA(Controlled Atmosphere=大気調整)コンテナも使用されコールドチェーンを技術面で支えている。  日本では、薬品などの医療分野、半導体などのIT製品や一部化学品の分野と食品以外にもコールドチェーンの需要が高まっている。温度変化に弱い半導体では、より高度な温度管理が求められている。このように、日本とアジアでは違った背景だが、いずれもコールドチェーンの需要が高まっており、この傾向は当分続くと見込まれる。 (略歴)  もり・たかゆき=昭和27年生まれ、64歳。徳島県出身。50年大阪市立大商卒、大阪商船三井船舶(現・商船三井)入社、平成18年流通科学大学商学部教授。専攻はロジスティクス論、国際物流論。日本海運経済学会常任理事、大阪市港湾審議会長など兼務。 15●【日本の物流に足りないもの】 第2回 予想できた人手不足 未来調達研究所 坂口孝則 取締役  インターネット通販では、即日配送が当然となりつつあり、かつ配送費用はタダ≠ェ当然になった。消費者にも適正なコストを認識させるべきだ、という議論がよくある。しかし物流にどれだけ費用が掛かるか知る消費者はほとんどいない。消費者の知らないところで、小売りと物流業者は価格を決める。いわば、消費者を「忖度(そんたく)」して低コスト化を図ってきた側面がある。  荷主である小売り側は顧客から費用をもらえないものは払えない、といった態度で配送コストを抑えてきた。だが、ここに来て、さすがに物流側も耐え切れなくなった。  平成26年、日本通運は24年ぶりに企業向け運賃の値上げを届け出た。ヤマト運輸も宅急便の実質値上げに踏み切ったし、今後も値上げ交渉を続けていくという。大手はなんとか利益改善に乗り出した格好だが、業界をドライバー不足が襲う。しかも、これはあらかじめ予想されていた悪夢だった。 運賃改善に乗り出した大手  国土交通省は20年9月に「輸送の安全向上のための優良な労働力(トラックドライバー)確保対策の検討」という優れた報告書を出している。注目すべきは、トラックドライバーが不足する将来を当てた箇所だ。「ドライバー数が増加する一方で、ドライバーと他産業との賃金格差が拡大するためドライバー供給数は減少する。(中略)標準ケース(毎年の経済成長率2.2%)で推移した場合、平成27年度では14万1000人のドライバー不足が発生するものと予測される」。  ネット通販や小口荷物などは増えていく。一方で、運賃分の正当なコストが得られなければドライバーの賃金は増えず、ただドライバー数が減少するだろう、と。実際にトラックドライバーの年収は平成9年ごろをピークに現在では2割ほど減少している。さらに、現状では20代のドライバーが少なく、3人に1人が50代と60代だ。日本自動車工業会が公開している「平成26年度小型・軽トラック市場動向調査」によれば、高齢運転手を雇用している事業所は46%と増加傾向にある。  平成32年ごろには構成員が加齢しより深刻度が増す。建設業界では賃金を上げて人員確保に動いている。賃金が上がりにくい物流業界は人手不足が続く。  人手不足の一因には、1990年代から続く物流自由化の競争の歯止めを目的とした、19年の道路交通法改正もある。中型免許導入によって、若年層の社会人たちがトラックドライバーになりづらくなり、大型免許取得も難しくなった。かなり困難な状況に物流業者はいる。 (略歴)  さかぐち・たかのり=昭和53年生まれ、37歳。佐賀県出身。阪大経卒。電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所取締役。 【特集・コラム】 ●【インタビュー】安全、人材対策に全力 4年後の開催控え 関東運輸局 濱 勝俊 局長   日本最大の消費地を抱える首都圏。4年後には東京オリンピック・パラリンピックを控え、今後は訪日外国人旅行者の急増など、物流需要のさらなる増加が見込まれる。業界で深刻な労働力不足が課題となる中、どのように安全で合理的な物流を構築するのか。物流行政を所管する関東運輸局の濱勝俊局長に取り組みを聞いた。  ――物流事業者の経営環境をどう見る。  濱 全国的に景気がやや弱含みの状態にある中、大消費地の東京を抱える関東は特異なエリア。通販需要の拡大によって宅配貨物が一貫して伸びるなど、消費物流を中心に物量は堅調といえる。全国的に見れば恵まれた地域≠ネのではないか。  ――局長はこれまでさまざまな物流施策に携わってきた。  濱 国土交通省の本省で課長、審議官を担当した際、物流総合効率化法や総合物流施策大綱の策定に取り組んだ。近年は圏央道の延伸により、周辺では大型物流施設の整備が進む。輸送、保管、流通加工を集約した多機能倉庫を交通の結節点に造り、物流の合理化と環境負荷低減を図るといった政策効果が首都圏の物流にも寄与しつつある。 ト協と一体で取り組み推進  ――4年後には東京オリンピックを控える。  濱 東京を中心に訪日外国人旅行者が増えるなど、物量のさらなる増加が予想される。今後、五輪関係の交通規制がどう設定されるのかなどを踏まえ、事業者と協力して円滑な物流を実現したい。  ――物流に配慮した施策も必要なのでは。  浜 物流を円滑に進めるには、貨物専用レーンを設置するといった対応が重要だろう。(五輪開催中の)交通規制、インフラの利用状況などを含め、具体的にどんな対策が必要かを考えたい。また近年は圏央道周辺に大型物流拠点が整備され、そこから多くの貨物が都内に配送されている。安全対策をさらに徹底しなければならない。  ――安全対策ではどんな取り組みを。  濱 国交省の「事業用自動車総合安全プラン2009」を基に、業界関係者と一丸となった取り組みを進めている。安全対策は掛け声だけでは前進しない。関東地方の各トラック協会も事故の特徴や原因を分析し、対策に乗り出してくれている。  ――具体的には。  濱 トラックで発生しやすい交差点の右左折時の事故を防ぐため、東京都トラック協会は今年度中にも注意突起を図るチラシの配布、車両カメラ・モニター装置を使った取り組みを展開。どこに死角があるかなどを科学的に分析し、対策を検討してもらう。関東の各トラック協会も事故分析を基に安全対策を積み上げている。運輸局も業界と一体となり、物量が増えても事故を起こさない体制を整備したい。 好事例を積み上げ横展開へ  ――労働力不足の解消をどう進める。  濱 来春にも始まる準中型免許により、就職活動で課題だった制度面のハードルは解消されるのではないか。各運輸支局長も高校を訪問し、学生に運輸業界で働く魅力をPRしている。現在は昨年設置した地方協議会の議論を通じ、トラックの適正取引、労働時間改善にも取り組んでいる。  ――秋には協議会でパイロット事業が始まる。  濱 具体的な内容は調整中だが、例えば首都圏では「消費物流の配送をいかに効率化するか」などの課題がある。パイロット事業は荷主と事業者が互いに協力し、実施後にどこに利点があったかを検証することが重要になる。2年間かけて好事例を積み上げ、取り組みの普及に力を注ぎたい。  ――物流では新技術の活用も重要な課題に。  濱 自動運転、ドローン(小型無人機)といった新技術は物流の効率化につながることが期待できる。安全を前提に実用化が進めば、労働力不足の課題解消や物流の地位向上など、現状を大きく変える部分もあるのではないか。運輸局として好事例を一つでも多く生み出し、横展開できるように、特区や実証実験を活用していく。 (経歴)  はま・かつとし=昭和34年2月3日生まれ、57歳。徳島県出身。昭和57年東大法卒、運輸省(現・国土交通省)入省。平成24年大臣官房審議官(情報政策・危機管理・物流担当)、25年警察庁審議官(交通局担当)、27年同兼交通局交通指導課長などを経て、27年7月から関東運輸局長。(小林 孝博) ●【この人】事業を進化させる SGモータース 石部 久康 社長  3月に社長就任。SGホールディングスグループ向け車両、整備、架装のサービスレベル向上と、単独事業会社としての利益追求に向け、タクトを振ることに。「身の引き締まる思い。懐の深い、幅広の施策で事業を進化させたい」  技術の進歩により、車両整備と架装業界は専門的な知識と高いスキルが求められる。半面、人手不足が進み、需給はひっ迫。だからこそ「設備投資と人材育成には力を入れる」。  26日にしゅん工する西大阪店(兵庫県尼崎市)は標準車をカスタマイズする二次架装で最新の板金設備を導入。「需要のある分野。能力を高める準備はしっかりやる」。1月に増設した東大阪店(大阪府東大阪市)は新型の整備ラインも稼働している。  人材育成は「全社的な取り組みで進める」。女性に門戸を広げ、女性用トイレ、シャワー室、休憩室などを随時、既存拠点にも拡充する。熟練技術者の育成では、設備が整う富士工場や岡山工場で「経験を積ませる」。  平成28年3月期業績はグループが掲げる目標を達成。現在の外販率は約45%だが「伸ばせるだけ伸ばす」。拠点網は東名阪を中心に増強する。同時に、協力会社との連携強化も進め、さらなる商圏、客層の拡大を目指す。「SGホールディングスグループの一員として責任は果たしていく。精進あるのみ」  好きな言葉は「尊重」。同じ目的を持った人たちが互いを尊重すれば、「大きなパワーが生まれ成長し合える」という。趣味は渓流釣り。  学生時代は左腕の投手で鳴らした。明治大学で1学年下にエースの両輪、鹿取義隆(元巨人)と高橋三千丈(元中日)。「知る人ぞ知る島岡吉郎監督がとにかく厳しかった。僕は敗戦処理ばかりだったけれど、青春だった」(丸山 隆彦) (略歴)  いしべ・ひさやす=昭和30年4月16日生まれ、61歳。新潟県出身。53年明治大文卒、いすゞ自動車入社、平成19年沖縄いすゞ自動車社長、24年いすゞ保険サービス社長、26年SGモータース常務、28年3月社長。